日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

いかりやさんの危機感(中編)

2008年03月24日 | お仕事な日々
今日のその、
いかりやさんとこでのお仕事は、
今日からまさに新発売の、マンゴープリンだった。

以前売って完売した、
かぼちゃプリンの姉妹品のようなもの。
同じシェフが商品開発に協力したせいか、
やっぱり美味しい!!

で、かぼちゃプリンと同じように、
シェフの格好をして。(ちなみに帽子がピンと立ってて嬉しかったです・笑)

……それにしても、ですな。

いくら美味しいとはいえ、
この、大きなカゴ三つ分の、
マンゴープリンは、なんざんしょ。

前のかぼちゃプリンでも98円で、
60~70個でなんとか完売なのに、
108円で、おそらく200個以上はある、
このマンゴープリンは、
かなり売れ残るんじゃないだろうか。
……まぁいいんだけど。ノルマが課せられているわけでもないし。

なんて、いぶかしく思いつつ、
準備をしていたら、
いかりやさんが様子を見に来た。

「400個はあるから頑張って売ってや!」

えぇ~400個!?

「試食も多く出ると思うから」

えぇ~!って、ん?待てよ。
この前そんなにお客さん来たっけ??
……あ、雨か。
え~……、でも、平日の(月)だし、
○倍ポイントセールでも、全品○割引の日でもないし、
そんなに試食がでるとも思えないけど……。

という、心の声が、
いかりやさんに聞こえている訳がなく。

試食が出る前提で、いかりやさんは話を続ける。

「試食分は買い取りか?いくら持ってきている?」
「5,000円ぐらいは……」

派遣元からは、3,000円あれば十分と聞いていたけど、
念のために。

なのにいかりやさんは、
「5,000円?それじゃあ、足りんなぁ。
1万円ぐらいは使うと思うで。
昼休みにでも、銀行からお金下ろしたほうがええで」

はぁ……ありえない!

「そんな、人、来ます??」
と、思わず失礼なことを聞く。

「従業員の分もあるからや」

え?え?え?

つまり、いかりやさんは、
スーパーのパートさんから正社員さんから、
店長さんから、
全員に、
このマンゴープリンを
丸々一個、
試食してもらうというのだ。

そして、そのお金を私に立て替えろ、というのだ。

え?え?え?

確かに、今回の試食品の立て替え金は、
上限は設定されていない。
しかし、あまりにも予想金額より高額になる場合は、
派遣元にお伺いを立てなければならない。

その旨をいかりやさんに伝えると、

「メーカーには、オレから言っておくから。
それやったら、派遣元も納得するやろ」

と、あっさり退けられた。

「ATM機なぁ、うちにあるのは、
ナントカ銀行(奈良の地方銀行)しかないんや。
……手数料かかるのは、嫌やんなぁ」

それは絶対ヤダ。
買い取り分はお給料の支払いの時にバックされるけど、
手数料は自腹になるのだ。そんな自腹、納得できない。

最寄り駅に
私がカードを持っている銀行があったけど、
このスーパーからは12,3分はかかるし、
シェフの格好をしているので、
脱いだり着たりして往復すると、
1時間の休憩では、慌しすぎる。

結論は出ないまま(いや、立て替えるしか、道はないんだけれど)、
やがて開店。

そして、女性のパートさんが、
お客さんが少ないうちに、と、
結構な量のマンゴープリンを持っていった。

さて、どうしたものか。

     ★

お客さんは、
いかりやさんの前フリとは、
大きく異なり、
めちゃくちゃ少なかった。

前の雨の降った日よりも、人が少ない気がした。

私の逆隣にいる冷凍食品のマネキンさんも、
「久しぶりに来たけど、恐ろしいほど少ない」と言った。

冷凍食品のマネキンさんは、
私とは違うかたちで苦労していた。

ホットプレートで、
冷凍食品の試食品を焼いて出すのだけれど、
作るのは裏のバックヤードでやらされていた。

でも確か、去年の皆既月食の時は、
バックに行くことなく、店内で調理していたけどなぁ……。

「なんか、クレームでもあったのかしらねぇ。
試食品を作るタイミングもわからなければ、
お客さんに直接勧めることもできゃしない」

クレームという言葉と、
このガラガラのお客さんの少なさが、
本当のところはわからないのに、
情報の乏しさから結びつく。

開店前、私といかりやさんのやり取りを見ていた
冷食のマネキンさんは、
私の事情を聞くと、いかりやさんに悪印象を持った。

私自身は、
いかりやさん自身に、悪印象をもってはいなかった。
ただ困ったなぁと思っているだけで。

「赤伝にしてくれたらいいのに」

冷食のマネキンさんは、
そんなに怒っていない私に対しても、
イラついているように言った。

赤伝というのは、
使った試食品の個数を、
メーカーの営業さんに報告し、
直接メーカーが負担するという方法だ。

つまり、精算上は、
多分、スーパーに仕入れなかったとでもいうような、
かたちにするんだと思う
(プレミアムアイスなどの高級品の試食品なんかでは、
よくある方法です)。

基本的に試食分の支払い方法は、
メーカーさんが決めるのだが、
現場の様子から判断して、
スーパーの人が事後報告で、
支払い方法を変えるのは、まれにある。

だが、いかりやさんは、
私が言ったって、赤伝処理は、
考えないだろうと思った。

赤伝処理にすると、
「仕入れなかった」というかたちにするのだから、
商品はレジを通過しない。

つまり、店の売り上げとして、カウントされない。

それではいかりやさんが、
従業員に試食品をばらまく意味はないんだろうと思った。

お店は、
「これでよく、お店が保ってられるなぁ」というくらいの、
お客さんの少なさ。

いかりやさんは、
お店の売り上げを多く見せるため、
私の売るマンゴープリンを、
今日の売り上げの奥の手として使おうとしている気がしたからだ。

その切実さ、必死さが、ひしひしと。

マンゴープリンは、
試食すれば、8割の人は買って行った。
しかも大概が、1個ではなく、家族の人数分。

客数としては少ないものの、
売れ行きとしては、好調だった。

          ちょっと休憩。つづく(でも今日中には終わらせるぞ!)

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