極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

蟹食べ殻残す。  

2019年01月09日 | 時事書評

  


                                  
仲  尼  ちゅうじ
ことば
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「回(顔回)はよく仁にして、反すること能わず。賜(千貫)はよく弁にして、訥なること能わず。
由(予路)はよく勇にして、怯なること能わず。師(子張)はよく荘にして、同なること能わず」
「力天下に敵なくして、六親しらず。いまだかつてその力を用いざるの故をもってなり」
「人その見ざるところを見んと欲せば、人の窺わざるところを視よ」
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奇  病 
竜叔(りょうしゅく)という男が文摯(ぶんし)という高名な医者の門をたたいた。
「先生の医術はたいへん霊妙とうかがっています。どうか、わたしの病気をなおして
ください」
「やってみましょう。で、いったいどうなさいました?」
それが、どうにも困った病気で・・・・・・わ
たしは村中の人からほめられても名誉とは思わず、国中の人びとからけなされても、それを恥とは
思わないのです。凪功したからといってうれしくもなければ、失敗したからといって悲しくもあり
ません。生が死と同じように、富裕が貧乏と同じように、人間がぶたと同じように見えます。自分
が他人のように、わが家が旅先のはたごのように、自分の村が蛮族の国のように思えてならないの
です。

すべてがこんなぐあ・いですから、恩賞が・ほしいとも思わず、刑罰を恐れることもありません。
利害盛衰はいっこう気にならず、哀楽にすら心を勁かされません。このままでは、土谷につかえる
ことも、親戚、友人とつき合うことも、安子をみちぴき、下僕をとりしまることもできません。
わかしはいったいどんな病気にかかったのでしょう。なにか適切な治療法があるでしょうか」
文摯はひととおり話を問くと、竜叔に、叩るい方に背を向けて立つよう合じた。そして、その胸を
明りにすかして食い入るように見つめる。やがて顔をあげ、大きなため息をついていった。
「ああ、あなたの胸は虚そのもの、聖人の胸といってよい。ただ、どうしたことか、七つの穴のう
ち一つがつまっている。聖人の知を備えながら、それを病気と思いこんでおられるのは、おそらく
そのためです。残念ながら、わたレのつたない医術では、治療はかないません」

七つの穴〉 聖人の胸には七つの穴があいているといわれた。
 

  ● 今夜の一句

越前蟹食べ越前に殻のこす  有山八洲彦





 

 
【エネルギー通貨制時代 36】
 
Anytime, anywhere ¥1/kWh  Era” 
 
Mar. 3, 2017 

【再エネ百パーセント篇:最新水素製造技術】

先回は、余剰水素展開事業構想として、水素と二酸化炭素を原料として炭化水素製造芸術の最新事
例を掲載したが、今回は、水素製造事業展開構想として最新電解水素製造技術を掲載する。
 Apr. 20, 2015

❏ 特開2017-203218 水素製造装置及び水素製造システム 株式会社東芝 

再生可能エネルギーを利用した発電施設、例えば、河川やダムなどの水源に併設された水力発電機
山間部に設けられた風力発電機、及び砂漠に設けられた太陽電池パネル等の近傍に水素製造装置を
設置し、これらの発電施設から供給される電力を用いて水を電気分解することにより水素を製造し
製造した水素を消費地まで運搬し、そこで燃料電池や燃料電池車に供給する。このようなシステム
の確立により、既存の電力系統が到達していない僻地に発電施設を建設し、再生可能エネルギーを
有効に収集できる。また、再生可能エネルギーの出力は不安定であることが多いが、電力を一旦水
素に変換することで、貯蔵が容易になり、発電時と消費時を一致させる必要がなくなる。

 Aug. 9, 2018

しかし、このような発電施設が建設される僻地は寒冷地であることが多く、水素製造装置も寒冷地
に設置されることが多い。また、水素製造装置と同様に、水素製造装置を収容する建築物も既存の
電力系統に接続できないため、再生可能エネルギーを利用した発電施設から電力の供給を受けるこ
とになる。よって、発電施設から電力の供給が停止すると、水素製造装置が停止するだけでなく、
水素製造装置を収容する建築物の空調も停止する。これにより、水素製造装置の配管内で水が凍結
し配管が破裂する可能性がある。


下図2のごとく、実施形態に係る水素製造装置は、外部から第1電力が供給され、直流の第2電力
を出力する整流器と、前記第2電力が供給されてアルカリ性水溶液を電気分解する電解槽と、アル
カリ性水溶液を保持する電解液タンクと、電解槽と前記電解液タンクとの間でアルカリ性水溶液を
循環させるポンプと、純水を保持する純水タンクと、前記純水タンクと前記電解液タンクとの間に
接続され、純水タンクから前記電解液タンクに純水を流通させる純水管と、不活性ガスが封入され
た不活性ガスボンベと、前記不活性ガスボンベと純水管との間に接続され、第1電力が供給されて
いるときは閉じ、第1電力が供給されなくなったときに開く第1バルブと、を備える。第1バルブ
が開くことにより、純水管内に前記不活性ガスが導入されるごとで、電力の供給が停止しても配管
が破裂しない水素製造装置及び水素製造システムを提供する。
 

 ❏ 特開2018-193573 電解液タンク、電解装置、および水素製造システム 株式会社東芝 

実施の形態に係る水素製造システム1は、電解方式により水を電気分解することで水素ガスを製造
するシステム。また、水素製造システム1が、再生可能エネルギーを利用して稼動する場合や、既
存の電力系統に接続されて稼動する場合を含む。ここでは一例として、水素製造システム1に設け
られた複数の構成要素(例えば、整流装置11、電解装置12、制御装置14など)の少なくとも
いずれかに、再生可能エネルギーを利用した発電施設100によって生成された電力が供給可能と
なっているものを示す。下図5のごとく、実施形態に係る電解液タンクは、電解液が通過可能な第
1の容器と、第1の容器よりも表面積が大きく、電解液が通過可能な第2の容器と、電解液の温度
に基づいて、第1の容器、および、第2の容器の少なくともいずれかに電解液を供給可能な切替部
と、を備えることで、消費電力を抑えながら、水素ガスの製造効率を向上させることができる電解
液タンク、電解装置、および水素製造システムを提供する。



【符号の説明】
1  水素製造システム、11  整流装置、12  電解装置、13  水素タンク、14  制御装置、
32  電解槽、33  陰極ガス気液分離室、34  陽極ガス気液分離室、35  電解液タンク、
35a  第1の容器、35b  第2の容器、35b1  供給部、35b2  排出部、35b3筒体、
35b4  切替部、36  ポンプ、38  純水製造装置、53  電解液管、53a  切替部、
54a  加熱装置、54c  温度検出器、55  電解液管、55a  切替部、70  セル、100
 発電施設、351  電解液タンク、352  電解液タンク、352a  容器、352b  仕切部
352c  蓋部、352d  切替部、353  電解液タンク、353b  仕切部、S  電解液

 ❏ 特開2018-178175 電解システム、電解制御装置及び電解システムの制御方法
  富士通株式会社
 

下図1は、水素製造システムの構成の一例を示す図である。図1に示される水素製造システム10
01は、直流電圧(例えば、DC400V)を交流電圧(例えば、AC200V)に変換するパワ
ーコンディショナ92を備える。パワーコンディショナ92を太陽電池91に接続した場合、中間
バス93に流れる電流は交流となる。そのため、水素電解装置95を接続するには、AC/DCコ
ンバータ94によって交流を直流に再変換することが必要となるので、電力変換効率が低下する。
また、水素電解装置95に発生する電圧を上げるため、セルが直列につながっている数(スタック
数)を増やす場合がある。この場合、直列に接続されたセルが一つでも劣化して内部抵抗が増加す
ると、発熱によりそのセルで加速度的に劣化が進行し、ついには水素電解装置95全体が動作不能
となるおそれがある。

そこで、発電した第1の直流電力を出力する発電装置と、発電装置が出力する第1の直流電力を、
入力される目標電流値に応じて、第2の直流電力にそれぞれ変換するとともに、第2の直流電力の
電圧情報と第2の直流電力の電流情報とをそれぞれ出力する複数の変換装置と、複数の変換装置の
各々から出力される第2の直流電力がそれぞれ入力されて、気体をそれぞれ発生する複数の電解装
と、第1の直流電力の電圧値と第1の直流電力の電流値とに基づき、発電装置が出力する第1の
直流電力を最大にする制御情報を出力する制御装置と、制御装置が出力する制御情報と、複数の変
換装置の各々が出力する電圧情報及び電流情報とに基づき、目標電流値と複数の電解装置の各々を
選択するか否かの選択信号とを、複数の変換装置の各々に対して出力する選択装置とを備えること
で、電力変換効率を向上させるとともに、電解装置の劣化が生じても継続動作が可能な電解システ
ム、電解制御装置及び電解システムの制御方法を提供する。、


 
【符号の説明】
100 ソーラーパネル 200  セル 300  MPPT制御器 400  セル選択器 500  DC/DCコンバータ
1000,2000  電解システム

 ● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.24 

     

第一部 第5章
アクセルの耳に、灰色の髪の兵士の息遣いが間こえた。一息ごとに低いうなりが入って、普段より
大きな息遣いに間こえる。兵士がいきなり剣を頭上に高く振りかぶり、突進した。いか
にも粗野で
自殺行為にも等しい、と見る者に思わせる攻撃だった。だが、ウィスタンを剣の
間合いにとらえる
直前、兵士は突然進路を変えて、左ヘフェイントをかけた。同時に剣を腰の高さまで下ろした。

一か八かの攻撃だ、と哀れみに胸を痛めながらアクセルは思った。機が熟するのを待っていては勝
ち目がない……’丘ハ士はそう踏んで、この捨て身の攻撃にすべてを賭けたのだろう。だが、ウィ
スタンはそれを予期していた。それとも、本能的に動くだけで十分だったのか。攻撃をきれいに横
にかわすと、突進してくる兵士に向かって剣を無造作に一閃させた。兵士の体が音を立てた。井戸
に水桶を投げ入れて、それが水面を打つときの音に似ていた。兵士が前のめりに地面に倒れ、ガウ
ェインが祈りの言葉をつぶやいた。「終わったの、アクセル」とベアトリスが言った。

「終わったよ、お姫様」

エドウィンはほとんど表情も変えず、倒れた男をじっと見つめていた。少年の視線をなぞっていく
と、その先に蛇がいた。兵士が倒れたことで眠りを妨げられでもしたか、いま兵士の体の下から這
い出してくる。全体は暗い色合いで、そこに黄色と白の斑点が入っている。蛇は全身を徐々に現し
、地面をかなりの速度で這いはじめた。アクセルの鼻に人間の内臓の強烈なにおいが届いた。蛇が
足元に這い寄ってくる。アクセルはベアトリスを促し、本能的に横に一歩移動した。だが、依然、
蛇は二人に向かってくる。途中でアザミの草叢にさえぎられたが、まるで岩で流れが分かれるよう
に、蛇はそこで二つに分かれ、草叢を過ぎるとまた一つに合わさって、さらに這い寄ってきた。

「おいで、お姫様」アクセルはベアトリスの手を引いて言った。
「終わってよかった。理由はよくわからないが、この男はわたしらに危害を加えるつもりだったの
だからな」
「知るかぎりのことをお伝えしておきましょう、アクセル殿」とウィスタンが言った。地面の草で
剣を試い終え、立ち上がってアクセルに向かって歩いてきた。
「この国のサクソン入同胞があなた方と仲良く暮らしていることは承知しています。ですが、ブレ
ヌス郷の動向についての報告がありました。卿はこの国を征服し、そこに暮らすすべてのサクソン
人に戦をしかけるつもりでいるようです」
「わしも同様に聞いておる」とガウェインが言った。「鱒のように腹を裂かれたそこの哀れな兵士
に、わしが味方しなかった理由の一つだ。ブレヌス卿という輩、アーサー王がもたらした平和を無
に帰させようとしているのかもしれぬ」
「国ではもっと聞いています」とウィスタンが言った。「ブレヌス卿は城に危険な客を招いている
とか。竜を手なずける術を持つバイキングだそうです。わが王が恐れているのは、クエリグが捕え
られ、ブレヌス軍の戦力に加えられるのではないかということです。この雌竜は強大な力を発揮す
るでしょう。そうなると、ブレヌス卿の野望にも実現の芽が出てきます。だからこそ、反ブレヌス
勢力に対して竜が放たれるまえに、それを始末するようにとの命がわたしに下されました。ガウェ
イン郷は唖然としておられるようですが、これが真実です」

「わしが唖然としておるとしたら、そなたの言葉に疑えぬ響きがあるからよ。若かったころ一度だ
け、敵軍にいる竜に立ち向かったことがある。なんとも恐ろしいやつだった。一瞬前まで手柄に飢
えていたわが同志らが、その姿を見て恐怖で凍りついた。だが、そんな竜でも、クエリグに比べた
ら力でも校揖さでも遠く及ばない。クエリグがブレヌス軍に加わり、卿の意のままに動くとしたら、
確かに新しい戦をしたくもなろう。だが、クエリグは人に使われるようなやわな竜ではない。わし
はそう信じる」ガウェインは口をつぐみ、倒れた兵士を見やって首を横に振った。

ウィスタンはエドウィンの立っているところまで歩き、腕をつかんで、そっと死体のそばまで引いて
いった。そのまましばらく並んで立ち、兵士を見下ろしていた。ウィスタンが静かな口調で何事か
語っている。ときおり何かを指で差し、エドウィンの顔をのぞき込んで反応を確認している。一度
、指で空中に滑らかな線を描いているのが見えた。たぶん、あれは剣の軌跡だろう。その軌跡をた
どった理由などを説明していたのだろうか。その間、エドウィンはずっと無表情で、倒れた男を見
つめつづけていた。

ガウェインがアクセルの横に立って言った。「じつに悲しいことだ。この静かな場所は、すべての
疲れ切った旅人への神からの贈り物だったに違いないのに、それが血で汚された。誰かがここを通
りかかるまえに、早いところこの男を埋めてやろう。馬は、わしがブレヌス卿の野営地まで引いて
いく。山賊の一団に襲われるところに行きあわせたと知らせ、仲間に墓の場所を教えてやろう。そ
して、そなたには……」とウィスタンに声をかけた。

「まっすぐ東へ引き返すことをお勤めするぞ。クエリグのことはもう考えるな。ホレスとわしに任
せよ。今日はいろいろなことを聞かせてもらったゆえ、以前に増してクエリグ退治に邁進しよう。
さて、友よ、手を貸せ。この男が心安らかに創造主のもとへ戻れるよう、地面に埋めてやろう」



第二部 第6章

くたびれているのに、アクセルはなかなか寝つけずにいた。修道院に着いて、階上の部屋をあてが
われた。地面から伝わってくる冷えを気にしなくてすむのはいいが、アクセル自身はこれまで地面
と離れたところですぐに眠れたためしがない。納屋や馬小屋で寝るときでさえ、梯子を上るだけで
、下に大洞窟が生じたような感じがして、その空間が気になってしかたがなかった。だが、今夜の
落ち着かなさには、頭上の暗闇に潜む鳥の影響が大きいのかもしれないとも思う。いまはほぼ静ま
っているが、それでもときおり羽根のこすれ合う音や、羽ばたきの音がする。そのたびに、不潔な
羽毛が空中を舞い落ちてくるのではないかと気になって、横で眠るベアトリスの体を腕で覆ってや
りたくなる。



一行が初めてこの部屋に入ったとき、鳥はもうそこにいた。烏に黒歌鳥に森鳩………思えば、垂木
にとまってこちらを見下ろしていたその様子に、最初から何か不吉なものを感じていたような気が
する。いや、いまそんなふうに思うのは、その後に起こった出来事に影響されているのだろうか。
それとも、眠れないのはこの音のせいだろうか、とアクセルは思う。ウィスタンの薪割りの音がい
まも修道院の中庭に響いている。ベアトリスは気にならないらしく、さっさと眠ってしまった。部
屋の真ん中には、いまは黒い影にしか見えないが、さっき食事に使ったテーブルがあって、その向
こうでエドウィンが穏やかないびきをかきはじめている。ウィスタンはたぶんまったく限っていな
い。さっきまでずっと部屋の片隅にすわり、修道僧の最後の一人が中庭を出て夜の聞に消えていく
のを待っていた。そのあとは-ほら、また聞こえる-ジョナス神父から注意されたのに、中庭で薪
を割りつづけている。

修道僧らは、会議を終えて出てきてからもすぐには散らず、何やら話し合っていた。せっかくまど
ろみかけていたアクセルが、話し声で眠りから起こされることが何回かあった。声の主はときに四
、五人。いつもひそひそ声だが、そこに怒りや恐怖がこもっていることもある。その声が少し前か
らやんで、アクセルはまたうとうとしはしめた。だが、声はやんでも、窓の下に修道僧がたむろし
ているという感じがなくならない。それも数人ではなく、僧衣をまとった人影が数十人だ。月光の
下に黙然と立って、地面に響くウィスタンの柁の音をじっと聞いているような気がする。

先ほど、まだ午後の太陽が部屋に射し込んでいるとき、アクセルは窓から外をのぞいた。そこに見
えたものがこの修道院の全容かどうかはわからないが、修道僧は四十人以上をかぞえた。それが中
庭のあちこちに数人ずつかたまって、何かを待っていた。隠密ムードが支配的で、何を話すときも
小声だ。それぞれに自分の言葉が周囲に漏れ聞こえないよう気を道っているらしかった。険悪な視
線が交わされる光景も何度か見た。僧衣はみな同じ茶色で、人によってフードがなかったり、袖が
なかったりする。どうやら、向かいの大きな石造りの建物に入るのを待っているようで、それが遅
れているためにいらいらが募っているようだった。

しばらく中庭を見下ろしていると、下で物音がした。窓からさらに身を乗り出し、真下を見た。い
まいる建物の外壁が見えた。色あせた石が日の先に照らされて黄色っぽい。その外壁に、地面から
アクセルのいる方向へ石段が刻まれていて、その石段を上ってくる修道憎が――というか、その頭
のてっべんが-見えた。お盆を持ち、そこに食べ物とミルク入りの水差しを載せている。途中で立
ち止まり、盆をバランスよく持ち直した。アクセルの目には、じつに危険な動作に見えた。この石
段は、段ごとに摩耗の程度が一様ではない。しかも外側に手すりがついておらず、上る人は常に建
物の外壁に体を押しつけるようにしていないと、地面に敷き詰められた硬い敷石にまっさかさまに
墜落しかねない。よりにもよって、この修道憎は脚が悪いようだ。それでも憎は上ってくる。
ゆっくり、着実に上ってくる。

アクセルはドアまで飛んでいって、修道憎からお盆を引き取ろうとした。だが、憎は――すぐにブ
ライアン神父という名であることがわかった-自分でテーブルまで運ぶと言ってきかず、一お客様
にはお客様としてのかもてなしをいたしませんとな」と註った。
ウィスタンと少年はそのときもう部屋にいなかった。思えば、薪割りの音がすでに始まっていたか
もしれない。だから、アクセルとベアトリスは並んで本のテーブルにつき、パンと果物とミルクを
二人だけでありかたくいただいた。二人の食事中、ブライアン神父は嬉しそう-ときにはうっとり
と-過去にここを訪れた客人のことや、近くの川で釣れる魚のこと、長年住み着いていてついに昨
冬に死んだ迷い大のことをしゃべりつづけた。ときどき、年に似合わない元気さで立ち上がると、
悪い脚をひきずり、部屋中を歩きまわりながらしゃべった。

思い出したように窓際に行き、下にいる修道僧たちの様子を見ることもあった。

食事中、頭上では鳥が屋根の下を飛びまわり、羽毛を落としてよこした。ときには、それがミルク
の表面に舞い落ちることもあって、アクセルとしては全部追い払いたい気持ちだった。
だが、修道憎らがかわいがっている鳥かもしれないと思い、我慢した。だから、外の石段を駆け
上る音がして、黒い顎髭をたくわえた大柄な修道憎が部屋に飛び込み、顔を真っ赤にして怒鳴りは
じめたときは、あっけにとられた。 
           
                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』  
 
                                                                       この項つづく

 ● 今夜の一品

  Avocado recipe

  

国産アボカボが売り切れ状態であることをあさイチの「クイズとくもり あったかアボカド大特集
」ではじめてしる。生産量はごくわずか!1個600円の高級"国産”アボカド。いまでは人気とな
った松山産のアボカド。その始まりは28年前、1991年の台風19号で、みかん畑に大きな被
害を受けたが、復興の象徴にと自分の畑に植えたことがきっかけでした。アボカドはすくすくと成
長、10年後には実をつけます。そんな中、栽培家の成功を知った松山市が動き出す。ちょうど、
みかん価格低迷期が問題になっていた時代で、その危機脱作物として、市をあげての栽培に乗り出
す。あれから15年、今も試行錯誤は続く。それでも、生産農家は120軒に増え、生産量も年間
2トンと、着実に成長。アボカドやってていちばんいいのは若い方が来ること。そういう人が農業
をやってくれればと話していた。今やアボカドは、松山の希望となっているというが、愛媛はすご
いですね。ブランドオレンジだけでなく(訪問する予定でいたのですが実現していません)、アボ
カドまで栽培しているなんてさすが日本!と感心する。

  ● 今夜の一曲

Samuel Barber - Adagio for Strings op. 11


今日、13:00から愛昇殿でお世話になった町内の小林茂さんの告別式に駆けつける。享年八十九。
優しい目差しが思い出される。
                                                          合掌

  

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