写真の効用

夫が私の写真を、会社のデスクに飾るから一枚ちょうだい、と言った時は、熱でもあるんじゃないかと疑った。

「好きでそうしたいわけじゃない」と怪しんだ私に嫌そうにこたえる夫。

管理職というのは、
営業所の鍵の管理や、クレーム対応など、
プレッシャーのかかる仕事が多い。

と、いうわけで、
管理職の机には、写真立てが備え付けてあって、
家族の写真を入れることを義務付けているらしい。

苦しい時に支えとなるように、という主旨で。

「家族は、パン食い競争のパンかよ！
馬の鼻先につけたニンジンかよ！」

夫が悪いわけではないが、思わず毒ついた。
義理の妹の弟さんの過労死が、脳裏をよぎる。

　　　　　★

それにしても、
反発心があるのに、
数少ない写真の中から、
比較的見栄えがいいものを探そうとする、
自分が、どこか滑稽。

でも、会社の人がナニゲにチラッと見るだろうから、
ちょっとはこだわらないとな（あーやだやだ）。

去年、城崎温泉へ行った時の、
デザイナーズブランドの浴衣を着ている写真を渡す。

「ねぇ。会社の思惑はともかく、
私という人の写真は、支えになると実際思う？」
と、夫に素朴に聞いてみたら、

「魔よけにはなると思う」と即答された。

悔しいが、ウケた。そのリアクション、合格。

写真を封筒に入れる時、
裏に五芒星（←陰陽師かよ）を指で書いて渡してあげた。

写真があろうとなかろうと、そんなに無理はしないでおくれ。