死者が地球の化学組成変える? 研究
AFP=時事 4/27(木) 12:32配信
死者が地球の化学組成変える? 研究
中国・香港の墓地(2017年4月2日撮影、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】人間は、生きている間に自然に爪痕を残すだけでなく、死後にも腐敗分解される遺体によって貴重な土壌の化学的性質を変化させると警告する研究報告が26日、オーストリアの首都ウィーン(Vienna)で開かれた欧州地球科学連合(EGU)総会で発表された。
土葬や火葬された遺体からは、鉄、亜鉛、硫黄、カルシウム、リンなどが、後に農地、森林、公園などとして使われる可能性のある土地の土壌に浸出する。
今回の最新研究によると、これらの元素類は必須栄養素ではあるものの、人間の葬儀の慣習によって、自然界全体に均一に分散されずに墓地に集中することになるという。
このことは、動植物による最適な吸収量に対して過度に栄養素が集中している場所と、逆に栄養素が不足した状態の場所が生じる可能性があることを意味する。
さらに、人間の遺体には、歯の詰め物に由来する水銀などの有害な元素も多く含まれている。
今回の異色の研究に参加したチェコ生命科学大学(Czech University of Life Sciences)のラディスラフ・スメイダ(Ladislav Smejda)氏は「腐敗した遺体の化学的痕跡は、土壌中で非常に明確に識別できる場合が多い」と話す。また、これらの痕跡は、数百年から数千年の非常に長期にわたって残存するという。
その影響は、埋葬される遺体が増えるにつれてますます顕著になり、「現在の観点ではそれほど問題にならないかもしれないが、世界的に人口が増加すれば、将来には差し迫った問題となる可能性がある」とスメイダ氏は指摘した。
スメイダ氏と研究チームは、墓地や遺灰「散骨園」などの土壌化学組成を分析するために、蛍光X線分析を行った。
■死してなお
また研究チームは、動物の死骸を用いて「風葬」と呼ばれる古代の葬制の理論的影響を評価した。風葬は、遺体を埋葬せずに外にさらして自然に処理させる方法だ。
分析の結果、土葬、火葬、風葬の三つのケースすべてで、土壌には周辺よりも「有意に」高い濃度の化学物質が含まれていたと、スメイダ氏は指摘した。
もし墓地がなかったら、人間の遺体は、動物の死骸と同じように無作為に分布して、死体から放出される栄養物が「何度も繰り返し、至る所で」再利用されると考えられると、スメイダ氏はAFPの取材に語った。
だが、遺体を特定の場所に集めることは「自然ではないこととみなすことができる。それは人的な影響であり、自然の濃度を変えることになる」と、スメイダ氏は説明する。
そこで問題となるのは「必須元素をより広範な地理的範囲にわたって分散させる方法に関するより良いアイデアを生み出すことは可能なのか」だと、スメイダ氏は続けた。
「より環境に優しく、より環境保護に寄与する可能性のある新たな埋葬方法や、新たな遺体処理方法などが発明、開発、実現される可能性は確かにある」と話しながらも、葬儀の習慣は文化や宗教に深く根ざしているものであるため、多くの人々にとってこの種の話題が「タブー」となっているのは事実だと、スメイダ氏は認めた。
「これは非常に複雑な問題で、われわれはまだ議論のスタートラインに立ったばかりだと思う」と、スメイダ氏は話した。【翻訳編集】 AFPBB News
AFP=時事 4/27(木) 12:32配信
死者が地球の化学組成変える? 研究
中国・香港の墓地(2017年4月2日撮影、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】人間は、生きている間に自然に爪痕を残すだけでなく、死後にも腐敗分解される遺体によって貴重な土壌の化学的性質を変化させると警告する研究報告が26日、オーストリアの首都ウィーン(Vienna)で開かれた欧州地球科学連合(EGU)総会で発表された。
土葬や火葬された遺体からは、鉄、亜鉛、硫黄、カルシウム、リンなどが、後に農地、森林、公園などとして使われる可能性のある土地の土壌に浸出する。
今回の最新研究によると、これらの元素類は必須栄養素ではあるものの、人間の葬儀の慣習によって、自然界全体に均一に分散されずに墓地に集中することになるという。
このことは、動植物による最適な吸収量に対して過度に栄養素が集中している場所と、逆に栄養素が不足した状態の場所が生じる可能性があることを意味する。
さらに、人間の遺体には、歯の詰め物に由来する水銀などの有害な元素も多く含まれている。
今回の異色の研究に参加したチェコ生命科学大学(Czech University of Life Sciences)のラディスラフ・スメイダ(Ladislav Smejda)氏は「腐敗した遺体の化学的痕跡は、土壌中で非常に明確に識別できる場合が多い」と話す。また、これらの痕跡は、数百年から数千年の非常に長期にわたって残存するという。
その影響は、埋葬される遺体が増えるにつれてますます顕著になり、「現在の観点ではそれほど問題にならないかもしれないが、世界的に人口が増加すれば、将来には差し迫った問題となる可能性がある」とスメイダ氏は指摘した。
スメイダ氏と研究チームは、墓地や遺灰「散骨園」などの土壌化学組成を分析するために、蛍光X線分析を行った。
■死してなお
また研究チームは、動物の死骸を用いて「風葬」と呼ばれる古代の葬制の理論的影響を評価した。風葬は、遺体を埋葬せずに外にさらして自然に処理させる方法だ。
分析の結果、土葬、火葬、風葬の三つのケースすべてで、土壌には周辺よりも「有意に」高い濃度の化学物質が含まれていたと、スメイダ氏は指摘した。
もし墓地がなかったら、人間の遺体は、動物の死骸と同じように無作為に分布して、死体から放出される栄養物が「何度も繰り返し、至る所で」再利用されると考えられると、スメイダ氏はAFPの取材に語った。
だが、遺体を特定の場所に集めることは「自然ではないこととみなすことができる。それは人的な影響であり、自然の濃度を変えることになる」と、スメイダ氏は説明する。
そこで問題となるのは「必須元素をより広範な地理的範囲にわたって分散させる方法に関するより良いアイデアを生み出すことは可能なのか」だと、スメイダ氏は続けた。
「より環境に優しく、より環境保護に寄与する可能性のある新たな埋葬方法や、新たな遺体処理方法などが発明、開発、実現される可能性は確かにある」と話しながらも、葬儀の習慣は文化や宗教に深く根ざしているものであるため、多くの人々にとってこの種の話題が「タブー」となっているのは事実だと、スメイダ氏は認めた。
「これは非常に複雑な問題で、われわれはまだ議論のスタートラインに立ったばかりだと思う」と、スメイダ氏は話した。【翻訳編集】 AFPBB News