毎週土曜日、我が地方に無料で配達される、くらしの情報専用ローカル紙〝太陽リビング〟は、求人広告や、宅地分譲、マンション入居者募集、車の決算大謝恩セールなど、スポンサーの記事で埋まるのだが、勿論その第一面は地方出身者の、スポーツ、芸能、自費出版等広告収入度外の記事の読み物も載っているので、愛読者も多く、その記事の影響もかなりのものときく。
あるとき「名酒ものがたり」というタイトルのコラム記事があって、県内の酒蔵紹介と、そこで造られる銘酒をPRするページに出会わせた。
不動産や、車の広告なども、決して関心がないわけではないのだが、年金収入だけの己の所得額に比して、桁違えの金額が表示されてあるから、検討の余地すらない。
然るに、お酒の知識が得られる上、銘酒1・8㍑が抽選で戴けるとなると、これほど結構な読み物はない。
その日の記事を要約すると、県内H酒造会社が丹精込めて醸造した吟醸酒「谷乃誉(匿銘)」を、はがきで申込さえすれば、其の内から抽選の上10名さまにこの吟醸酒を差し上げる。序でに、県内のお酒で、心に残るものが有ったらそれを書き添えて欲しいという内容だった。
早速、官製はがきを買い求め、投函したことはいうまでもない。
流石に「『谷乃誉』プレゼントを希望するので申し込む」と明記するには、零細とはいえども、経営者の端くれであってみてば、そのプライドが許さず、その文面は凡そ次のようなものであった。
氏名 Tani Taroh
職業 運送店経営
年齢 ××歳
T市〝K寿司本店〟で、初めて銘酒「谷乃誉」というお酒に出会った。店主O氏も、小生の側に来られ暫時、時事問題を交え酒談義をした。
店主は、かの『越乃寒梅』を引き合いに出して、盛んにこれをこき下ろし、この「谷乃誉」とは比すべくものではないと断じた。
成る程、佐々木久子氏の言葉を引用すれば、本当にうまいお酒というものは、
『さわりなく水の如く飲めて、しかも深い味わいを残す』ものでなくてはならぬ。
まさに
『礼を正し労をいとわず、憂をさけ、鬱をひらき、気をめぐらし、病をさけ、毒を解し、人と親しみ、縁をむすび、人寿を延ぶ』に相応しいのがこの「谷乃誉」である。
わが県内にも銘酒と称せられるものは数多くあると訊くが、まだ味わったことがない。強いて他に心に残るお酒を挙げるとすれば、何かの本で読んだ請売りになるが県西のN酒造「御祝儀」を推したい。
われながらうまく出来た文だと思った。
「酒」編集長の言葉を引き合えに出したくだりなどは、この道の素人筋には到底真似できまいと自画自賛した。
そのまま投函するには惜しい気がしたから、近所にお住まいの元ジャーナリストのT翁にお見せしてからポストに入れることにした。
2人で、宅急便で送られてくるこのマボロシの「谷乃誉」を確信して、祝杯の日取りまで約束してしまった。
しかし申し込む人があまりにも多勢あった為か、数ヶ月経った今も遂に返信はなかった。
ローカル紙とはいえ厳正な抽選なんだなあと、2人で大笑いをしてしまった。
丹精こめて醸造した吟醸酒は、私も好きです。
山まゆもえめるばかりの長閑さにむかふもあかぬ春のさかづき
たのしさよこころのどけき春の日にあかでぞめぐる千代の盃
春風の吹もしづけき此屋戸にあかでぞくまんちよのさかづき
加茂鶴・爛漫・高清水・剣菱(樽詰め)・月桂冠
いらっしゃいませ。
袋田のご住職さま
瓜連のM氏から木内酒造「八重桜」が届きました。山田錦52%の吟醸酒です。
蛇頭さま
佐々木久子さん推奨:広島の加茂鶴酒造の
豪華・加茂鶴
山田錦酒母米・麹米・掛米35%
酒蔵が語るこの酒の特徴=自然の吟醸の香味をもった、何のさわりもなく淡々とした水の如き酒
市価1.8㍑200,000万円←弐拾萬円と読みます。小生は飲んだことはありません。
ご病気快癒を祈る。
ご無沙汰いたしました。名句を2回も送っていただいたにもかかわらず、御礼が遅れてしまい大変失礼しました。今回お酒のプレゼントがテーマでしたので、小生にも同様のことがありましたので、お知らせします。昨年愛読していた雑誌の広告で、(銘柄名)知命という純米大吟醸酒を創業50周年記念で特別に販売中ということでしたので、新潟の某酒造メーカーより購入しました。味はさっぱりしたやや甘口の酒でした。プレゼントというのは購入した品物と一緒に50周年記念のポイント券のシールが送られてきたので応募したところ、見事に5,000人のうちの一人に入り1合入りの醸造缶3本詰めが当たりました。まさか当たるとも思っていませんでしたので、当選品を受け取ったときには、多少感激しました。その酒もおいしく頂きました。お酒はおいしいですが、健康のため程々にしなければと思っている今日この頃ですが、なかなか休肝日を設けられません。
そば店1500円食事券と、
T市開業医で詩人、女医さんの詩集「碧い柩」が抽選に当たりました。
…熱帯の小魚たちが舞い、静寂と微かな流れの音と潮の響きが、永劫に繰り返す。血が流れる速さですべてが崩壊していった日々はもう帰ってくることはない。骨が砂になって碧の中に散り、柩は無を包む。
眠りは無であってはじめて休らう。
苦懐な覚醒を伴う饒舌で孤独な、多夢で浅い眠りはいらない。
それは碧の中に柩を沈めた時、消える。
これは106行の散文詩を交えた詩「碧い柩」の終章です。改行位置が元詩とは違っています。