狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

日本酒物語回答文の試み

2005-12-18 21:25:20 | 日録
       
 酒の通人らしきオスカーPターサン氏が、

コップ酒・升酒・ひや酒・かん酒・やけ酒・樽酒・生酒・冷酒
茶碗酒・あつかん・ぬるかん・ひや・徳利おちょこ・般若湯 
ぐい飲み・祝い酒・月見酒   ---(順不同)---
  *それぞれ意味あり、ちゃんと答えられるかな?
  *飲み屋のマスタ-、半分しか分かんなかった?
  *ヒント「月見酒」=中秋の名月を見ながらじゃねぇよ。

と問題を提起してきた。コメントでは長くなるので、小生の研究結果を「便乱亭ノート」に書いて答えてみる。

しかし《*ヒント「月見酒」=中秋の名月を見ながらじゃねぇよ。》とあるのが一寸ばかり引っかかる。若しこれが《すべて『隠語』で答えよ》だとすれば小生には全く答えることは不可能である。(月見酒)

今日は日曜日ではあるし、外は強風が吹き荒れているし、遊びに行く処もなし、ゼニもない。従って、晩酌の日本酒の肴にと思って、出来るだけ学問的考察を試みてみた。赦されよ。

 先ず例によって「広辞苑」(参照)に頼る。しかし「月見」は派出語として、月見草・月見蕎麦・月見団子・月見の宴を挙げているが、「月見酒」の項はなかった。

「月見」の項に《卵を落とし入れた料理、卵黄を月に見立てた料理》。とある。しかし黄身を落としただけでは、いくら風邪の季節だと言っても、玉子酒には程遠いだろう。「パス」するしかない。

☆コップ酒 ①コップに一杯ずつ売る店②小さな杯を用いずぐっと飲む酒。ここでいう「酒」は無論日本酒である。(以下全問「隠語」で答えよというのなら、全問「パス」するしかない。)(隠語

☆升酒 辞書には「枡酒」とも書く。①枡に盛った酒。また、枡売りの酒。

☆ひや酒 燗をしない酒。冷たいままの酒。れいしゅ。俳句の夏の季語である。
「冷酒」との違いは、予め燗をしないで飲むように造られた日本酒で、「冷用酒」と記載されていて、飲み屋で注文すると、多少高価になるものが多い。

☆かん酒 燗をした酒。「燗」とは、酒を器に入れて適当な温度に暖めること。その暖め加減。燗をつけるなどという。薬缶や、土瓶や、電気で沸かすのは、かん酒とは言わない。

☆やけ酒 自棄になって呑む酒。パチンコなどで大金を摩ってしまったり、彼女に振られた時など、自棄を起こして呑むアルコール飲料のことで、日本酒とは限らない。焼酎が多いだろう。

☆樽酒 樽に入れた酒。樽詰めの酒。杉の香りを入れた、まがい物の瓶詰めの酒も「樽詰め」として市販されている。

☆生酒 清酒の大半は、〝原酒の状態で酒蔵タンクに貯蔵される直前〟と〝市販酒としてびん詰めする直前〟の2回にわたって火入れされている。これは、いずれも清酒を60度前後に加熱して、清酒中の酵素を不活性化し、同時に殺菌する目的で行われる。

 生酒というのは、火入れを一切行わないもので、搾りたての新酒のままの生である。これが本物の生である。生原酒というものは、水も一切加えていず、火入れをしていな清酒ということである。
(穂積忠彦監修「日本酒辭典」健友館より)(日本酒事典)

☆冷酒は、ひや酒の項で述べた。茶碗酒は茶碗に酒を注いで呑むことだが、何かの「演歌」に出てきた言葉のような気がする。
あつかん・ぬるかん・ひやは、燗酒の項でご理解いただきたい。

☆徳利おちょこ 《徳利&お猪口》という意味ではなかろうか。「とっくり」の場合、水泳の出来ない者を嘲っていう意味もある。(水中に入れれば沈むからいう)お猪口というのは、「猪口」の丁寧語だが、(多く「ちょこになる」の形で)差していた傘が風に煽られて、柄と反対の方向に開いた形になることも言う。

☆般若湯 これこそ(僧の隠語)で、仏教徒でもある小生の、日常欠くべからざる飲料水である。禅寺の山門には「葷酒不許入山門」とあるから、般若湯ならば堂々と、山門に入るを許されるのである。(参照

☆ぐい飲み ①仰向いてぐいと一息に飲むこと。②大きい深い杯(器)で小生も一回だけ、淑女(いうまでもなく今の山の神様)から、ガラス製の「ぐい飲み」1個をプレゼントされたことがある。以後は「あまり、呑むな!」と、怒鳴られることが多い。

☆祝い酒 ①戦争が終わって、侵略者が撤退した時呑む酒。この酒は一番美味いだろう。
イラクからアメリカの侵略軍が撤退し、日本の自衛隊も海外派遣を止め、不戦の憲法が守られ、世界に真の平和がおとずれたとき飲むのが、正真正銘の「祝い酒」であり、一刻も早く飲みたいものだ。

因みに、荷風散人は太平洋戦争が終結した時の「祝い酒」を、「断腸亭日乗」の1945年8月15日に次のように記している。

《(略)S君夫婦、今日正午ラジオの放送、日米戦争突然中止せし由を公表したと言ふ。あたかも好し、日暮染物屋の婆、鶏肉葡萄酒を持来る、休戦の祝宴を張り皆々酔うて寝に就きぬ」…》。この時代は日本酒は入手できなかったし、日本酒といっても「合成酒」と言うアルコール飲料水だった。

②多分オレが死んだ時に、仲間たちが集まって、飲む「酒」または、「般若湯」のことであろう。どんどん自腹を切って大いにやって呉れ給え!

☆月見酒は先に述べた。
            以上回答に3時間以上を要した。