狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

湖畔吟を読む

2009-04-24 10:19:17 | 本・読書
          

中学一年生のとき、国語の教科書で杉村楚人冠を知った。
教材本文は、著書「続湖畔吟」からの採択である。湖畔とは千葉県我孫子市の手賀沼々畔を指すが、楚人冠がこんな身近な処に住んでいたのを知った時は、かなりの衝撃を覚えた。地図を頼りに楚人冠公園周辺を幾度か散策した。近くには杉村家の私邸も現存し、ご家族の住居となされているように承っている。
 この地には、血脇盛之助、嘉納農園跡、武者小路実篤旧居、中勘助、滝井孝作、志賀直哉、バーナードリーチなどの旧居や、旧居跡、沢山の記念碑等を見ることが出来る。
「湖畔吟」は、続、続々篇と三篇からなり、一括して楚人冠全集第五巻に収録されている。大正12年から昭和10年に亘って書き綴ったエッセー集で、当時の我孫子地方の地理の様子や、世情が心ゆくまで伝わってきて、どこを読んでみても飽きない。
 総ルビの平易な文体は、現在でも充分に通用し、高齢者にとっては、まことに最適な読み物というべきだが、残念ながらわが町の図書館の蔵書から楚人冠の著書を捜すのは全く困難になってしまった。