日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

牛乳、めぐりめぐって・前編

2007年07月28日 | 五行歌な日々
この日の仕事先のコープのお店は、
開店して、
まだ2週間しか経っていないと聞いていた。

牛乳のお仕事。しかも初めての生協牛乳。

ただ、その生協牛乳は、
あるメーカーが、
表立って名前こそ名乗ってはいないが、
生協から依頼を受けて、製造していた。

で、
普段の私なら、
その仕事先の担当者に初めて会ったとき、
「今日、○○牛乳を売る者ですが、売場は……?」
と、商品名を言って、挨拶をするのだが、

その真新しいお店の綺麗さ、
慌しさに気おされて、
担当者を見つけたとき、
生協牛乳のDSであることを、
明確には思い出せず、

「今日○○からマネキンとして派遣された者ですが」と、
めずらしくメーカー名で名乗った。

『生協牛乳』とは、言わなかった。

別に、間違ってはいない。
むしろ、マニュアルではそう言うように指示されている。

だがこれが、
これから起こる様々な混乱の、
火蓋を切る一言になるとは。

     ★

担当者は、
売場を教えてくれた。

その特設平台は、○○フェアとなっていて、
牛乳だけじゃなく、
様々な乳製品が置かれていた。

この牛乳を売るのか?と違和感を持つが、
その違和感の意味がわからない。

続けて、試飲カップの保管場所を、
教えてもらったのだが、
そこには、カップ以外にも、
抽選くじの箱や、景品も置かれていた。

え……、
抽選があるなんて、
そんなインスト、受けてないぞ……??

と、内心思っているにも関わらず、
涼しい顔して、それらを受け取る。

景品の中身を確かめる。

……ん!?どっちが1等で、どっちが2等だ??
どちらも同じ個数だからわからないぞ!?

しかも、抽選くじの箱は、ふたつある。

おかしい……。
今日一日だけの仕事なのに。
午前と午後っていうことなのか?
だとしたら、くじの量が多くないか??

なんて、思いながらも、
目の前にある事実に、自分を合わせていく。

とりあえず、
ひとつめの抽選くじの箱に、
1等のくじ、2等のくじ、はずれのくじを入れて、
ぐちゃぐちゃと混ぜた。

「これだけのくじがはけていくような状態が、
現実に起こるとすると、
牛乳の試食なんて、出来るんだろうか……」

気がつけば、
自分の頭の中のまでも、ぐちゃぐちゃ。

そんな私に、
「あの……」と声をかけてきた、ひとりの女性。

自前のエプロン、自前の三角巾。
同業者だ。

「それ、私の仕事の道具だと思うんですけど」

     ★

彼女は、
どちらの景品が1等なのか、2等なのか、
ちゃんとインストを受けて知っていた。

しかも、土日の二日間、
仕事をするという。
だとすると、抽選箱がふたつあるのもうなづける。

牛乳の試飲は、
出来るようならやって、
無理にしなくてもいい、とちゃんと指示を受けていた。

ことごとく、
現状と辻褄が合うことを知っている。

んじゃ、私は……?

「ひょっとして、ダブっているのかも!!」

と言って、
彼女は派遣元に電話を入れた。

……はい。おわかりですね。

私の仕事は「生協牛乳」。

この、メーカー名がありありとわかる牛乳の試飲じゃないわけで。

スーパーの担当者に確認すると、
「あぁ。聞いてるよ。生協牛乳の試飲」……っておいおい。
なんだよ、そのあっさり感は。

私は、冷蔵定番にある、
生協牛乳のところへ場所移動。

すでにお客さんは、買い物をし始めていた。

     ★

生協牛乳の冷蔵定番の場所は、
スペースが開いている割には、
品物の量が少なかった。
昨日売れ残ったもののみが、
置かれているだけで、
補充がされていなかった。

しかも、普段208円が、
168円ということもあって、
私がいようがいるまいが、
ことごとく売れていく。

みるみるうちにやせていく、牛乳パックの群れ。

その混雑ぶりは、
巨大大型スーパーに匹敵した。

つまり、お客さんの意識は、
「試飲」ではなく、
「飲み放題」の感覚で、
なんの抵抗感もなく、
「ちょっとちょーだい」の一言もなく、
勝手に飲んで、勝手に過ぎ去っていく。

だが、売場の面積は、
巨大大型スーパーほどはないので、
ちょっと人が立ち止まると、
暑苦しいほど、ゴミゴミ空間となった。

と、いう訳で、20分もしないうちに、
試飲に使った牛乳1パックは、
あっという間にカラになり、
人の多さで、酸素が薄くなっている感じさえした。

「こんな風に試飲をしていたら、
どんどん、売るべき牛乳が、なくなるんじゃ……」
と、不安になる。

そんなところへ、ようやく、
2ケース、24個が補充された。

パートさんによると、
オープンセールがまだ続いているので、
沢山補充分はあるんだけれど、
今はまだ時間が経っていないから、
在庫を入れている
冷蔵庫の中がパンパンになっている状態だという。

しかも、この生協牛乳は、
倉庫の一番奥にストックされていて、
補充がしたくても、
なかなか取りに行けないのだ、と。

仕方ない。

私は無駄な抵抗だと思いつつ、
カップに注ぐ牛乳の量を減らしながら、
試飲を続けることにした。

しかし、しばらくすると、お客さんが、
私の前で行列を作り始めた。

聞けば、レジが混雑していて、
数珠繋ぎに並んで待っている状態だという。

なんだか、
そんな並んでいるお客さんたちに対して、
私って、立っているだけで、邪魔ですか??状態に。

あぁ、いっそ、
この建物に、私を溶け込ませて!!
と、叫びたいくらいに。

そんな時だった。
担当者さんが現れたのは。

「ごめん。
ここ、お客さんに邪魔だから、試飲やめてもらえる?」

と、言う。

おぉ!今度はどこへ漂流させるんですか……!?
いや、いっそ「帰ってもいいよ」と言ってくれ~!!

と、いうところでタイムアップ。

つづく……とさせていただきます。

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