山形で大逆転狙う「20年売れなかった芸人」の人生~古民家を月100円で借り、畑まで耕す本気ぶり

2022年01月29日 | **ライフアドバイザー、Hide

山形で大逆転狙う「20年売れなかった芸人」の人生~古民家を月100円で借り、畑まで耕す本気ぶり

1/23(日) 5:21配信
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東洋経済オンライン

ソラシドの2人。左が水口靖一郎、右が本坊元児(筆者撮影)

東京や大阪で成功するだけが人生ではない。それは芸人の世界でも同じだ。都会で売れるという目標を捨て、あえて地方での活躍を目指した「よしもと住みます芸人」たちに密着する本連載。
第6回では、山形県住みます芸人の「ソラシド」に迫る。大阪で売れず、東京でも売れなかった2人が山形を“再出発の地”に選んだ理由とは?  執筆者はルポライターの西岡研介氏。過去記事はこちら。

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 「僕らが今おるんは、ここ(山形)なんで、こっから(全国に)発信していこうと……」

 山形県住みます芸人の「ソラシド」の本坊元児(43)が私にこう話していたのは、一昨年の夏のことだった。

 その半年後、本坊の存在は、東京のテレビ局からも注目され、2021年1月には日本テレビの『しゃべくり007』や『人生が変わる1分間の深イイ話』に立て続けに出演。同年4月にはテレビ朝日の『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』でも、彼の山形での生活が取り上げられた。

■結果を出してもリセットを繰り返す日々

 ソラシドは本坊と水口靖一郎(45)が2001年に結成。昨年、コンビ結成から20年を迎えた。同期には麒麟やアジアン(2021年6月解散)がおり、麒麟の川島明や、千鳥のノブ、笑い飯の西田幸治ら芸人仲間から高い評価を受けている中堅芸人だ。が、コンビ結成から10年はチャンスに恵まれず、「大阪でくすぶり続けていた」(水口)という。

 「それでもまだ、大阪ではそこそこ仕事あったんですよ。『京橋花月』には、よく出させてもらってました。ただ、年を重ねていくごとにNGKの出番も、M-1のファイナリストで埋まっていくようになって。そのうちに『京橋花月』も閉めるっていう話(2011年11月閉鎖)が出てきて、いよいよ『路頭に迷うやん』となって」(本坊)

 「それで『もう、こうなったら東京行くしかないな』って。けれども、くすぶってるわ、そこそこ、芸歴も積んでるわという芸人が、何のきっかけもなく上京するっていうのも前例がなかったみたいで、会社(吉本興業)の偉い人に『東京に行きたいです』って言いに行ったら、『何しに行くねん?』って言われて(笑)」(水口)

 しかし、上京した二人を待っていたのは、大阪時代よりさらに過酷な芸人生活だった。

 「そんな感じで大阪を飛び出したんで、会社の人からは『お前らには一切、手貸さん』言われまして(笑)。東京行ってからは(芸人になって)1年目の子らが出るオーディション受けて、劇場のレギュラー、どんどん獲っていって」(本坊)

 「けれども、レギュラー獲れたなぁ思ったら、(その劇場の)支配人が変わって、『ソラシド?  知らんなぁ……』みたいな感じで、『はい、リセット』と。また一からオーディション受け直す、みたいな生活を繰り返してました」(水口)

一方、二人が上京して半年後の2021年4月から、吉本興業の「47都道府県 あなたの街に“住みます”プロジェクト」が始まる。前回、香川県住みます芸人の梶剛の稿でも触れたが、本坊が愛媛県松山市出身(水口は大阪市出身)ということもあって、ソラシドにも声がかかった。

 「そのときは、月に1回、ライブで漫才できるか、でけへんかみたいな状態で。穴掘りやら、解体工事やら、肉体労働のバイトばかりの生活で。(住みます芸人の話を持ちかけられたときは)一瞬、『毎日、お笑いの仕事ができるんなら、なんて幸せな生活やろう』『これで、工事現場(でのバイト生活)から逃げられる』と思いました。

 けど、東京に出てきて半年も経たんうちの(住みます芸人の)話やったんで、さすがに、もう少し東京に残って結果出したいと思って、断ったんです」

 その後、本坊は、前述の梶と武蔵小山でルームシェアを始めるのだが、その半年後、前回でも述べた通り、梶が実家の事情で郷里の香川に帰ったことから、本坊は再び一人暮らしに戻り、肉体労働に勤しむことになる。

■過酷なバイト生活をネタにし「プロレタリア芸人」に

だが、この本坊という男、根っからの芸人なのだろう。後に、あれほど逃げたがっていた工事現場での過酷なバイト生活をネタにしたエッセイ、『プロレタリア芸人』(2015年 扶桑社/2021年 扶桑社文庫)を上梓。同書には、当時の本坊はもちろん、彼と同様に〈東京で売れていない地獄芸人〉たちの生活ぶりが、悲哀のこもったタッチで綴られており、面白い。

 また本坊のインディーズ時代からの後輩で、ソラシドと同様に2010年に上京し、2017年のM-1で優勝するまで、不遇をかこっていた「とろサーモン」の村田秀亮が2012年から2年間、「プロレタリア芸人」だった本坊に密着。

 その日常を撮り続けたドキュメンタリー、「本坊元児と申します」は現在もYouTubeで公開されているのだが、これがなかなかの秀作で、本坊の魅力はもちろんのこと、村田のドキュメンタリー作家としての才能も窺える作品になっている。

 一方、本坊がその生活の大半を工事現場でのアルバイトに費やしていた間、相方の水口は「防災士」の資格を持っていたことから、東京23区の小、中学校などが行う「防災訓練」の指導員の仕事で、生活を維持していたという。

 「23区の中でも世田谷区は各小・中学校が月1回のペースで、防災訓練やっていましたから、ほぼオールシーズン、仕事はありました。けど、僕らはやっぱり芸人ですから、お笑いの仕事がしたかった。そんなときにもう一度、会社のほうから『住みます芸人やってみいへんか?』っていうお話をいただいたんです。

 ただ、最初から『山形はどうや?』という話だったんで、仕事はもちろん、遊びにも行ったことのない、知らなすぎる土地やったんで、僕自身はどうかな……と思ってたんです。が、僕ら基本的に“ニコイチ”なんで、まずは相方の意向を聞いてみんと、と思って尋ねたら、意外にも『行こか』と」(水口)

 
「僕は、肉体労働のバイト辞める理由が欲しかったんで、実は『すぐにでも行きたい』と思ってたんですけど(笑)。

 水口から『何か新しいことせえへんか』みたいな話を持ちかけられたのも初めてでしたし、そのときの水口の声の感じも、『どこか新しいところで挑戦したいと思っている』というトーンやったんで。

 それに、東京に出てきたはええものの、鳴かず飛ばず(の状態)が続いて。たまに仕事が入ったと思ったら、ピンの仕事で、しかもバイト。こんな状態でコンビ続けていけんのかな、もういっぺん、新しいところでコンビの仕事をやっていきたいと思ってたとこやったんで、『行こう』と」(本坊)

■「山形県住みます芸人」として再出発

 そして、2018年10月からソラシドの2人は、「山形県住みます芸人」として、大阪時代から数えて3度目となる芸人人生のスタートを切った。

 「最初の半年はキツかったですね。『(吉本から)聞いてた話とちゃうやないかい!』と(笑)。けれども、半年ぐらい経った頃から、隔週やった(地元テレビやラジオの)仕事が毎週、入るようになって。そのうち営業の仕事もいただけるようになって、去年(2019年)の夏ぐらいには毎日、コンビの仕事が入るようになって、よっしゃ、よっしゃと……」(本坊)

 だが、住みます芸人として、ようやく軌道に乗りかけた2人を新たな不運が襲う。コロナ禍である。

 「東京や大阪の芸人もそうでしょうけど、コロナで、それまでに決まっていた仕事が全部、立ち消えになりましたね。レギュラーの仕事もそれまでの3分の1になって」(水口)

 「僕なんか、(仕事の)調子ええときに、耕運機買ってしまいまして(笑)。いつか畑やりたいな思って。給料入るんは2カ月先やいうのに。コロナがきて『しまったぁぁぁ!』ってなったんですけど、後の祭りで。一時は生活費が底をつき、このまま死ぬんちゃうかと思いました」(本坊)

 つくづくツイてない二人だが、ここからがソラシドというコンビのしぶとさ、だろう。山形県住みます芸人になった後、本坊が趣味の三線を通じて知り合った同県西村山郡西川町の住民から、畑付きの古民家を「月100円」の家賃で借り、くだんの耕運機で「本坊ファーム」を開墾。そこで野菜を栽培、収穫する様子などを、コロナ禍が始まった2020年3月からYouTubeで配信し始めたのだ。

 西川町は、山形市の中心部から西方約32キロにある、出羽三山の「月山」で知られる町で、冬には大量の雪が積もるという。

 「はじめは大家さん、この家、くれるって言ったんです。畑とか全部(笑)。けど、もらったら贈与税とかがかかるっていうんで、『月100円』の家賃で貸してもらうことになって。というのも、ここらへんは冬になったらドカッと雪が降って、毎年、屋根の雪下ろしが大変で、(家を)管理する代わりに畑とか好きに使ってええよって。

 これこそ、やりたかったことやと思って。『住みます芸人』になったんやったら、『住みます』の強みというか、地の利というのをドーンと打ち出したろうと思って。

 コロナ禍で、東京の芸人も一斉にYouTubeやり始めましたけど、例えば、僕より知名度ある奴より、僕のほうがでっかいとこに住んでて、畑やってて……というほうが面白いやないですか。住みます芸人の地の利を活かした、東京の芸人とは違う、エピソードを作っていきたかったんですよね。

 このコロナ禍で、YouTubeで、どこからでも、どんな『番組』でも発信できるようになったという状況は、特に住みます芸人にとってはチャンスやと思うんですよ。ただ(地上波)テレビに取り上げてもらうのを待つんじゃなくて、こっちから発信していくという。そのうちにこの山形で、全国的に注目されるようなコンテンツができたらええなと思っています」(本坊)

■作った農作物が「ふるさと納税」の返礼品に

 彼らの思惑は当たり、冒頭で記したように、本坊の山形での生活ぶりは、東京のメディアの注目を集めた。が、その後もソラシドは、大根から始めた野菜作りを、にんにくやサニーレタス、カボチャへと拡大。当初、地元のマルシェや道の駅が主だった販路も、専用通販サイトを開設するまでに広がり、にんにくに至っては、山形県ふるさと納税の返礼品にまでなった。

 このしたたかな中堅コンビの「住みます芸人」が繰り出す、次なる「山形発全国行き」のコンテンツが楽しみだ。

西岡 研介 :ノンフィクションライター


sno***** | 14時間前
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吉本興業の「47都道府県 あなたの街に“住みます”プロジェクト」は上手くいく芸人とそうでない芸人がいると思う。
数年前にご当地アイドルブームは定着しなかった。アイドルは賞味期限があるがお笑いは長く続けれますからね。
地元に定着(人気も)出来れば地方イベントに呼ばれるようになるそうです。都心で多くの芸人と競うより良いのかもしれない。ただ芸人の実力が求められるのは間違いない、
そしてゆくゆく地方のアナウンサーみたいに、地元の顔になって市議会議員になる人もいるかもしれない。

返信1

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per***** | 15時間前
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一方、二人が上京して半年後の2021年4月から、吉本興業の「47都道府県 あなたの街に“住みます”プロジェクト」が始まる。

で、2018年に山形で住みます芸人として・・・って、時系列がめちゃくちゃ。
ちゃんと仕事しよう。ミスがないかチェックしよう。
記事時代は面白いのに勿体ない。

返信4

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tak***** | 12時間前
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吉本はどうすれば芸人が売れるのか、よく考えていると思います。芸人育てて、劇場作って活躍の場を作り、それでも足りないと思えば、地方に活路を見出す。流石です。

返信1

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miy***** | 11時間前
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本坊さんの人柄のおかげか山形に愛されてますね!売る野菜はソッコーでソールドアウトだし!山形が注目されるのも嬉しいしソラシドの2人に仕事が増えるのも嬉しい!

返信0

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clione | 13時間前
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ソラシドの二人
山形に来てくれてありがとう(´ω`)
ちなみに本坊ファームで作った
野菜は道の駅などで
全て完売になるそうです。

返信0

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cmx***** | 8時間前
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補助金争奪事業やね。

現場企画のできる代理店か。
重税の再分配で丸投げ霞が関に切り込むところまで行けたらすごい。

行政に金出させてとこまでの事業なんだろうけど。

返信0

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dmb***** | 2時間前
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TBSラジオの川島明のねごとで、(今週の本坊さん)というコーナーがありますよね。
ソラシドのネタは見たことありませんが、ツイッターだけでも面白さが伝わります!!応援してます!!

返信0

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age***** | 4時間前
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あの辺は山菜キノコの宝庫だし全国的にも貴重な夏スキーができるとこ
湖でのカヌーやトレッキングとか自然遊びには事欠かない
猟銃の資格も取ってジビエもやっちゃえよ
お笑いライブ付きの体験ツアーを企画したらおもしろいんじゃないか

返信0

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minimal | 15時間前
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全然知りませんでしたが好感がもてました。
今度見てみようと思います。

返信0

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mid***** | 5時間前
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もしかして夕方のテレビでコーナーがあるコンビの人達かな?よく知らないけどいい人達だなと思って見てました。





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