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BAR 無人島 6 (エピソード2 第1話)

2011年06月19日 | BAR 無人島
デストリビューターの被水が原因と思われるのですが、大阪から姫路への帰り道の高速道路上で車がエンストしました。
その日は大雨で視界も極めて悪く、アクセルがスコスコになっていくら踏み込んでもエンジンが吹き上がらずトロトロのスピードになってしまっている愛車を、後ろから追突されないことを祈りながら、なんとか非常停止帯のくぼみのところまでたどり着かせました。
停車と同時にエンジンはストップ。
しばらく待ってみたのですが、結局エンジンはかからず、保険屋さんに電話をかけて助けを呼んでもらうことに。

救助の車が到着するまでに40分ぐらいかかると言われ待つしかなかったのですが、僕らの停車している場所が、左にカーブしている3車線の道路の内側で、天候のせいもあって後方の視界がものすごく悪い。
運転席から右のサイドミラーで後を見ていると、突如現れるトラックがものすごい勢いで僕らの車のすぐ脇をすり抜けていくのです。
その日は交通情報で湾岸線で2件の事故渋滞を確認していたり、この場所に来るまでに3重衝突を目撃したりしていた僕の脳裏に不安がよぎり出すのに、さして時間はかかりませんでした。

「こんな天気やし、こんな場所やから、スリップした車がオレらの車にぶつかってくるような事がないとも限れへん。そっちは壁やから、もしぶつかってくるとしたらこっちからやから、その時は、オレはええからお前らは絶対助からなアカン。だから、気ィ抜かんと、気合入れといてくれ!」

家族3人で乗っていましたので、僕は助手席の奥さんにそう言いました。
娘は奥さんの腕の中で、スヤスヤと眠っています。
いつになく真剣な表情で話す僕の話を、目を見開いて大きく頷きながら聞く奥さんののっぺりとしてツルッとした顔には、
「そんなうまいことこの時間にどこぞの車がこの場所でスリップして、それがたまたまこんな小さい自分らの車に衝突するなんて宝くじに当たるようなことが起きるわけないやろ。」
ってデカデカと書いてありました。

僕にとっては長すぎる30分が過ぎ、後方の視界を覆い尽くして大きなトラックが僕らの車の後ろに止まりました。
車のドアを開け、トラックから降りてきたお兄さんと挨拶を交わした時、僕は年甲斐もなく、激しく安堵しました。

家族三人でトラックに乗せてもらい見た景色は、最悪の天候にも関わらず、清々しく見えました。




それでは、久しぶりの「BAR 無人島」です。






BAR 無人島 6



結局どんなに好意的に考えてみても自分を取り巻く世界に正しいことなど何一つないということに気づいて、男は部屋の明かりを消す瞬間、大声を張り上げた。

庭の木に止まっていた小鳥たちが一斉に飛び立った以外、あたりに別段変わった様子は見受けられないと感じた次の瞬間、男はバーにいた。

薄汚れた小さなバーで、男はカウンターの中程におり、カウンターの中にはバーテンが一人いた。

椅子に座る男のすぐ後ろには壁があり、男と壁の間をすり抜けるには体を横にする必要があるであろうほどに狭い。

けれども、奥行きは以外に広く、店の一番奥にはゴシック調の重厚なソファが置いてあり、店の者なのか客なのか、得体の知れない男が一人腰を下ろしていた。
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BAR 無人島 5 エピソード1 最終話

2011年05月01日 | BAR 無人島
このゴールデンウィーク中に僕たちの娘は2歳になります。
大きな病気やケガもなく、元気にスクスクと育ってくれていること、あらためて、有難いことだなぁと思います。

1歳の誕生日には僕らからのプレゼントは何もなかったのですが・・
今回は、数日前にたまたま立ち寄った子供服のお店にかわいいTシャツがあったので、奥さんと相談して奮発しました。
3900円!
僕らが娘のために買ってあげたものの中での最高価格です。

そして、プレゼントはもう一つ。
僕らがお気に入りの近所のケーキ屋さんで、娘が大好きなアンパンマンの絵が描いてある誕生日のケーキを予約してあります。
これは、ジジババからの指令です。

二本並んだローソクを、力強く吹き消してくれることを期待しています。




では、超久しぶりの「BAR 無人島」です。
一応、第一話は終了になりますので、時間のある方は一話から読み返してみたりしていただけると嬉しいです。




「BAR 無人島 5 エピソード1 最終話」

店を出ると、ひんやりとした夜気が火照った頬を優しくなでた。
佳世はふり返えると、無人島と書かれたその店の塗装もすっかり剥げ落ち、ゴツゴツとした木の質感が剥き出しになった扉を眺めた。
そっと近づき、右の掌を浮き彫りになっている無人島という文字に押し当てると、この店で経験した様々なことが思い出された。
そして、それらがまるで学生時代の思い出のように思えることに、佳世は自分の今の年齢を考えて、少し笑った。

その時、自分はもうこの店に来ることはないだろうというイメージがひっそりとやって来て膨らみ、やがて雨の雫が柔らかい土に吸い込まれるように、自分の中のどこかに落ち着いた。

今すぐにこの街を離れるわけではないし、今の仕事を放り出したりはしない。
自らが提唱し、始めたプロジェクトであり、命を削ってとまでは言わないが、プライドをかけて全身全霊で取り組んできたという自負のある仕事である。
この仕事だけは、何があっても最後までやり遂げなければならない。
それに、この街を離れることや、故郷に帰るといったことを固く決意したわけでもない。
それでも、佳世には、自分がこの店にもう来ることはないということがわかった。それを事実として理解することができたのだ。

扉から右手を離し、コートのポケットに無造作に突っこむと、名残惜しさを断ち切って、そのドアに背を向ける。
前から男がやって来て、佳世の左手をすり抜けた。下を向き黙々と歩く男は佳世に気づかなかったが、佳世には見覚えがあった。
案の定、男はBAR無人島の扉の奥に吸い込まれて行った。何度か店で顔を見たぐらいで話したことはない男だった。

佳世は自分の今立っている位置、先ほどよりも少し店から離れた位置でもう一度、BAR無人島をゆっくりと眺めてみた。

胸にこみ上げてくるものを感じ、瞬きと深呼吸を続けているうちに、佳世は気づく。眼前の光景が、先程とはガラリと大きく変わってしまっているのだ。佳世は大きく目を見開いた。
そして、すべてが理解できた時、佳世は全身の毛が波打つのを感じた。

自分の意思でここへ来たのではなかった。自分は何かに導かれたのだ。

その瞬間、それがもう佳世の中では、厳然たる事実となった。
この店のある路地もこの店の佇まいも、佳世が自分から一人で訪れるような場所では決してない。
今となっては、自分の立っている回りの景色には、違和感しか感じえない。
どうして今まで気がつかなかったのだろうか、答えのない疑問があふれ出る中、ただ一つくっきりと感じられたことは、この事実の前では、自分は余りにも無力でちっぽけな存在だということだった。

しかし、佳世にとってそれは、わりとすぐにどうでもよくなった。
自分をここへ導くことができたのが、あのマスターかもしれないし、もっと大きな力が自分とマスターを引き合わせてくれたのかもしれない。
でも、それよりも今の佳代にとって重要なことは、自分がこれからも生きねばならないということが決定されたというシンプルな現実が、しっかりとした質感を持って今ここにあるということだった。
自分はこの状態へ導かれたのだ。自分には、これからも生き続けるということが課されたのだ。

それでも彼女は以前の佳世ではもうなかった。
今の佳世にはその事実を息苦しく感じるようなこともすでになく、自分の人生がそうなったのなら、それを当然のこととして素直に受け止めるということができるようになっていた。
そして、同じ生きるのなら精一杯悔いのないように生きてやろうという気持ちになっている自分に気づいて、佳世は気恥ずかしさのようなものさえ感じたりもしたが、それでも微笑んでしまえるほどの余裕が、佳世の中に生まれていた。

でも、おそらく多くの人はこうやって生きているし、生きてきたのだ。今やっと自分は皆と同じスタートラインに立つことができたのだ。
清々しい気分で見上げた都会の夜空は、いつものようにどんよりとしていたが、嫌な気は全くしなかった。その時佳世は、生きるということのダイナミックな躍動感を全身で感じていた。





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「BAR 無人島 4」

2011年03月21日 | BAR 無人島
最近、アコギを弾くのが楽しいです。
自分には向かないと思っていたフィンガーピッキングも、やっぱり練習すればそれなりに上達するものですね。
改めて、何にどれだけの時間と労力を費やしたかということだけが自分の全てなのだと実感します。
あることにおいて、自分には人より才能があるなんて思えることなんかも、実際のところは、知らず知らずのうちに、そのことに人より多くの時間と労力を使っていた結果ってだけのことかもしれません。


では、昨日も引っ張り過ぎとの指摘を受けた例の物語です。
今日は、いつもよりロングバージョンでお送りします。




   
「BAR 無人島 4」


私は、あの人が私を私にとって生きにくいこの世界から救い出してくれる人だと信じたかったのだ。信じるしかなかったのだ。
それまでの人生がこれからも続けば、いずれ私の心は体は、それに耐えきれない時がやってくるということを、私の無意識は気づいていた。

結局のところ、誰かに救い出してほしかっただけなのだ。今ならはっきりとわかる。それこそが間違いで、あの人にも罪はないのだということが。
自分で変えなければ、ごまかさず、自分の意思で自分の進むべき場所へ向かう努力をする。それができなければ、たとえ一時的に別の場所に避難することができたとしても、きっと私はまた、あの懐かしい絶望との再会を果たしていただろう。


私は最後の一口を飲み干し、空になったグラスを眺めた。
店はいつの間にか、喧噪のピークを過ぎ、床に寝そべる者も出ていて、この店の本当のクライマックスの時間を迎えようとしていた。
そろそろ帰る時間だった。

その時、不意に故郷の光景が、本当に何年ぶりかに頭の中に蘇って、それが怒濤のように私の頭の中に押し寄せてきて、その映像たちは驚くほどに鮮明で、驚くほどの量で、どうして自分がそんなにたくさんのそんなにも鮮明な故郷の映像を自分の中のどこにしまってあったのか全くわからなくって、本当にわけがわからなくなって、その時、泣きだしたい衝動が、唐突に私の胃の少し上の辺りで膨張するマグマのように力を持ってきて、それはわたしの喉元をすごい力で圧迫してきて、抵抗することなんてできそうにもなくて、もう泣き出してしまおうかと思ったのだけれど、今泣き出してしまえば、誰にどういう風に接してもらっても、私には泣き止むことができるとはとても思えなくて、私は私の持てる力のすべてを使ってギリギリのところで本当にギリギリのところで、私は私のその泣き出したい衝動を押しとどめることができた。


何もかもが嫌で、自分はこんな場所にいる人間ではないと子供のころからずっと思っていて、私の中では、故郷は捨て去ったものだった。
母親とは何年か前に一度電話で話したきりだし、里帰りしたのがいつだったかさえ思いだすこともできない。
でも、自分が帰ろうとさえすれば、いつでも故郷は受け入れてくれる。その単純すぎる事実が、その瞬間、私の体中に沁みわたっていた。

勘定を済ませ店を出る時には、私は生まれ変わったような気分になっていた。私は奥にいるマスターに挨拶しにいこうか迷ったが、考えた末、結局止めることにした。
私は今の私を見てもらって、マスターが私にかけてくれた言葉の御礼を言いたいと思ったのだが、敢えてそうするまでもなく、おそらくマスターには、全てお見通しなのだ。
その証拠に私が店を出る瞬間にマスターが私にだけわかるように小さく頷くのが見えた。




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「結露をふく」

2011年03月04日 | BAR 無人島
僕らのところでは、この二日ほど強烈な寒さがぶり返しています。
昨日のお昼前後には、かなりの雪も降りました。

これくらい冷え込むと、朝起きた時には、真冬のようにサッシや窓には結露がびっしり。
それを雑巾で拭き取るのは僕の仕事で、この冬は特に寒い日も多かったため、冬中それを繰り返しているうちに「結露をふく」という詩まで生まれてしまいました。
がしかし、この詩には猥褻な表現が多すぎて、ここに載せることはできません。
残念・・・

それでは、久しぶりの「BAR 無人島」です。



  
「BAR 無人島 3」



私が理解できるようになっていったこととは、私が本当は、私が思っている以上に危ないところにいたということだった。

要するに、私は絶望していたのだ。それも徹底的で致命的に絶望していたのだ。
だから、私の意識はそれをごまかして、気づいていないふりを自分に信じ込ませることで、なんとか私を生きさせてきたのだ。
それが、私が生きていくことのできるたった一つの方法だったのだ。

私は孤独だった。いくら泣き叫んでも泣き叫び足りないぐらいに孤独だった。
今、私には、そのことがはっきりとわかるようになった。

私の潜在意識が選ばざるをえなかった道、そしてそのために、時にやりたくもないこともし、関わり合いになりたくないものにも関わったりもしてきた私のこれまでの人生を、私は、まるで映画の主人公の半生をスクリーンで観るかのように、客観的に理解することができるようになっていた。




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BAR 無人島 2

2011年02月15日 | BAR 無人島



お土産でしばらく前にいただいた「さつまいもジャム」です。

見た目は超ムラサキで、インパクトが強いです。

原材料は、さつまいも・グラニュウー糖・梅のみ

梅?って感じでちょっと警戒してしまいましたが、梅の味は全然しなくて、ただたださつまいもの甘さが口の中に広がって

僕はさつまいもがとても好きなので、というか・・昔なにかの本で、さつまいもが日本の飢餓を少なくするのにすごく貢献したみたいな話を読んだことがあって、それ以来、さつまいもを尊敬してもいるので、とても美味しくいただけました。

確か、主に薩摩地方とかの火山灰がベースとなっているような肥沃でない土地、米作に向かないような土地でも、さつまいもは十分育つかなにかで、飢餓の減少にすごく貢献したとかそういう話だったと思います。

間違っていたらごめんなさい。



「BAR 無人島 2」


マスターには、ほとんど視力がないと言われているが、私にはとても信じられない。ときおり、マスターがすごく細やかな仕事を難なくテキパキとこなしているのを何度も目にしているから。

私は、顔見知りの客たちと他愛もない会話を交わしていたが、マスターに言われた言葉は、私の頭の中のどこかにべったりと張り付いていて、それについて考えることを止めることができなかった。
そして、
「マスターの力に触れた最初の夜。」
そう何度も心の中で呟いた。

今までに何人もの人が、マスターの力について語っているのを耳にしていたが、そのいずれもが私にはとても信じられない話ばかりだった。

何度もマスターの言葉を繰り返すことで、私はマスターが自分の持つ力をどうして私なんかのために使ってくれたのか、少しずつ理解できるようになっていった。




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