日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

秀歌集作品評④

2006年12月12日 | 五行歌な日々
ちょっと驚いたこともありましたが、
一日では、解決し切れなかったので、
完結してから、また書くとして。

秀歌集作品評、続けます。

     ★


       
       すてられた
       犬か
       歩道のまん中で
       腹を出して
       寝ている   其田英一(p225)



せつない。
二行目の「犬か」の「か」は、
作者の感嘆の声とも、疑問の声とも、
受け取れる。
私の場合は、
両方の意味合いを最初に受け取り、咀嚼し、
その上で、
前者のほうに比重を重くおいて、解釈した。
そのほうが、歌の芯がバラけずにすんだので。
犬はすてられたことを自覚していないから、
人間に対して、無条件で、
無防備な体制で寝ることができるのか。
それとも、
捨てらて、散々いじめられて、
敵意を示さない「服従」のポーズで寝ないと、
攻撃を受けると思っているからなのか。
そんなひとつの生きる術なのか。
無防備という「防御」なのか。
作者はこの犬に何を見出したのか。
どんな気持ちを重ね合わせたのか。
そして私は。
ご冥福をお祈りいたします。


       
       紙風船
       たよりないのに
       中には
       ちゃんと
       あなたの空気 藤田真実(p230)



あなたの空気は
あなたという人が生きてる証拠。
端から見れば、たよりないけど、
ちゃんと、ちゃんと、生きてる証拠。
「あなた」とはどんな人だろう。
自分(作者)のことを「あなた」と言っている?
好きな人のことをさしてる?
幼い弟?
クラスメイト?
ううん、誰だっていい。
その見えないもの(紙風船の中の空気)を
個有のものにして表現してくれた、
作者の発見のおかげで、
きっと誰かは「自分」というものを、
個有のものとして見つめるひと時を
もてたでしょう。
はい。私も。


       
       わかっているよと
       告げてくる
       ぬいぐるみの目に
       そっと囁く
       「お前の目はボタンだよ」野田 凛(p262)



ボタン。その平易な目。
だが、私の目がボタンではないと、
言い返せるだろうか。
言い返せるだけの厳しさを持って、
相手を思って、
「わかっているよ」と言っているだろうか。
そんな自問自答を繰り返してしまう。
この歌は、
歌誌『五行歌』平成16年10月号に
掲載されているときから、
好きで、
以前にもネット上で書いていますので、おヒマならそちらも(笑)


     ★


歌を選ぶにあたって、
こどもの歌は、選びにくかった。

なんらかのかたちで、
おかあさんが、介在しているような気がして。

子どもの自発的な「作品」として、
見ようとすると、なんらかのバイアスがかかった。

言っとくけれど、
子どもの歌を読んだって、
普段は困らない。

歌誌に投稿してもしなくても、
HPに投稿してもしなくても、
子どもの呟きを書き残しておくこと自体は、
いいことだなぁと思っている。

「作品」評をしようと思って読むと、
困ったのだ。

なのでまず、
小学生以下は、作品評としては、
除外した。

それから読み直して、
さらに、低学年もはずした。

そんな中で、
藤田真実さんの歌は、
自我の芽吹きのイメージがした。
この歌がなかったら、
「子ども五行歌」の項目からは、
歌を選べなかっただろう。

そんなこんなということで、また今度。

多分続きは、またしばらく先になる気がします。

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