日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

「14本婦人」は、結局得をしていた。

2008年04月17日 | お仕事な日々
断続的に、
強めの雨が降っている今日のような日は、
お客さんは少ないだろうし、
ましてや、
ヨーグルトを買いたいだなんて、
思わないだろうと思っていたけれど、
少しでも安いときに、と、
まとめ買いをする人は、する。

そのご婦人も、
賞味期限が2週間後と知ると、
14本ものドリンクタイプのヨーグルトを、
購入していった。

私自身は、ありがたい気もしたが、
パートさんは、
「ざ、在庫が……」と、
慌ててメーカー側に発注するも、
もう今日中には届けられないと知り、
苦々しい顔になっていた(朝早くのご購入だったのでね~)。

それから、どのくらいの時間が経っていただろう。

少なくとも、そのご婦人が買い物を終えて、
いなくなっていても、
決しておかしくはない時間は、過ぎていた。

メインに試食をさせるヨーグルトは決まっていたが、
「味比べもどんどんさせて!」ということなので、
じゃんじゃん多種のヨーグルトを開封した。
結果、中途半端に余ったヨーグルトが、
試食台の場所をどんどん占領していっていた。

あれ?おかしい、と思う。

大量に購入されたので、
試食(試飲)を中止していた、
あのドリンクヨーグルトの、
中途半端に量が残った試食分のがない。

……、あっ!!あのご婦人の、14本の中に混ざってる!!

方々を探すが、時すでに遅し。
「14本婦人」の姿なし。

折りしも、ペットボトルに、
除草剤混入の事件が最近あったばかりの、
今日この頃。

……や、やばい。

     ★

14本婦人が見つからない今、
次にしなければならないことは、
担当のパートさんに情報を伝えておくことだ。

パートさんも、
私と同じようにスーパー内を、
探して回ったようだが、やっぱりいなかったようで。

「すぐに気づいて、連絡してきてくれたらいいけど……」と、
連絡してきたら、対応できるようにと、
交換用のドリンクヨーグルトを1本、バックにさげた。

私は謝罪したが、
「気にしなくていいですよ」という微笑みに救われる。

ほどなくして、再びパートさんが、
「電話来た、電話来た」と言いながらやって来た。

どうやら、ご立腹だったご様子で(そりゃそうだ)、
交換用のドリンクヨーグルトに加えて、
新発売の試食のメインのヨーグルトを、
おまけで差し上げようということで、
取りに来た。

やがて三度、
14本婦人が返却してきた、
そのドリンクヨーグルトを
私に返しに、パートさんが戻ってきた。

「キャップが開いているとわかって、
即、『お客様ご相談センター』に電話をしたんだって。
ほら、最近、事件があったでしょ?それもあって」

……やっぱり。タイミングがタイミングだもんなぁ。

「そやけど、幸いにもハナシ中でかからなかったんだって。
それで先にこっちに連絡をくれたらしくって」

なんかわからないけど『セーフ!』って気持ちになった(笑)

ピンチな事件の終わりを見て
すっきりしたのと同時に、
『相談センターの電話が殺到している世の中なんだな……』と、
不意に現代をかみしめて、
お昼休憩目指し、
私は試食販売のデモンストレーションを続けた。

しかし、14本婦人は、
もうひとつネタを、
私やパートさんに残していった。

知ってか知らずか、知らないけれど。

     ★

お昼休憩間近になって、
私は早々に試食のDSを切り上げる(だってヒマなんだもん!)。

本来なら、買い上げの試食分は、
仕事が終わるときにまとめて精算するのだが、
置いておく場所もないので、
先に精算し、
中途半端に残った、
何種類かのヨーグルトは、
お昼ごはんのデザートとして、食べて捨てちゃおうと決めた。

そして精算時「ん?」と思った。

同じヨーグルトでも、○○味が2個、××味が4個、と、
打ってもらうところで、
「打ちミスしなかった?」という不信感を持ったから。

後でレポートを書くとき、
試食した種類分の個数なども記述しなければならないので、
たとえ値段は一緒でも、正確であって欲しかったので、
私はレジを通り抜けた後、即、レシートを見直した。

私の思っていたことは、杞憂にすぎなかったが、
しかし、思ってもみなかった記述を見つけだしてしまった。

明細に、
「○○ゼリー 71円」とあったのだ。
私が買い上げたものに、ゼリーはないのに。

しかも、例えいろんな種類のヨーグルトがあっても、
オール110円なのに。

レジが混雑していなくてよかった。

私は、先ほどの、
レジを打ってくれた人に、このことを伝え、
もうちょっとで、ゴミ箱に捨てていた、
ヨーグルトの空箱や、
中途半端に残っているヨーグルトを差し出して、
一個一個、バーコードに光を当てて、
値段をチェックしてもらった。

結果、
根本的な、設定ミスがされているのがわかった。
その商品は、あのドリンクヨーグルト。

あの、14本婦人を大慌てさせ、
スーパーに戻してきた、
あの、ドリンクヨーグルト。

レジの人と一緒に、
そのドリンクヨーグルトを持って、
担当のパートさんに、その旨を伝える。

そのとたん、

「あのばばぁめ!!!

と、なんとも悔しそうに、パートさんは言った。

内心びっくり。私には穏やかに接してくれていたので。

レジの人は、親しげに、
「こらこら。お店のお客さん」
と、笑いながら、たしなめる。

「散々、イヤミなことを言っといて、
結局は得してンじゃないのさ!」

そ、そうですねぇ……。
新製品のヨーグルトも、タダで渡しちゃいましたしねぇ……。

「ぜーったい、レシート見直してる筈なんよ!
こういうのは、黙っているんよなぁ!」

いや、でも、値段のクレームじゃなかったし、
レシート見ているかは、どうかなぁ……。

「これ、普段は128円よ!それが71円で、14本!
どんだけ得してんねん!!」

でも、あたしも、このくらいのズルイことはするかなぁ……。
『ラッキ~』なんて、思ったりなんか、しちゃったりして……。

バーコードと商品名と値段の設定を、
PCでつくり直しながら、
ぷんぷん怒っているパートさんに、
私は黙ってうなづいていた。

14本婦人の株価、ますます下落(笑)

その後、私の買い上げた商品のレシートも訂正され、
不足分を支払い終えて、
気がつけば、休憩時間を大分過ぎていた。

お昼ごはんを買って、
休憩所へ行く途中、
煙草を吸っているパートさんを見かけた。

私は、
「これ、ひと掬いしか試食に使ってないし、
もちろん、口もつけていないので」と、
中途半端に余っている、
低脂肪のヨーグルトのカップを、
紙のスプーンと一緒に渡した。

「あ、ありがとうございます」とパートさんは
元に戻った穏やかさで受け取って、
私が休憩を終えた頃には、
さらに主婦の顔になって、帰っていった。

切り替えって、大事。

値段の設定変更をしたドリンクヨーグルトは、
結局、あれからは一本も売れなかった。残念(笑)

結果的には得をした、あの14本婦人が、
何にも気づかずに、
もしも「あの店でね……」なんて、
ご近所さんに言いふらかしたら(ま、一番の原因は私なのだが・笑)、
なんだかヤだな、と思いつつ、
私もそのスーパーでの仕事を終えた。

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