そう。あれは。
台風4号が来るか来ないかの時期で、
めずらしい、居酒屋でのお仕事の前日だった。
スポーツジムで、
リフレッシュした私のケータイに、
「可能なら、靴に穴が開いたので、買って帰ってきてください」
と、夫からのメールが入ってた。
時間は、9時ジャスト。
ジムの前の量販店は、
夜の12時まで開いているけれど、
食料品売場以外は、9時で閉店していた。
家に帰ってから、夫にそのことを告げる。
「しゃあないな。明日もあの靴履いていくわ」
「台風4号が近づいてきているってことは、
明日、雨が降るってことやで。いいの?」
「いいの?もなにも、それしか履くもんないやんか」
そりゃそうだ。
自己責任だ。
でも、明日、私が靴を買いに行くとして……う~ん。
★
明日は6時から居酒屋で仕事。
ちゃんとした靴屋は駅前にしかなく、家からは遠い。
靴を買って、一旦家に持ち帰って、
また駅へ行くのは、あほらしい。
仕事道具だってあるんだから、
居酒屋へ向かう途中で靴を買って、
駅のロッカーにでも預けておこうか……。
しかも台風が接近しているんだから、
自転車ではなく
あの、時間に不確かなバスに乗って行かなくちゃいけないし、
と、いうことは、
靴を物色する時間も計算に入れて、
晩御飯の準備は早い目にしなくちゃいけないよなぁ。
と、またいつもの
頭の中、ぐるぐるが……。
★
そして翌日。つまり、居酒屋さんの日。
夫の晩御飯の準備を始めていると、
母が、野菜などのおすそ分けを持ってやってきた。
私が今日一日、バタバタしていると知ると、
「じゃ、私が靴を買ってきてあげる!」
と、『お役に立ちたい欲』旺盛の母が言う。
私は遠慮したのだが、母のウキウキさに負けて、
お願いする。
私は雨とバスの時間を気にしながら、
引き続き晩御飯を作りはじめた。
しばらくして、電話。母からだ。
「あのね、幅のこと聞かなかったけど、EEEぐらいでいい?」
また、電話。
「あのね、27・5センチって言ってたけど、
靴屋さんがね、27の次は8しかサイズはないって言うし、
8だと取り寄せになるから、今日は買えないっていうの。
27じゃだめ?」
また、電話。
「あのね、27センチの靴紐のついた奴を買ったんだけど、
お父ちゃんが『そんなデザインはカジュアルすぎる!』っていうの。
あかん?靴紐はあかんの?」
あぁ……だから遠慮したのに……。
結局、靴紐のないビジネスシューズを買って、
母は持ってきた。
「一度、家の中で履いてもらって。
靴は大事だから、もし合わなければ交換するって、
お店の人言ってくれてたし」
母は、何も間違ったことはしていないのに、
すっかりおどおどして言う。
「大丈夫。これ、Yさん気に入って履くと思うよ」
その日の晩、
居酒屋さんから帰ってきて、
夫にリビングのフロアの上で、靴を履いてもらう。
「きついことはきついけど、履けないわけじゃないし、
現実に明日履かなきゃいけないから、これでいいよ」
という。
そうだ、夫よ。
あなたには、なんの選択の余地もない。
数日後、また、母から電話があった。
「あのね、Yさん履いて行ったって、メールで見たけど、大丈夫?
あの靴屋さんも小さい店だからねぇ。27・5がないなんてねぇ。
その穴の開いた靴は27・5だったんでしょ?
あの後、お父ちゃんに、
『大体、なんでお前が買いにいってるねん。
靴なんて、自分で合わせな、いいのなんか見つかれへんもんや』
って言われてね……」
「それはお父ちゃんの言うとおりやで」
「そうなん?」
「そうや。大体な、
日ごろ自分で履いてるんやで。
『やばくなってるな』っていうのは、事前にわかっているはずや。
そのメンテナンスを怠っていて、こうなってるのに、
それを人にフォローしてもらっておいて、
靴のサイズがどーだの、デザインがどーだの、
言える立場じゃないと思うで。
っていうか、彼にはモノに対するこだわりは、
全くと言っていいほどないし
おしゃれなお父ちゃんに比べたら、めっちゃらくらく」
「はぁ……そうなん?」
「そうやで。
っていうかさぁ、フツーな、
自分の靴は、自分で履いて選ぶもんでしょ?
ああいうのを他人任せにする感覚は、
あたしの中では信じられへん。
大体な、穴が開いているとわかった瞬間から、
自分でまず、なんとかしようとせぇへんか?
あの、スポーツジムが終わってから、
メールを見たときもな、
送ってきた時間て、8:10ぐらいやってんで。
それやったら、駅からジムの前のスーパーまで行って、
買おうと思ったら買えたはずや。
開いてたのは、知ってると思うで。
っていうかさぁ、
知らなくても、『開いているんじゃないか』と思って、
可能性に賭けへんか?切羽詰っているねんで。
そういうことすら、思いつけへんねんて。彼は。
自分のことやのにやで!
お小遣いは確かになかったかもしれへんけど、
カード使えばいい話やし。
そんなもん、事後報告したって、あたしは別に怒らへんがな」
「それ……、本当に直接Yさんに言うたん?」
「言うたよ。
だって、何度言うても、治れへんもん。
言うても、言わんでも、治れへんもんやったら、
言うて、あたしのストレスのドブさらいせな、
なんか、動かされたモトとられへん。
鬱陶しければ、学習すれば、ええ話やん。
腐るほど言うてるよ。もう。
タバコだとかな、自分の嗜好品まで、
買いに行かせようとするねんで。信じられへんわ。
っていう訳でな、お母ちゃんがへこむ必要は全くなし!
『文句言うな!』と、言ってもいいぐらいやで!」
「そ、そうなんか……。なんか、ほっとしてきた」
「そうやで。
でもな、お母ちゃんもな、
嫁いだ娘に、そんなに甘くしたらあかんねんで。
基本的には、『よその家庭』やねんで。
野菜とかをシェアしあうのは、いいけど、
『よその家庭』のダンナの靴買いに行ったろか?は、
あかんわ。
悪いけど、あたしは、ほら、ずるがしこいやろ。
子供の頃から、大人を利用しようとするクセがあるやん。
ラッキーな事いわれたら、乗っかるクセ、知ってるくせに。
娘という立場、利用してしまうところがあるねんて。
悪いけど、わかってても、
いざ、親に親切心出してもらったら、乗っかってまうねんて」
「そやけど、あんまり遠慮せんと……」
――話が逸れてきたので、以下、略。
……ていうか、
ついつい、エキサイトして、
前フリ長く書きすぎちゃった××。
本当は、8月1日に、
この母に買ってもらった靴のことで、
また事件(?)があり、
そこをメインに書こうと思っていたんだけど……。
3000字近くも書いて、消去して書き直すのも、
何なんですので、残しておきます。
つづくとさせて、いただきます。
台風4号が来るか来ないかの時期で、
めずらしい、居酒屋でのお仕事の前日だった。
スポーツジムで、
リフレッシュした私のケータイに、
「可能なら、靴に穴が開いたので、買って帰ってきてください」
と、夫からのメールが入ってた。
時間は、9時ジャスト。
ジムの前の量販店は、
夜の12時まで開いているけれど、
食料品売場以外は、9時で閉店していた。
家に帰ってから、夫にそのことを告げる。
「しゃあないな。明日もあの靴履いていくわ」
「台風4号が近づいてきているってことは、
明日、雨が降るってことやで。いいの?」
「いいの?もなにも、それしか履くもんないやんか」
そりゃそうだ。
自己責任だ。
でも、明日、私が靴を買いに行くとして……う~ん。
★
明日は6時から居酒屋で仕事。
ちゃんとした靴屋は駅前にしかなく、家からは遠い。
靴を買って、一旦家に持ち帰って、
また駅へ行くのは、あほらしい。
仕事道具だってあるんだから、
居酒屋へ向かう途中で靴を買って、
駅のロッカーにでも預けておこうか……。
しかも台風が接近しているんだから、
自転車ではなく
あの、時間に不確かなバスに乗って行かなくちゃいけないし、
と、いうことは、
靴を物色する時間も計算に入れて、
晩御飯の準備は早い目にしなくちゃいけないよなぁ。
と、またいつもの
頭の中、ぐるぐるが……。
★
そして翌日。つまり、居酒屋さんの日。
夫の晩御飯の準備を始めていると、
母が、野菜などのおすそ分けを持ってやってきた。
私が今日一日、バタバタしていると知ると、
「じゃ、私が靴を買ってきてあげる!」
と、『お役に立ちたい欲』旺盛の母が言う。
私は遠慮したのだが、母のウキウキさに負けて、
お願いする。
私は雨とバスの時間を気にしながら、
引き続き晩御飯を作りはじめた。
しばらくして、電話。母からだ。
「あのね、幅のこと聞かなかったけど、EEEぐらいでいい?」
また、電話。
「あのね、27・5センチって言ってたけど、
靴屋さんがね、27の次は8しかサイズはないって言うし、
8だと取り寄せになるから、今日は買えないっていうの。
27じゃだめ?」
また、電話。
「あのね、27センチの靴紐のついた奴を買ったんだけど、
お父ちゃんが『そんなデザインはカジュアルすぎる!』っていうの。
あかん?靴紐はあかんの?」
あぁ……だから遠慮したのに……。
結局、靴紐のないビジネスシューズを買って、
母は持ってきた。
「一度、家の中で履いてもらって。
靴は大事だから、もし合わなければ交換するって、
お店の人言ってくれてたし」
母は、何も間違ったことはしていないのに、
すっかりおどおどして言う。
「大丈夫。これ、Yさん気に入って履くと思うよ」
その日の晩、
居酒屋さんから帰ってきて、
夫にリビングのフロアの上で、靴を履いてもらう。
「きついことはきついけど、履けないわけじゃないし、
現実に明日履かなきゃいけないから、これでいいよ」
という。
そうだ、夫よ。
あなたには、なんの選択の余地もない。
数日後、また、母から電話があった。
「あのね、Yさん履いて行ったって、メールで見たけど、大丈夫?
あの靴屋さんも小さい店だからねぇ。27・5がないなんてねぇ。
その穴の開いた靴は27・5だったんでしょ?
あの後、お父ちゃんに、
『大体、なんでお前が買いにいってるねん。
靴なんて、自分で合わせな、いいのなんか見つかれへんもんや』
って言われてね……」
「それはお父ちゃんの言うとおりやで」
「そうなん?」
「そうや。大体な、
日ごろ自分で履いてるんやで。
『やばくなってるな』っていうのは、事前にわかっているはずや。
そのメンテナンスを怠っていて、こうなってるのに、
それを人にフォローしてもらっておいて、
靴のサイズがどーだの、デザインがどーだの、
言える立場じゃないと思うで。
っていうか、彼にはモノに対するこだわりは、
全くと言っていいほどないし
おしゃれなお父ちゃんに比べたら、めっちゃらくらく」
「はぁ……そうなん?」
「そうやで。
っていうかさぁ、フツーな、
自分の靴は、自分で履いて選ぶもんでしょ?
ああいうのを他人任せにする感覚は、
あたしの中では信じられへん。
大体な、穴が開いているとわかった瞬間から、
自分でまず、なんとかしようとせぇへんか?
あの、スポーツジムが終わってから、
メールを見たときもな、
送ってきた時間て、8:10ぐらいやってんで。
それやったら、駅からジムの前のスーパーまで行って、
買おうと思ったら買えたはずや。
開いてたのは、知ってると思うで。
っていうかさぁ、
知らなくても、『開いているんじゃないか』と思って、
可能性に賭けへんか?切羽詰っているねんで。
そういうことすら、思いつけへんねんて。彼は。
自分のことやのにやで!
お小遣いは確かになかったかもしれへんけど、
カード使えばいい話やし。
そんなもん、事後報告したって、あたしは別に怒らへんがな」
「それ……、本当に直接Yさんに言うたん?」
「言うたよ。
だって、何度言うても、治れへんもん。
言うても、言わんでも、治れへんもんやったら、
言うて、あたしのストレスのドブさらいせな、
なんか、動かされたモトとられへん。
鬱陶しければ、学習すれば、ええ話やん。
腐るほど言うてるよ。もう。
タバコだとかな、自分の嗜好品まで、
買いに行かせようとするねんで。信じられへんわ。
っていう訳でな、お母ちゃんがへこむ必要は全くなし!
『文句言うな!』と、言ってもいいぐらいやで!」
「そ、そうなんか……。なんか、ほっとしてきた」
「そうやで。
でもな、お母ちゃんもな、
嫁いだ娘に、そんなに甘くしたらあかんねんで。
基本的には、『よその家庭』やねんで。
野菜とかをシェアしあうのは、いいけど、
『よその家庭』のダンナの靴買いに行ったろか?は、
あかんわ。
悪いけど、あたしは、ほら、ずるがしこいやろ。
子供の頃から、大人を利用しようとするクセがあるやん。
ラッキーな事いわれたら、乗っかるクセ、知ってるくせに。
娘という立場、利用してしまうところがあるねんて。
悪いけど、わかってても、
いざ、親に親切心出してもらったら、乗っかってまうねんて」
「そやけど、あんまり遠慮せんと……」
――話が逸れてきたので、以下、略。
……ていうか、
ついつい、エキサイトして、
前フリ長く書きすぎちゃった××。
本当は、8月1日に、
この母に買ってもらった靴のことで、
また事件(?)があり、
そこをメインに書こうと思っていたんだけど……。
3000字近くも書いて、消去して書き直すのも、
何なんですので、残しておきます。
つづくとさせて、いただきます。