狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

どうもスミマセン。

2008-07-16 11:18:14 | 怒ブログ
         

少年の小学校は、全校生徒400人前後の小さな学校である。
大概の学校には「奉安殿」という石造りの聖廟(堂)が、校門をくぐるとすぐその左か右にあるのが普通なのに、それがなかった。少年はそんな寒村の小学校に通った。
児童は登校の際、正門を入る際正面に向かって最敬礼をした。
 正門の正面には校舎の玄関があり、玄関から上がると左が先生方の職員室、右側に「奉安室」があった。その「奉安室」に対して最敬礼をしたのである。

 ある日少年は、いつもの通りピョコンとお辞儀をして校門を入ろうとした、突然正面の職員から少年の担任訓導が少年に向かって、
「やり直ぉ~し!」と校庭いっぱい聞こえる大きな声で怒鳴った。職員室の窓から訓導が登校する児童を眺めていたのである。

 少年は、それに応えて、やや節度をつけて、上半身を45度に折り曲げ敬礼した。
「やり直ぉ~し!」訓導の声は更に大きかった。
 少年は反抗的に、今度は更に極端なほど節度をつけて反抗の態度をしめした。やり直すこと3回、 遂に4度目は頭を両膝にくっつけるように、大げさなお辞儀をした。
「よろし~い!」少年は悔しくて涙が出そうになった。それでも、わずかな反抗を示すことが出来たことを誇りに思った。

 掲載の写真は大分県の写真ではない。イバラッケンで起きた中学校教員による児童強姦事件に対して、県教委、市教委、学校関係者の謝罪する会見を、地方新聞が掲載掲載した写真である。  
 この人たちは少年の敬礼を、
「なっておらん!」と怒鳴った、あの訓導より上の立場におられる方たち。
少年がこの記者会見にいたら、
「やり直~し」と怒鳴ってしまったかもしれない。

敬礼(名)ウヤマヒ、礼スルコト。オジギヲスルコト。
最敬礼ト云フハ、立礼ニ云ヒテ、敬礼ノ最上ナルモノ、直立ノ上身ヲ前ヘ折リテ、両手ヲ両膝ニ当ツルヲ云フ。(大言海)

 賞味期限改竄などが、内部告発で発覚し、お詫び会見が続出した昨年の暮、経済産業省が、「謝罪会見」のマニュアルとも言うべき「消費者生活用製品のリコールハンドブック」を、30万部も作ったのだそうだ。不祥事が続く文部科学省管轄役所でも、今後その必要性に迫られてきそうだ。それが出来たとしたら、写真に見られるような、テーブルに両手を置いたままのお辞儀は、禁止事項になるかもしれない。