褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(1985) ジョン・ローン対ミッキー・ローク

2014年08月23日 | 映画(あ行)
 もう崩壊寸前だ、なんて言われて久しい中国だが中国共産党の弾圧、我がまま、恫喝など相変わらず目立っている。今や世界中に影響力を行使し、アメリカですら中国経済におんぶにだっこの状態だ。まだ乗り物と言えば、車よりも自転車だった時代に制作された映画が今回紹介するイヤー・オブ・ザ・ドラゴン。今、改めて観ると現在の中国台頭の兆しを感じさせ、義理も人情もまるで持たずに自らの利益ばかりを追求するチャイニーズ・マフィアの若きドンの姿に、現在の中国と重ね合わせて観ることができる興味深い作品だ。

 現在において世界中に存在するチャイナタウンだが、アメリカで最大のチャイナタウンと言えばサンフランシスコだと言われているが、アメリカを縄張りにするチャイニーズマフィアが一大勢力を形成しているのが実はニューヨークのチャイナタウン。かつてのニューヨークを舞台にしたマフィア映画といえばリトル・イタリーを舞台にしたイタリア系マフィアが主だったが、もはやリトル・イタリーなんかは縮小されるばかり。その代わりにリトル・イタリーを食い潰すようにチャイナタウンが拡がっている。そんな背景も本作のイヤー・オブ・ザ・ドラゴンを観れば少々わかってくるし、中国系コミュニティーの混沌とした状況も少しだけわかった気分になれる。

 しかし、この映画の面白いところは小難しいチャイナタウンの説明などではなく、バイオレンスシーンの数々。ジョン・ローン演じるチャイニーズ・マフィアの若きドンとミッキー・ローク演じる周囲の仲間からも迷惑がられている一匹狼的存在のニューヨーク市警の白人刑事の2人による怨念バトルの様相。血で血を洗うかの如くの対決が最大の見せ場。
 そして、ド派手な銃撃戦は楽しいし、中国人(系)同士の殺し合いは、あまりにも非道すぎて笑えた。白昼堂々の人殺し、必殺首切り、ただ暴れたいだけ?にしか見えない銃の乱れ撃ち・・・等、日本人から見ても同じアジアの人種である中国(系)人の行動は理解が難しい。しかし、この描き方は面白いことは面白いが、中国(系)の人間から見れば、抗議の1つや2つ言いたくなる気持ちも充分にわかる。

 そして表面状は単なるバイオレンスアクション映画の類だが、チョッとばかり本作を奥深い作品にしているのが、ミッキー・ローク演じる白人刑事のキャラクター。この刑事の設定がベトナム戦争帰りで、そのトラウマが黄色人種に対する偏見を持つ切っ掛けとなっている。向こう見ずな性格は周囲の人間からは非常にはた迷惑な存在で、利用できる物(者)は何でも利用してしまう。しかしながら、人種偏見はチャイニーズマフィアを撲滅するためのパワーの源になり、ニューヨーク市警の上司や同僚などが今ひとつ捜査に乗り気で無くても、たった1人で大勢の中国人の中に飛び込んでいくなど、実はけっこうマトモな刑事。賄賂などは全くこの男には通用しないように少々性格には問題があるが、正義感溢れる刑事だ。さらに心憎い設定が、この白人刑事をポーランド系アメリカ人にしていること。ある意味、ポーランド系アメリカ人もアメリカ社会で迫害されてきた歴史を持っていることを考えると、なかなか興味深いし、クリント・イーストウッド監督の傑作グラン・トリノと通じる部分もある。

 チャイニーズ・マフィアの若きドン対人種偏見丸出しの刑事、そんな言い方よりもジョン・ローン対ミッキー・ロークと言った方が手っ取り早い、2人の男の対決を描いたストーリーとは如何なるものか。
 ニューヨークのチャイナタウンにおいて。白昼堂々とチャイナタウンを仕切るチャイニーズ・マフィアの親分が刺されて殺害される。更にその後、イタリア系の麻薬の売人が殺される。いずれの殺人事件も旧組織型の体制に反旗を翻して自らが組織のトップに立ち、更なる利潤を追求しようとする若き幹部のジョーイ(ジョン・ローン)の策略だ。
 チャイナタウンでの抗争を抑えようとニューヨーク市警から送り込まれたのが敏腕刑事としてなるスタンリー(ミッキー・ローク)。しかし、彼の強引とも受け取れるやり方は市警内部でも問題になり、彼は孤立を深めることになるのだが、その事はやがてジョーイ(ジョン・ローン)とスタンリー(ミッキー・ローク)の死闘へと導かれる・・・

 ミッキー・ロークとジョン・ローンの主演の2人が本作を切っ掛けにブレイクしたように、2人の魅力が爆発した作品だ。ミッキー・ロークがドハデにジョン・ローンを殴るシーンは殺気すら感じさせるし、ジョン・ローンも『ヌハハハ~』と笑うシーンや感情を押し殺そうとする表情は非常にクールに感じる。

 しかし、改めて観直すとアレ~、こんなにツッコミどころ満載の映画だったけ!?ミッキー・ロークの友達であり上司にあたる友人が、いきなり『おい、どうした』と叫びながら、真っ昼間からライフルを持ちながら走って登場するシーンは度肝を抜かれた。
 ジョン・ローンがタイでの麻薬の取引きのシーンにおいて、最後の最後にある切り札を出すシーンがあるのだが、チョ~ビックリ。『お前、何時の間にそんな物を持っていたんだ』?となることは必至だし、一体どんな手品や奇術を使ってんだ?となること請け合いだ。
 他にも重傷を追いながらも名誉勲章モノの活躍を見せていた子分がとうてい割に合わない仕打ちを受けたり、ミッキー・ロークと一緒にいる仲間の刑事が腹に弾丸を撃たれているのに病院のベッドで寝ているどころか、痛々しい姿で協力していたり等、挙げていけばキリが無い。今まで何回か観ているはずなのに、何の疑問も持たずに観ていたことが、とっても不思議。
 しかしながら、そんなツッコミどころ満載のシーンが多いからと言って本作を駄作扱いするのは全くの見当ハズレ。バイオレンスシーンは楽しいし、2人の主演の男たちは今の姿からは想像できないぐらいに格好良いし、エロシーンもおまけ扱いで付いてくる。中国人が大好きな人には、あまりお勧めしにくいが、それ以外の人にはイヤー・オブ・ザ・ドラゴンはお勧めだ

イヤー・オブ・ザ・ドラゴン [DVD]
ミッキー・ローク,ジョン・ローン,アリアーヌ,カロライン・カハ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督は色々とワケがあって年齢とキャリアの割に寡作なマイケル・チミノ。この人のお勧めベトナム戦争の大いなる傷心を描いたロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、メリル・ストリープ共演のディア・ハンターが傑作です。

 人種偏見丸出しの刑事役にミッキー・ローク。かつての格好良い時はエンゼル・ハートナイン・ハーフがお勧め。
 一方、若きチャイニーズ・マフィアのジョーイを演じるのがジョン・ローン。ベルナルド・ベルトルッチ監督のラスト・エンペラーがお勧め。

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