狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

銀色の風

2008-03-26 21:37:41 | 日録

山は暮れ野は銀色の風の音なり     しづ江
最近しづ江さんの作品は、短歌の表現が混同する乱調句が多いので、批判の対象になることもあるが、それはそれでよいのではないか。
ここでは「銀の風」が、この句の求心的役割を果たしていると思う。
 そういう俳句の提唱者である荻原井泉水の「自然・自己・自由」という著書に、次のような文が、
第1部「新短詩提唱」の中にある。

黒き手が黒き手が木の実つかみたり    山頭火

この句は、層雲同人の中でも、どういうことを言おうとしたものか、皆目分からなぬと云う声があった。
 なるほど、この句はきわめて象徴的な表現をしているから、この「黒い手」がどんな人の手であるか、それを味わう上のキメテは難しい。だが――

    くだもの      山村暮鳥
 まっ赤なくだもの
 この上のくだもの
 それを見ただけで
 人間は寂しいし盗賊となるのだ
 その手がおそろしい

 この詩とかの句とは、同じ気持ちのものではあるまいが、この詩を味わったら決して分からないものではあるまい。
 また私が旅で作った句(大正三年頃か)
〈枯れ草に鳴く虫の空は青く冷え  井泉水〉
           ――俳句例会報より

俳句仲間、超高齢者しづ江さん(なんとM.生まれ)は、毎月行われる例会に殆ど無欠席である。われわれの句会は指導者がいない。例会報で、お互いに「一句鑑賞」欄で感想を述べ合う。これは小生のページを埋めるために書いた雑文である。
序でにしづ江さんの最近の出句を紹介する。
 梅林を出る紅梅の香をつけて
 蕗味噌を練る腕しかと母米寿
 春風や笑いば残る幼顔