三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態

2018年07月09日 | 消費者情報
三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態
7/9(月) 6:00配信 東洋経済オンライン
三越伊勢丹「クールジャパン」のあきれた実態
商業施設「Lot10」に入居する三越伊勢丹HDの店舗(写真提供:古谷経衡氏)
 百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、公的資金が投入された海外店舗をめぐって迷走劇を演じていることが明らかになった。

【図表】ジャパンストアをめぐる経緯

 三越伊勢丹HDは7月初旬、マレーシアの合弁会社「アイシージェイ デパートメントストア」(ICJ)を完全子会社化した。三越伊勢丹HDが約10億円(出資比率51%)、官民ファンド「クールジャパン(CJ)機構」(海外需要開拓支援機構)が9.7億円(同49%)を出資して2014年10月に設立されたICJは、クアラルンプールで店舗面積1万1000平方メートルの大型商業施設を2016年10月から運営してきた。

■地元住民がそっぽ

 この店舗は安倍政権肝いりの「クールジャパン戦略」に沿って、日本の伝統やポップカルチャーを発信するために日本の商品だけを扱う拠点として耳目を集めた。名付けて「伊勢丹 ザ・ジャパン・ストア」。が、ふたを開けてみると地元住民にそっぽを向かれ、業績が振るわない。2017年度の売上高はわずか16億円、営業損益は5億円の赤字だった。

 結局、単独の自力再建を目指し、三越伊勢丹HDはCJ機構が持つICJの全株式を今回買い取った。

 一連の動きはCJ機構が投資の損失が膨らまないように、早期に出口を模索したかのように映る。ただ、百貨店関係者は一様に首をひねる。「開業2年で十分な利益を出せる店舗なんてない。そもそもCJ機構は長期視点で事業者を支援することが売りの一つだったはず」(都内百貨店の社員)。

 早期撤退の理由について、ある政府関係筋は「すべて三越伊勢丹HD側の事情」と語る。

 この関係筋によると、CJ機構側は昨年9月ごろから再建案の策定を三越伊勢丹HDに何度も打診した。だが「会議を開こう」とメールを送信してもまともに返事が来ない。話し合いに応じる姿勢が一向に見られなかった。

 今年1月にようやく再建に向けた会議が開かれた。ところが、翌2月に突然、三越伊勢丹HDが「(共同での)事業をやめたい」と切り出した。さらにCJ機構が保有する株式の買い取りについて、「無償での譲渡を要求した」(関係筋)という。

 再び行き詰まったが、経緯を知った大物議員が介入したことで、「出資額(9.7億円)の半値で買い取る」との条件で落ち着いたようだ(取得額は未公表)。

■前社長の施策をことごとく否定

不自然な動きの背景には、三越伊勢丹HDの経営体制の急変がある。

 大西洋前社長の電撃解任を受けて、2017年4月に杉江俊彦社長が就任した。大西前社長は発信力のある経営者だったが、業績は低迷。後任の杉江社長は社内で数値管理の徹底を打ち出し、「大西前社長が導入した施策を、ことごとくやめている印象がある」(別の百貨店関係者)。

 大西前社長は国内店舗で日本製品を積極的に発信したり、外務省が英ロンドンなどに設置する「ジャパンハウス」への出店を検討したりするなど、クールジャパンの取り組みに熱心だった。ジャパンストアも完全な“大西案件”。異例の枠組み見直しには、尾を引く三越伊勢丹HDの内紛が背景にあったようだ。

 ジャパンストアは間接照明を取り入れた豪華な内装で、ファッション、ライフスタイル、カルチャーとテーマによって編集された売り場が特徴だ。

 今年5月に連続4日間、同店を訪れた文筆家の古谷経衡氏は、「実質5フロアのうち、1階から3階まで顧客がいなかった。各フロアに20人ほどのスタッフがいたが、談笑していた。施設が豪華なだけに、閑散とした雰囲気が際立っていた」とその印象を話す。

 全体的に商品の値段はかなり高い。山梨県産ブドウは1箱(2房)約2万円、山梨県産桃1箱(5個入り)約1万円、小さな仏像が約11万円、フライパンには約1万円の値札がついていた。

 「本物の日本」を発信するコンセプトだが、カルチャーコーナーには日本文化とは無縁の洋書や、ミッキーマウスの模型が並んでいた。

■政府が支援すべき案件だったのか

 三越伊勢丹HDはジャパンストアの今後について、「(共同ではなく)1社で運営したほうが柔軟に対応できる。クアラルンプール市内にはほかに3店舗あるので、連携して展開していく。品ぞろえを見直し、店舗改装も視野に入れて再チャレンジしたい」とする。ただ、どこまで再建に本腰を入れるかは不透明だ。

ジャパンストアの問題は、CJ機構の存在意義にもつながる。日本文化の海外展開を目指して2013年に発足したが、成果は芳しくない。会計検査院が2017年3月末の官民ファンドの投資損益を調べたところ、CJ機構については17件、約310億円の投融資で44億円の損失が生じていた。

 明治大学公共政策大学院の田中秀明教授は「CJ機構の投資対象には政府が支援すべきか疑問な案件もあり、収益を上げるためのガバナンスが弱い。現在14もの官民ファンドがあるが、三つあれば十分。CJ機構も統合されるべき」と説く。

 見逃してはならないのは、ICJに政府出資が含まれていたことだ。日本文化の発展促進、官民プロジェクトの正当性、税金の適切な使途など、複数の観点からジャパンストアをめぐる経緯を精査する必要がある。


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