指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『黄金の旅チュンドワ・アフリカ東部海岸文なし漂流記』

2020年02月06日 | 映画
監督の西江孝之氏は、1960年代末、早稲田にあった「演劇長屋」では、有名な人だった。
おそらく、演劇をやっている変な連中に興味があったのだろうか、よく演劇長屋に来て話を交わしていたそうだ。
非常に面白い人だったという話が残っていて、まじめな記録映画監督だと思っていた私には意外な気がしたものだ。

東アフリカのタンザニアのモンバサの郊外の村に行く。
ここで歌が出てくるが、楽器がハルモニウム(卓上オルガン)で、言うまでもなくインドの楽器だが、歌のメロディはアラブ的で、アフリカ東海岸は、インドとアラブの文化の影響が大きいことが分かる。
漂流記なので、特に学術的な報告はなく、村の食糧、生活等が描かれる。
村に唯一あるトランジスターラジオから聞こえるのは、リンガラ、アフリカン・ルンバであり、この1970年代にすでに本来は西海岸の音楽が東でも流行していたことが分かる。
途中に村の祭りのようなことがあり、少年は打楽器のリフレインで恍惚に至る。祭りの意味の一つが、こうした憑依する体験だったことが分かる。
最後、少年が村を去っていくとき、監督は言う。
「これが本当のヒッピーだ」と。
この時期、まだヒッピームーブメントを信じている人は日本にもいたことが分かる。
ヒッピーは、欧米の文化の否定だったので、アフリカ、インド、アジアへの憧れがあったのだ。
国立映画アーカイブ

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