中田人材経営サロン

元ソニー人事部長であり、青山学院大学客員教授の中田研一郎より、企業の視点と個人の視点で「キャリア」「生き方」を語ります。

人間力と資産

2007-04-05 10:52:25 | パブリシティー
人の一生は人格の形成と資産の形成をしていくプロセスであるとも言える。
簡単な代数式でこの人間力と資産の関係について考えてみたい。

まずxy=1を使って考えてみよう。

この式において、xを人間力、yを物的な資産や無形の名誉など
自分の身を飾るものとする。この数式は反比例の関係を表すので、
yが大きくなればなるほど、xはそれに反比例して小さくなる。

シャネルしか着ないという女優がいるがその人の心のxはどうなのだろうか。
ベンツのSクラスや高級スポーツカーに乗っている人は車の性能だけ考えて
乗っているわけではないだろう。

その人の見栄を張る気持ちはどうなのだろう。

かく言う私もベンツに乗っていたのでその気持ちは良く分かる。
ライブドアの堀江氏は100億円の資産家であるが、
この世の中に金で買えないものはないと言い切ったその心のxはどうなのだろうか。

堀江氏は地裁の判決後のインタビューで「反省をしていますか」という問いに対し、
「人を信じすぎた点を反省している」と答えているのを見て驚いた。
質問の趣旨は明らかに「粉飾決算により、ライブドア株を購入した
数多くの株主が損をして迷惑をかけたことを反省しているか?」
という趣旨であったが、堀江氏の関心は自分のことだったのである。
起訴=有罪ではないし、(且つ二審でその理論的可能性は残っている)
無罪を信じている以上、人に迷惑をかけたという意識もないのであろうが、
経営者の結果責任という言葉の重さを一人の人間として
どう考えているのであろうか。

高級品で身を飾り、社会的に高い地位や財産を得ても、
心がそれに比例して豊かになる保証はない。
かつて経団連の会長まで務めた財界のトップが、
相続税対策として多額の無記名債権を購入し、
結果として相続人が脱税で起訴されたことも思い出される。
財に対する執着が強ければ強いほど、心の豊かさが失われるということは、
どうも人生の真実のようである。

逆の例もある。世界一の資産家であるマイクロソフトのビル・ゲイツ氏は
使いきれない膨大な資産から、3兆5000億円を寄付して
ビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立し、発展途上国の子供の貧困と病気をなくす仕事を始めた。
投資会社バークシャ・ハサウェイで成功した世界第二位の資産家ウォーレン・バフェット氏も
ビル・ゲイツ氏に賛同し、資産の85%(4兆3000億円)を
ビル&メリンダ・ゲイツ財団に寄付をし、彼自身は1958年に31500ドルで
購入したオマハの家に住み、バークシャ・ハサウェイ社からの10万ドルの給与で
生活をしている。
私の身近な例では、ソニーの大賀会長は受け取った退職金16億円を
全額音楽ホールの建設資金として寄付をして、今や軽井沢の大賀ホールとして完成し、
市民が世界中の音楽家の公演を楽しむ場となっている。
結局地位や財産を得ても、xy=1の反比例の関係になってしまうのか、
yが大きくなってもxをそれ以上に大きくすることによって
y=axの正比例の関係に転換することができるのか、
それはその人の心の鍛え方によって決まると言えるのだろう。

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