極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

蟻酸の経済原理

2018年09月26日 | 環境学・環境思想

  



                                             

第27章 自然な生き方
自然な動きは、動きのあとを留めない。自然なことばに、失言はない。自然な計算に、算盤はいら
ない。自然に閉じた門は、カンヌキなしで閉じたのだから、開きようがない。自然に結ばれた繩は、
結び目がないから、解きようがない。
聖人は、あらゆる人を自然な生きかたにみちびく。したがって、聖人のもとでは、捨てられる人は
ない。また、あらゆる物を自然なありかたにみちびく。したがって、聖人のもとでは、捨てられる
物はない。これが、明であって明を忘れた無為自然の境坤である。
だから、「道」を知る者は、「道」を知らぬ者を救い、「道」を知らぬ者は、「道」を知る者に救
われる。しかもたがいに救ったことに気づかず、救われたことに気づかない。
智者の作為をもってしては知り得ぬ境地、これが「道」の至妙な極意である。



 Sept. 23, 2018
【人為的温暖化制御事業篇Ⅱ:最新ギ酸燃料電池技術】
●大気中の二酸化炭素回収と炭化水素合成と燃料電池
前日のつづき。アウディが開発した合成ディーゼル燃料は、水を蒸気を形成するように800℃以
上に加熱し、高温電気分解により水素と酸素に分解➲高温で圧力をかけ、二酸化炭素と反応させ
Blue Crude」(フィッシャー・トロプシュ法)で長鎖炭化水素化合物(液体)を精製➲これをさ
らに改質良し、硫黄および芳香族炭化水素を含まず、高い発火性を備えた化石燃料に近い「eディー
ゼル(
生成全工程のエネルギー変換効率は70%)を作りだす。また、ガソリンなどと混合して使
用することも可能。15年4月20日に開催されたセレモニー(下写真)で、アウディA8に5リッ
トルの「eディーゼル」を給油している。つまり、米国、英国、仏蘭西、伊太利などの植民地主義
の石油争奪の後塵をきした独逸の世界大戦前の技術が再生可能エネルギーをベースに再登場する。
ここで2つの疑問が生じる。1つはコスト、2つめはBlue Crude」の大元の二酸化炭素と水素で
生成されるギ酸の直接燃料化である。


 May 12, 2015

前者は、量産効果でリッター当たりのコストがどの程度まで逓減するのかというもので、後者はギ
酸燃料電
池による内燃機関(レシプロエンジン)代替化であり、燃料化工程の革新(太陽光の直接
変換技術の導入)
によるギ酸の製造コスト逓減である。これをもう少し技術事例を参考に考えてみ
る。その前に、クラムワーク
ス社は大気中へ排出される全二酸化炭素の1%の回収を目標にしてい
ることであるが、日本などの世界各国が連携すれば残りの99%も簡単に実現できるのではないか
と考える。

● 二酸化炭素のメタン変換事例
❏ 特開2018-126090 プロセスガスの改質方法およびプロセスガスの改質装置

まず製鉄工程で発生する二酸化炭素回収技術をクローズアップ。製鉄工程で発生する複数種類のプ
ロセスガスに含まれる二酸化炭素と水素を、微生物反応によってメタンに変換するプロセスガスの
改質方法に関し、特に、嫌気性微生物である水素資化性化学独立栄養性メタン生成菌を利用した改
質方法の特許事例。

この事例は、プロセスガスの改質方法を実施するためのプロセスガスの改質装置に関する特許であ
り、製鉄所などで行われる製鉄工程、例えば、高炉ガス(Blast Furnace Gas、BFG)、コークス炉ガ
ス(Coke Oven Gas、COG)、および転炉ガス(Linz-Donawitz converter Gas、LDG)といった、様々
なプロセスガス(副生ガスともいう)が発生し、それらのプロセスガスには二酸化炭素が含まれる。
また、それらのプロセスガス、特にコークス炉ガスには、メタンや一酸化炭素などの可燃性成分も
含まれ、製鉄所における焼結炉や熱風炉などの各種工程における燃料としても利用されている。

プロセスガスを燃料として用いた際に排出されるガス(
プロセスガスを燃焼させたガス:燃焼排ガ
ス)には、より高濃度の二酸化炭素が含有される。このように、製鉄所では、二酸化炭素を含有す
るガスを多量排出されるため、地球温暖化防止から、二酸化炭素排出量抑制技術、なかでも、二酸
化炭素を大気に放出せずに回収して有効活用する技術が求められ、二酸化炭素回収し活用する技術
の一つに、二酸化炭素を、有価物であるメタンへ変換する方法がある。メタンは、二酸化炭素と水
素を反応物質として、下記反応式(1)で表されるメタン化反応により得られる。
   CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O …(1)
上記二酸化炭素と水素のメタンの変換は、化学的方法や生物学的方法により進行することが知られ
ている。例えば、特開2015-124217号公報では、ガス中の二酸化炭素と水素を、触媒を使って化学的
にメタンに変換する方法が提案されていが、メタネーション反応器で副生した一酸化炭素をシフト
反応で二酸化炭素へ変換し、さらに、シフト反応器の後段にメタネーション反応器を設置しシフト
反応生成した二酸化炭素を反応物質としてメタン生成する特徴をもつ。また、特開平6-169783号公
報では、太陽エネルギーを利用して水を電気分解し水素を発生させ、水素を水素資化性メタン生成
菌に供給し、生物学的に二酸化炭素をメタンに変換する方法が提案され、特開2013-192547号公報で
は、共培養した光合成細菌と水素資化性メタン生成菌により、生物学的に二酸化炭素をメタンに変
換する方法が提案され、この方法では、光合成細菌である紅色非硫黄細菌が二酸化炭素と水から水
素を生成し、発生した水素をメタン生成菌が利用して二酸化炭素をメタンに変換。この様に二種類
の微生物を同一溶液中で同時培養する。

また、特開2005-168368号公報では、嫌気的微生物を使い生物学的に二酸化炭素をメタンに変換する
方法が提案されて、バイオマスを栄養として培養した嫌気性微生物の培養物に二酸化炭素含有ガス
を導入して、微生物反応で二酸化炭素をメタンに変換することを特徴とする。

しかし、特開2015-124217号公報に記載されているような化学的メタン化方法では、化学的に安定な
物質である二酸化炭素を反応させてメタン化反応進行に、触媒を用いる必要があり、高価なプロセ
スとなり、原料として供給される二酸化炭素と水素の組成比が化学量論比から外れると著しく反応
効率が低下するため、反応効率を維持するためには、二酸化炭素と水素の比率を厳密に制御する必
要がある。さらに、メタン化反応進行に必要なエネルギーが大きく、製造するメタン以上のエネル
ギーをメタン化反応で消費する問題
がある。一方、微生物学的メタン化方法は、触媒反応と異なり
常温・常圧下で進行し、低エネルギーかつ低コストなプロセスとなり得るが、水素資化性メタン生
成菌に供給する水素の製造方法、すなわち、水素資化性メタン生成菌は、水素ガスを唯一の電子供
与体、二酸化炭素を唯一の炭素源として生育する化学独立栄養細菌であるため、二酸化炭素のメタ
ン化には水素の安定的な供給が必須
である

しかし、特開平6-169783号公報の水電気分解水素を用いる場合には、微生物反応を行わせるリアク
タだけでなく電気分解装置を設置し、維持管理する必要があり高価なプロセス
となる。
また、特開
2013-192547号公報のように光合成細菌の水素製造に太陽光をエネルギー利用には、太陽光を受ける
ための面積を大きくとる必要があり装置が大型化、高価なプロセスとなる。
特開2005-168368号公報
のバイオマス利用する場合は、水素供給量のコントロールや反応効率の最適化が困難で、バイオマ
ス処理設備が必要なことと、バイオマスが発生しない製鉄所でのプロセスガスの改質に利用するに
は適さない。


このように下図のごとく、製鉄工程で発生するプロセスガスに含まれる二酸化炭素と水素を微生物
反応でメタンに変換するプロセスガスの改質方法であって、第1のプロセスガスに、このプロセス
ガスとは異なる組成を有する第2のプロセスガスを成分調整用ガスとして添加し、組成が制御され
た混合ガスを調製し、混合ガスを、水素資化性化学独立栄養性メタン生成菌を含むリアクタへ、制
御された流量で供給。プロセスガスの改質方法で、製鉄工程で発生するプロセスガス中の二酸化炭
素と水素を高効率でメタンに変換できる、簡便で、低エネルギーかつ低コストであるプロセスガス
の改質方法、前記プロセスガスの改質方法を実施するための改質装置である。

尚、生成されたメタンは直燃し再利用できるだけでなく、メタン水蒸気改質反応させ燃料電池で発
電させることも可能。

【図1】本発明の一実施形態におけるプロセスガスの改質方法を示す模式図
【図2】本発明の他の実施形態におけるプロセスガスの改質方法を示す模式図

 

● 合成ディーゼル油用燃料電池事例
❏ 特表2016-505200 炭化水素で動作可能な燃料電池システム

ところで、下図のとおりディーゼル等の炭化水素で動作可能な乗物で用いるためのエネルギー生成
ユニット(1)で、燃料電池(2)と、空気及び炭化水素を供給し、電気エネルギーを産出する接
続部(3、4、5)とで構成されたエネルギー生成ユニット(1)の特許技術を紹介する。この事
例ではと、エネルギー生成ユニットには、3つの実質的に隔離分離した機能ユニット(7、8、9)
を有し、第1の機能ユニット(7)は、媒体供給用で、かつ、主に燃料及び空気の供給装置を有し、
第2の機能ユニット(8)は、改質用に、かつ、主に炭化水素をプロセスガス変換装置を有し、第
3の機能ユニット(9)は、電気エネルギー生成用に、かつ、主に燃料電池(2)を有し、第3の
機能ユニット(9)には、第2の機能ユニット(8)内で生成されたプロセスガスが供給されるて
機能する、ちうものである。

 【符号の説明】
1 エネルギー生成ユニット 2 燃料電池 3 空気接続部 4 炭化水素接続部 5 電気接続部
6 支持構造 7 第1の機能ユニット 8 第2の機能ユニット 9 第3の機能ユニット 10 第1の
フレームプレート 11 第2のフレームプレート 12 第3のフレームプレート 13 第2の固定
プレート 14 第3の固定プレート 14a 上側プレート 14b 下側プレート 15 ハウジング
15a、15b、15c ハウジング部分 16 絶縁体 16a、16b、16c 絶縁領域 17 空
気送風機 18 再循環送風機 19 始動燃焼器空気弁 20 再循環弁 21a、21b 炭化水素ポ
ンプ 22 固定用留め具 23 第1の固定プレート 24 始動燃焼器 25 気化装置 26 排ガスチ
ャンバ 27 再熱器 28 改質装置 29 始動燃焼器の炎管 30 熱交換器 31 排ガス接続部
32 燃焼室 33 カソード空気弁 34 改質装置空気弁 35 再熱器アノード排ガス弁 36 分配
プレート 37 改質装置触媒コンバータ 38 再熱器触媒コンバータ

 Mar.19, 2012
● 蟻酸燃料の経済原理

二酸化炭素を利用した水素貯蔵技術
燃料としてギ酸を使用する複数の形式があり、改質器で改質して水素を抽出して従来の燃料電池で
使用する形式と蟻酸と酸素の反応で発電する直接形燃料電池(DFAFC)の形式がある。蟻酸を改質せず
に直接利用する場合では同種の構造を有する直接メタノール燃料電池(DMFC)と比較して燃料の蟻酸
はメタノールよりも分子が小さく、接触改質が不要で、直接メタノール燃料電池では問題となるプ
ロトン交換膜を透過して空気極に達するクロスオーバー現象が無いので電圧が降下しにくい特徴を
有する。長年、蟻酸は従来の燃料電池で使用される白金触媒では活性化に余分なエネルギーが消費
されるため、直接変換型燃料電池の燃料として実用化には不適だとされていたが、近年、白金の代
わりにパラジウムを触媒
として使用したところ、良好な結果が得られたことから、実用化に向けて
前進した経緯がある。実用化へ向けて開発が進められている。

❏ 特開2018-141220 導電性ダイヤモンド電極を用いたギ酸製造方法及び装置
従来の方法として、スズ(Sn)、鉛(Pb)あるいは水銀(Hg)といった金属電極をカソード電極として構
成し、二酸化炭素を含有する電解液からギ酸を生成する方法が開示されているが、電解効率が時間
とともに減少していき、電極の耐久性が乏しいといった問題があった。また、電解液には、メタノ
ールなどの有機溶媒が利用され、電解条件も加圧条件とされるなど、電解反応装置として設備が複
雑になる、といった問題点があった。図2のごとく、カソードに導電性ダイヤモンド電極を使用し、
カソード用の第一電解質溶液が、ルビジウムイオン、セシウムイオン又はカリウムイオンを含み、
かつ、二酸化炭素を含み、導電性ダイヤモンド電極を用いて第一電解質溶液に電圧を印加して、二
酸化炭素を電解還元することによりギ酸を製造することで、高濃度の炭酸カリウム溶液や、高圧条
件を必要とせず、環境負担が比較的少なく、効率的なギ酸の製造方法及び装置が、また、ファラデ
ー効率が低下しにくい、耐久性のある電解反応装置の提供である。


【符号の説明】1 カソード電極 2 カソード槽 3 固体電解質膜 4 アノード槽 5 アノード
電極 6 外部電源機構 7 二酸化炭素の気泡

● 二酸化炭素を削減しながら太陽光で発電するバイオ燃料電池
❏ 特開2018-118877 水素供給システムおよび水素供給方法
ギ酸(HCOOH)は、常温で液体であり、水素(H2)/二酸化炭素(CO2)と相互変換が可能でエ
ネルギー密度も高いため、水素貯蔵材料として最近注目されている。 ギ酸は、常温常圧での水素貯
蔵量が4.4%あり、二酸化炭素との相互変換に伴うエネルギー変化が小さいことから、温和な条件
で使用でき、効率のよい水素貯蔵用水素化物として期待されている。太陽光により、国際公開2013/
187485
号公報に記載された方法で燃料源としてのギ酸を作るためには、光増感剤、電子伝達体、触
媒を必要とする。しかしながら、太陽光と水をそれぞれエネルギー源、電子源とする事で、天然の
葉は二酸化炭素から有機物と酸素へ、常温、常圧、酸素大気下で、当たり前の様に物質変換してい
るが、物質変換反応を常温、常圧の酸素大気下で、人工的に行おうとすると、酸素により反応が阻
害されてしまうという問題がある。

一般的に、この反応は酸素により阻害されるため、酸素を除く必要がある。しかしながら、酸素除
去のコストが人工光合成を実現するための一つの大きな問題となる。また、上述の通り、触媒を用
いてギ酸を分解する場合、汎用性を考慮するとその反応系の構築は簡易なものであることが好まし
い。また、ギ酸を効率的に水素に変換するためには、ギ酸から水と二酸化炭素が発生する副反応が
生じないことが望ましい。

下図1のごとく、ギ酸生成装置50により大気中あるいは排気二酸化炭素から人工光合成によりギ
酸を生成して貯蔵し、常温・常圧の脱酸素環境下でギ酸を触媒反応により水素と二酸化炭素に分解
するギ酸分解装置60により、上記ギ酸生成装置50から供給されるギ酸を分解して得られる二酸
化炭素を上記ギ酸生成装置60に供給して二酸化炭素を循環させるとともに、ギ酸を分解して得ら
れる水素を外部装置に供給する、太陽光エネルギーを有効に利用して、ギ酸を生成して貯蔵し、貯
蔵したギ酸を水素に変換してエネルギー源として安全且つ効率よく供給する。


【符号の説明】
10 ギ酸生成デバイス、11 基板、12 酸化アルミニウム微粒子、13 色素、14 メチルビオ
ローゲン、15 ギ酸脱水素酵素、20 水素イオン発生手段、22 高分子ビーズ、30 ギ酸生成
手段、40 流路、50 ギ酸生成装置、55 ギ酸貯蔵タンク、60,70 ギ酸分解装置、61 貯
蔵部、62 反応部、63 分離部、64 制御部、100 水素供給システム、110 一般住宅、
120 住宅用水素発電設備、130 貯湯タンク、140 太陽電池パネル、151 トップライト、
152 バイオリアクタ、1000 エネルギー供給システム

 Apr. 25, 2018

このように、炭化水素を合成させるより、直接水素発生させ、二酸化炭素を削減する究極の水素燃
料電池システムも開発されている。バイオ燃用戦地は電極のライフサイクルが課題がのこるものの
日本や世界の先進諸国の連携でそう遠くない近い将来(わたしが存命中に?)実現することも見え
てきた。オゾンホールの制御の成功もあり、"人為的温暖化禍"もコントロールできる時代に突入し
ていようにみえる。つまり、"エネルギーフリー社会"もまたしかりである。これが今夜の『蟻酸の
経済原理』である。



【社会政策トレッキング:バラマキは正しい経済政策である Ⅸ】

 Yutaka Hrada, Wikipedea 

第2章 ベーシック・インカムの思想と対立軸
第4節 現実の所得分配状況と再分配政策
私には、所得再分配に関するいずれの議論も、真実を突いているように思える。功利主義の、過度
な所得再分配はそもそも再分配すべき所得を削減し、社会全体の幸福を損なうという議論は分別の
あるものである。ロールズの、自分が最下層に生まれる可能性を考えれば、その人々の福祉につい
ても考えておきたいと思うはずだという主張も説得力がある。ただし、最下層の人々に再分配した
結果、それより上の人々よりも豊かになるのは再分配のしすぎである(ロールズはこのことには配
慮している)。リバタリアンの、所得を得る過程が正しいものであれば、結果として得られた所得
は正しいという考えにも魅力があるが、現実の所得と資産は、本当に正しい過程の結果なのだろう
か。多くの所得や資産が、偶然、強欲、詐取によって得られたという可能性も否定できない。ただ
し、それは後述するように、危険な考え方でもある。

 NDC分類 321.1

これは、既存の富の分布状況が正しいと思われていない国で民主主義を実現するのが困難である理
由も明らかにする。例えば、中国やロシアの少なからぬ富は、不当に得られたものと国民に認識さ
れている。中国共産党は、それ以前の地主と内外の資本家の富を接収して共産国家を成立させた。
そのシステムが経済的に機能しないと認識し、資産を内外の資本家に払い下げ、それと同時に、共
産党幹部がその一部をくすねた結果が、現在の富の試存状況である。もちろん、中国でも、多くの
資本家の富は、彼らの企業的能力によって得られたものであるが、そうでないものも大きいだろう。
どの国の富もそんなものだと言えるかもしれないが、ほとんどの国では、富の淵源は遥かな過去に
あり、人々の記憶には残っていない。それに対して、中国やロシアでは、富の淵源の記憶は新しい。
民主化された中国で、その淵源を問題として煽動する政治家が登場することは避けられないだろう。
ロシアでは、そのような富、あるいは、企業家的能力によって得られた富がプーチン政権によって
没収された場合もある。

韓国では、「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」が2005年に成立している。目
的は、「日杢布国主義の殖民統治に協力し、わが民族を弾圧した反民族行為者が、その当時、蓄財
した財産を国家の所有とすることで、正義を具現し、民族精気を打ち立てることを目的とする」(
第一条、目的)であるという。実際に、日韓併白条約を締結した李完用(1858~1926)の
子孫から土地を没収し、他にも77人の土地を没収しているという(「「親日派」子孫の財産、土
地4億8千万円を没収植民地統治協力で」、『読売新聞』2007年5月2日夕刊。「李充用ら親
日派9人の財産、国への帰属を決定」、『聯合ニュース』2007年5月2日。「親日反民族行為
者財産調査委、財産帰属対象を追加」、『聯合ニュース』2009年7月1日)。

中国において富を得た人々は、自分たちの富を守るために、民主主義に敵対するしかないと考える
かもしれない。しかし、習近平政権で行われている不当利得の没収が、権力闘争であり、恣意的な
ものであるのに対し、民主主義国家である韓国では、一応は、不当利得が明確に定義され、その範
囲が認識でき、その法はすべての人に等しく適用されているようである。すると、中国の富裕層も
比較すれば、民主主義のほうがマシだと考える可能性もある。

BIを給付するためには、当然に富の再分配をともなうが、その程度は、既存の富の分布がどれだ
け正当と思われているかどうかにも依存する。多くの人が不当と考えているのであれぼ、より大き
な再分配が支持されることになるだろう。ただし、BI自体、現状より大きな再分配を行うべきで
あるという主張と結びついているわけではない。給付額に応じて、さまざまなタイプのBIの思想
がありうる。一つ共通しているのは、現状の福祉政策は、それが本当に必要にしている人には届か
ず官僚的な無駄を生んでいるという批判である。



第4節 BIの発想
すべての人々に暮らせるだけの所得を何らかの形で与えれば、貧困問題は解決できるという発想は
古くからある。
ジョンースチュアートーミル(1806~73)は、そのような試みを紹介している(ミル『経済
学原理』第2篇第12章3・4、岩波文庫、1960〇年、原著1848年)。その一つは、17
94年または1804年から34年までに教会教区の長官に農業労働者への家族手当として行われ
たものである。しかし、ミルによれば、家族手当は、マルサス的なメカニズムによって貧困を減少
させることにはならなかったという。マルサス的なメカニズムとは、貧困が軽減されれば人口が増
大し、食糧への需要が増えて、食糧価格が上昇し、その結果、結局、貧しい人は豊かになれないと
いうメカニズムである(トマスーロバートーマルサス『人口論』中央公論社、1973年、原著1
798八年、改訂版1803年)。



ミルは、これと同様のものとして配賦地制度についても説明している。配賦地制度とは、労働者に、
自家用のじやがいもや野菜、または販売用の農作物を作らせるために一定の土地を貸し出すという
制度である。しかし、ミルは、これもマルサス的なメカニズムによって人口を増やすだけだと否定し
ている。
ただし、マルサスの人口論の思想が広がる以前、むしろ18世紀には国家が救貧に対して責任を持
っていたというジェフリー・ウィリアムソン(1935生)の指摘がある。ウィリアムソンによれ
ば、1801年のエリザベス救貧法は、高齢者、身体障碍者、未亡人、孤児、大家を国家の責任で
支援することをはっきりと確認していたという(ジェフリー・G・ウィリアムソン『不平等、貧困
と歴史』127~128頁、安場保吉・水原正亨訳、ミネルヅア書房、2003年)。また、19
世紀前半の老齢年金の成人労働者所得に対する比率は7~8割であったという)。ただし、この時
代には、高齢者はそもそも少なく、現在のようには長生きをせず、また、貧しい人が医者にかかる
ことはできなかったことも認識しておく必要がある。

マルサスの人口論は、19世紀の初期に生まれた新思想であって、その思想は、人口論が否定され
つつあった現実のなかで力を持ち、19世紀の終わりになって、一人当たりの所得がこれまでにな
いほど高まっているという圧倒的な事実によって、先進国では力を失った思想であると考えたほう
がよいかもしれない。

直接的な所得の補助が、単なる人口増加と、食糧供給不足によって、新たな貧困をもたらすだけだ
という認識を否定するには、産業革命によって人類がマルサスの限界を打ち妓らなければならなか
った。もっとも、ミルはイギリスが産業革命を経験し(1760年代から1830年代に起きたと
されている)、人類がマルサスの限界を打ち破って、とてつもなく豊かになる時代の初期に生きて
いたのだが、それに気が付かなかったということである。BIについて議論するためには、すべて
の人々が、人類はマルサスの罠から逃れたのだと認識した後である必要がある。

第5節 BI思想の活性化
BIの発想に、新たに息を吹き込んだのは、新自由主義の総帥ミルトンーフリードマン(1912
~2006)であると言ってよいだろう。彼は、1960年代から「負の所得税」という形でBI
の発想を述べている(『資本主義と自由』第12章、村井章子訳、日経BP社、2008
年、原著1
962年)。なお、左派のBI論者(何か左派であるかは、本章後出の「権利としての
BI」の項
で述べる)であるトニー・フィッツパトリック(1966生)は、フリードマ
ンのこの発想をジュ
リエット・リズ・ウィリアムズが提唱した「新しい社会計画」の影響を受
けたものだとしている
(トニー・フィッツパトリックー『自由と保障-ベーシック・インカム
論争』50頁、武川正答・
菊地英明訳、勁草書房、2005年)。



負の所得税」とは、所得の低い人には、政府が負の税金を与える、すなわち所得を給付するとい
う制度である。所得がゼロであっても、給付金かおるわけで、これはBIである。フリ
ードマンは、
さまざまな社会福祉プログラムを負の所得税に置き換えれば、現行の社会保障予
算の半分ですむと
書いている(フリードマン前掲書、350頁)。すなわち、BIは、より小さ
な所得再分配政策と
両立しうるのである。これはもちろん、同じ福祉の効果をもたらすため
に、より小さな政府支出で
すむのなら、それは経済効率のうえでも望ましいということだが、
哲学的な問題でもある。

              原田 泰著 『ベーシック・インカム 国家は貧困問題を解決できるか』

                                     この項つづく
 

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