〔エッセー通信④〕
こんなA4版の印刷物が新聞切り抜きスクラップブックの中から出てきた。県内に住まいのM氏が、作者から送られてきた、この「エッセー通信」更にをコピーしてボクに送ってくださったものである。実名を記しても差し障りないかもしてないが、ここではKさんとしておこう。そしてエッセーには触れずに、Kさんが引用した『夜汽車』という詩をお借りする。
夜汽車 大木実
いつの旅であったろう
となりあわせた女のひとが
窓に向かって泣いていたのは
その背なで安らかそうに幼児が眠っていたのは
また いつの旅であったろう
むかいあわせた老人が
手紙をしめして行く先をたずね
哀しい身のうえを語ったのは
灯火(ともしび)も暗く すちいむも通わぬ
田舎の小さな町から町へ行く終列車
ああ あのひと達
一時間ほどいっしょに過ごしただけなのに
おそらく生涯 二度と会わないであろう
何でもないあのひと達なのに――
(昭和23年刊「路地の井戸」より)