日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

子どもの小さな欲望。

2007年04月30日 | お仕事な日々
砂金を掬うように、
昨日の巨大大型スーパーでのお仕事の中の、
ちょっと感動した話。

     ★

お父さんと、
1歳か2歳の子どもさんだった
(いや、3歳かな……見慣れないのでよくわからないです)。

「牛乳いただけますか?」と言われたので、
(味見じゃないんだよねぇ。でも断れないのよねぇ)と思いながら、
「はい、どうぞ」と笑顔でカップを差し出した。

お父さんは受け取って、
カートに乗っている子どもに「牛乳飲みや」と、
カップを口に近づけた。

子どもは嫌がった。

私は、あぁまたか、と思う。

本当に、びっくりするくらい、
「与えられるものは与え続ける。それが親の愛情」
と、でも思っているのか、
子どもの「いる/いらない」の判断もさせずに、
タダでもらえるものは全部受け取って、
子どもに押し付ける親の
多いこと、多いこと。

愛情の機微がなさすぎ。

「あんたねぇ、
となりの置きっぱなしになっている、
ウィンナーやチキンナゲット類も、
全部子どもの口に放り込んだだろう。

子どもよく見ろよ。
まだモグモグしているじゃねーか。
さらに、牛乳流し込むってか?
残酷だねぇ。

自分の思いをまだ表情でしか伝えられないんだから、
子どもも意思を伝えられなくて、
受難だよな。

まぁでも、その親の元に生まれたのも何かの縁だ。

子どもよ、良くも悪くも、
『押し付け=愛情』というひとつの構図が、
あんたの基準になっていく。

その基準に対して、どれだけあんたが、
苦悩しながらも、
自分の力で栄養にしていけるか、
それは、あんたの人生の責任において、
やっていかなきゃいけないよ。

そこらへんは自由なんだから。

親のやり方に依存しすぎて、
自分の気持ちがわからなくなる前に、
いろんな人間と関わって、たくましく育っていけよ。
ま、大変だろうけどさ」

と、じゃんじゃん飲み食いさせる親に、
きょとんとしながら、
自分が何をどう思っているかを、
思慮するヒマもなく、
ただ、漠然と
私をじーっと見ている子どもには、
言葉にすると結構長いけど(笑)、
そういう思いを
全く届かないであろうテレパシーで(?笑)送ったりした。

が、このお父さんは違っていた。

     ★

お父さんは、
何回か牛乳を子どもに勧めたけれど、
飲まない子どもに諦めて、
牛乳を私に戻そうとした。

すると、子どもは牛乳を欲しがった。

で、お父さんが飲ませようとする。
が、嫌がる。

なんやねん、一体と、内心思いながら、
私はパブリックスマイルをして黙っていた。

するとお父さんは、子どもの小さな欲望を察知した。

「すいません。
あの、僕の変わりに、
カップをこの子に渡してあげてくれませんか?」

あ、そうなのか、そういうことだったのか!

私はお父さんに渡していたカップを受け取って、
子どもに直接「はい、どうぞ」と、
渡してあげた。

すると子どもは喜んで、
牛乳を受け取けとり、ごくごく飲み始めた。

察知したお父さんにも感動したけれど、
こんな小さな子どもですら、
そういう細やかな欲望を持っているんだな~、と
感動した。

やっぱり子どもは、
ある意味では表現力があるんだろうけど、
別の意味では表現力が身についていないんだから、
窮屈だなぁと思う。

小さいけれど「人間」。「人形」じゃなくてね。

その小さな人間の上手く表現できない欲望に、
親は、
応えれるときは応えてあげればいいし、
応えられなければ断念すればいい。

姿勢さえ見せていれば、断念したところから、
子どもは子どもなりに考えてくれる。

すぐに気持ちの切り替えては無理だと思うけど。
大人になってから考えるかもしれないけれど。

子どもは必ず考えて、
予想もつかなかった答えを出して、
人として成長してくれる。

カートを押して立ち去るお父さんの背の向こうから、
私をじっと見る子どもに「バイバイ」と手を振りながら、
親子特有の
人と人との愛情の機微に触れたことを
嬉しく思っていた。

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2 コメント

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Unknown ()
2007-05-07 11:02:40
うーん、いい話だ。いい父親だ。
その子のなかで、スーパー(試食コーナー)では、
「親じゃなくお店のひとから貰うもの」というルールみたいなのができちゃってたんですね。

子どもには子どもなりのルールとかかんがえとか思い方がちゃんとあって、気まぐれに怒ったり欲求するわけじゃないと思っています。それはすごくシンプル。シンプルすぎて気づけないことが多い。

でも、気づけなければそれなりに子どもはそこから考える…なるほどなぁと思いました。勇気づけられました。姿勢は忘れずに、とも。(*^_^*)
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欲望と思考 (いなだっち)
2007-05-08 12:36:20
うん。素朴でいいお父さんだなぁ~と思った。

んでもって、子どもも、
こんなに小さいときから、
「社会的欲求」というものを持つんだなぁって、
びっくりしたの。

この欲望って、
「食欲」という生理的欲望じゃないものね。

失礼な言い方かもしれないけれど、
本当にペットじゃないし、
こんなにも成長が早いんだなぁと感動しちゃった。

でも、逆のパターンも見たことがあるの。

親がずーっと与え続けるから、
もらえるものは、何が何でももらわなくてはと、
考える子ども。

試食品に関心がなくて、
スルーする親に必死で訴えかけて、
口の中がいっぱいなのに、
さらにもらおうとする子ども。

これもきっと、
生理的欲求じゃないんだろうなぁ~と。

子どもにも社会的欲求はある。
それに常にピンときて、
応え続けていけば、
きっと子どもは、わがままになる。
思考力はなくなっていく。

親ですら気がつかないことが、
この世にはあって、
どうにもならないことの前で、
どう思えばいいのか、
そんなことを考えさせるいいチャンス。

とりこぼしたことですら、
子どもは栄養にするんじゃないでしょうか。

そんな気がします。
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