狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

三種の神器

2005-11-15 09:34:14 | 日録

 小生が携帯電話を持った年月は、調べてみないとよく分からないけれど、比較的他人より早かった方ではなかったかと思う。概算10年以上は経つ。

出先の車との連絡に、無線などを使って交信した時代以前から持っていた。トラック運送という健気な生業であった為、電話なしでの生活は考えられなかった。絶えず顧客や、従業員である運転手たちと向い合っていなければならない商売だった。何処へ出るにも、トイレや風呂場にまで持ち込んだで用を足した。今考えると因果な商売だったとしか言いようがない。
 
 商売をやめて携帯電話は全く不必要になってしまった。今日、携帯電話の機能は、想像以上にアップしているので、脳味噌劣化防止の意味からも、弄ってみたい気は大いにはある。今のヤツでも、一応メールの機能ぐらいは付いてはいるが、ボタンも文字も小さすぎる。それには新型に買え替えねばならぬ。その金額も致命的だし、何よりも使用の対象が定かでなくなってしまった。

 商売の業種こそ違うが、同じような境遇の友人が一人いる。彼も携帯電話を持っていて、ここ暫らく全く使っていない。それでも基本料基金だけは確実に預金口座から天引きされるとぼやいていた。

 小生が解約しようかどうか迷っていた矢先、その友人が、一足先電話料金が勿体ないから、とうとう携帯電話を止めてしまったと言って遣した。

 「小学生ですら持っているいまどき、携帯電話を止めるなんて、珍しい」と店員に言われたそうだ。こちらの年齢を慮ってか店の係員が「”三種の神器〟みたいなもの」とも、古風な表現を使って言っていたと笑っていた。 
 
 皇位継承問題が取り沙汰されている折でもあるが、小生はまだ「皇室典範」を1度も読んだことがない。聞く所によると、現在の皇室典範では皇位継承に際して、この異体の判らない3種の神器の継承が明記されているという。

「三種の神器」とは何を指すのかは、遥か半世紀以前に小学校で暗記させられたのを今でも覚えている。
 念の為広辞苑を引いても「八咫鏡・天叢雲剣・八尺瓊勾玉」で間違えはなかった。そのことだけしか書いてなかった。

 何か派出語がありそうな気がしたので別の辞書を開く。
 《そろえれば理想的であるとされる三種の品物。昭和29年(1954)頃から言われ、当時は電気洗濯機・真空掃除機・電気冷蔵庫を指した。》大辞泉(小学館)とあった。

 妻の解説によると、三種の神器は、最初が「白黒テレビ」「電気冷蔵庫」「電気洗濯機」で、やがて
 「カラーテレビ」「クーラー」「カー」になり「3C」と言われた記憶があるとの事だった。
 このように三種の神器的価値はその時代によって変遷した。

 戦争放棄を決めた憲法第9条を変えようという動きで、その理由のひとつに、すでに、この条文は死文となっているという意見がある。

三種の神器と言う言葉自体も、すでに死語になってしまったようにも思えるのだが、これぐらいの意見は皇室自体にあっても当然ではないだろうか。 

さて俗にいわれた三種の神器のうち「携帯電話」は理解できたとしよう。後の2つは何を指すか?

 妻に諮ったら、わが家の三種の神器は「お酒」、「パソコン」、「広辞苑」だそうで「携帯電話」は入らなかった。