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洋菓子店3200店にクレーム“1万2000回”。超モンスター級の常習犯を生んだ「小さな成功体験」とは?

2018年09月23日 | 政治社会問題
洋菓子店3200店にクレーム“1万2000回”。超モンスター級の常習犯を生んだ「小さな成功体験」とは?

9/23(日) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン
洋菓子店3200店にクレーム“1万2000回”。超モンスター級の常習犯を生んだ「小さな成功体験」とは?
きっかけは、1つのケーキだった。
 100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に発売前から需要が殺到している。
本記事では、恐るべき常習クレーマーの事例から、クレーム担当者が必ずおさえておかなければいけない事柄を特別公開する。(構成:今野良介)

● 【サービス向上→クレーマー増加】 という図式

 「お客様は神様」「クレームは宝の山」というお客様第一主義の考え方は、今も多くの企業に浸透しています。たしかに、クレームは、サービス向上や商品開発に役立てられることもあります。

 しかし、企業が目指す「顧客満足」を逆手にとって、やりたい放題のクレーマーがいるのも事実です。むしろ、企業努力によって商品の性能やサービスが向上し、世の中が便利になればなるほど、消費者の期待値が上がり、クレーマーが増殖するの図式があるのです。

 たとえば、保証期間が過ぎた製品を無料で修理させようと、メーカーにくってかかる人は少なくありません。

 「購入してからまだ10年なのに、スイッチが入らなくなった。大金をはたいて買ったんだから、そちらの責任で修理しろ!」

 「待たされる」ことに過敏な人も増えています。

 「いつ商品が届くんだ?明後日だ?今どき、そんな商売は通用しない!」

 あるいは、正論で店員を叱責する「紳士」もいます。

 「釣り銭はトレイに置きなさい。お札はきちんと表裏をそろえるのが礼儀だ!」

 これはスーパーやコンビニなどのレジで見かける光景です。高級ホテルでの会計ならいざ知らず、レジ待ちの行列ができている商店では通用しない、過剰要求でしょう。

 こういうような現場を経験すると、「お客様は何様ですか!」と、思わず叫びたくなることもあるでしょう。ホスピタリティに慣れすぎた消費者が「行き届いたサービス」を求め、モンスター化するケースはあとを絶ちません。

● 「お客様第一主義」の呪縛

 そうした流れに対処しようとする企業も現れ始めています。コンビニやファミレス、ファーストフード業界では、一部の店舗で24時間営業をとりやめています。また、宅配便では、大手企業が率先して時間帯指定の配達の再検討に乗り出しています。

 こうした見直しは、人手不足や過重労働問題などの解決策の一環ですが、言い換えれば、顧客に利便性を訴えるだけでは、企業として立ち行かなくなったのです。クレーム対応においても、従来の「お客様第一主義」だけでは担当者の身がもちません。

 私は、警察官から民間流通業の渉外担当者に転身してまもない頃に、しつこいクレーマーを前にして、進退窮まる状況を経験したことがあります。

 警察では、傷害・暴行、恐喝・窃盗など、「刑法に触れるかどうか」で、クロかシロを判断すればよかったのですが、クレーム対応では、そうはいきません。いくら理不尽なことを言われても、あくまで相手はお客様だからです。クレーマーに対して、警察官時代に身につけた逮捕術は役に立ちません。かといって、つたない接客術でその場を切り抜けることもできませんでした。

 しかし、ある日を境に私は変わりました。そのときの情景はいまでも忘れません。

 食品への異物混入を訴える高齢男性のクレームに対応したときのことです。私は男性の自宅を訪れ、板の間に正座しました。

 男性は、

 「責任をとれ!」
「誠意を見せろ!」
「オマエのようなやつは死んでしまえ!」

 などと、私を罵倒し続けたのです。

 私は、ひたすらお詫びしていました。
時間だけがむなしく過ぎていく中で、茫然自失の状態でした。
しばらくすると、男性が私の額を小突いて、こう言い放ちました。

 「おまえじゃ話にならん! 出て行け!」

 その瞬間、私は我に返り、お客様第一主義の「呪縛」から解き放たれました。

 「そうですか。それでは失礼します」と丁寧に断ったうえで男性宅から退出しました。
そして、その翌日、男性に電話をかけました。

 「申し訳ありませんが、商品を交換したことで、私は誠意を尽くしていると思っています。これ以上の要求をされるのであれば、警察・弁護士とも相談のうえ、対応させていただきます」

 受話器の向こうからは、「もうええ。なかったことにしてやる」という声が聞こえました。

 私は、この経験をきっかけに、明らかに度を超えたクレーマーには、毅然とした対応をしなければならないということを学んだのです。

● 恐るべき「常習クレーマー」の事例

 大衆モンスターの中には、悪質な「常習犯」も見られます。


 ------洋菓子店の事例-----------

 2015年9月、45歳(当時)の女性が詐欺容疑で兵庫県警に逮捕された。洋菓子店やパン屋に「ケーキに髪の毛が入っていた」などと偽りのクレームを入れ、商品代金や代替品をだまし取った容疑である。

 事件が明るみになったのは、大阪府豊中市の洋菓子店と神戸市北区のパン店から、それぞれ「ショートケーキ1個」「現金1085円とクリームパン2個」を詐取したことが発端だった。

 ところが、捜査の過程で驚くべき事実が浮かび上がってきた。

 携帯電話の通信記録を洗い出してみると、犯行が発覚するまでの8ヵ月間で、全国各地の洋菓子店やパン店など約3200店に、計1万2000回もの電話をかけていることがわかったのである。

 手当たりしだいにターゲットを物色していたのか、電話番号案内「104」にも5000回以上かけていた。

 その後、女は「これまでに500回くらい(詐取に)成功した。現金や商品で60万円以上をだまし取った」と供述。また、「2013年の秋、大阪市内のケーキ店で商品を購入した際、『髪の毛が入っている』とクレームをつけたら、レシートや現物を見せなくてもお詫びの商品をもらえた」と、常習化のきっかけを明かしている。

 (了)

 この女性は、大手食品メーカーなどで名の通ったクレーマーでした。

 一部の報道によれば長年、生活保護を受けながら高齢の母親と二人暮らしだったようですが、年齢からいえばバブル世代。かつては、華やかな暮らしぶりだったようですが、劣等感や不満を抱えるようになり、そんな中、企業や店の丁寧な対応ぶりに優越感を覚えたとしても不思議ではありません。そして、思いがけない「成功」で味をしめ、常習クレーマーの道を歩みだし、犯罪者となってしまったわけです。

 これは極端な例だと思われるかもしれませんが、理不尽な要求を一度受け入れてしまい、クレーマーが成功体験を得て常習化するケースは、非常によくあるのです。
担当者がクレーマーを育ててしまった、とも言えるでしょう。

 だからこそ担当者は、クレーム対応の原理原則を知り、一度でもクレーマーの理不尽な要求に屈してはいけないのです。

 ただし、役所などの公的機関では、複雑な問題を抱えています。クレーマーであっても納税者である以上、担当者はどうしても弱腰になりがちだからです。いわゆる「お役所仕事」は市民からバッシングを受けがちですが、今や、そんな悠長に仕事をしている職員は少数派ですし、民間企業より激しいクレーマーの被害に遭っている職場もあります。

 たとえば、保健衛生に関する通知を出すと、

 「どうして、そんなことを行政が独断で決めるんだ!」
「杓子定規な対応をするな!」
「公務員でいい身分だな!」

 と、敵意をむき出しにするモンスタークレーマーも少なくありません。
「顧客満足」ならぬ「市民ファースト」を逆手にとって、傍若無人な振る舞いをするのです。

 しかし、公的機関であっても、クレーム対応の原理原則に変わりはありません。『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、こうした時代背景の中で、急増するモンスタークレーマーの“終わりなき要求”を断ち切る23の技術を、会話術から法律知識まで、余すところなく紹介しています。

 ぜひ、日々のクレーム対応に使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で、「顧客満足」を追求してください。


9/23(日) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン
援川聡(えんかわ・さとる)
(株)エンゴシステム代表取締役
1956年広島県生まれ。79年大阪府警察官を拝命。95年に大手流通業(株)マイカルに就職。元刑事の経験を生かし、トラブルやハードクレームの対応にあたる。適切で確実な解決術は高い評価を受け、業界団体の講師を務めるなど悪質クレーム処理の専門家として認知される。2002年、「困難なクレームを解決し、企業の危機管理を援護する」をモットーに(株)エンゴシステムを設立。豊富な現場経験と独自のノウハウをもとにリアルタイムで企業、医療機関、役所等をサポート。常に数十社と顧問契約を結び、これまでアドバイスした件数は5000を超える。講演・セミナー講師を年間100回以上務めるほか、新聞・雑誌への寄稿、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」、フジテレビ系「プライムニュースイブニング」などテレビ出演も多数。
著書に『現場の悩みを知り尽くしたプロが教える クレーム対応の教科書』、『クレーム処理のプロが教える 断る技術』(幻冬舎)、『超プロがついに明かす クレーマーの急所はここだ!どんな問題もすべて解決!』(大和出版)などがある。

援川聡







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