日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 更新が滞ってしまい相済みません。まずは申し開きをさせて頂きとう存じます。m(__)m

 昔の人の日記をパクれば「九月は苦月」と申します。毎年のことながら、私の仕事も9月あたりから急に忙しくなります。本業自体仕事量が増えてくるのですが、それよりも秋から冬にかけて、顔を出さなければならない展示会が目白押しとなるのです。

 展示会は仕事に関連するものもありますし、付き合い(義理)で必要に迫られ、というものもあります。もちろん人の海にもまれないよう事前に手続きしてプレスデイに行くのですが、完全夜型生活なので徹夜もとい「徹昼」同然で寝る時間が激減。幕張は遠いし電車賃高いし(涙)。きれいなお姉さんたちに会えるという眼福もありますが(笑)、それ以上に疲れます。疲れてもルーティンワークはありますので、ブログに関しては記事漁りだけを欠かさぬようにするのが精一杯。

 ネタはたまる一方なのにこちらで書くことができず、我ながら忸怩たる思いがありましたが、この駄文に目を通して下さる皆さんにも御迷惑をおかけてして申し訳ありません。

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 で、復活早々また農民暴動かい、と言われそうですが、標題の通り、これは従前のものと比べかなり毛色が違います。実は当ブログも「斜陽の広東王国に農民のハンストに上海の情報戦」(2005/09/01)で既報しています。

 その件に改めてふれるのですからそれなりの価値を認めている訳ですが、まずは既報部分を臆面もなく以下に引き写します。

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 広東省ネタをもうひとつ。広州市番禺区の魚窩鎮・太石村で昨日(8月31日)、選挙による村民委員会主任(村長)選出を求める村民たち約80名が番禺区政府の正面玄関前に座り込み、抗議のハンストに突入しています。他に村民数十名も近くに座り込んでおり、事態に驚いた地元当局は警官多数を出動させてリーダー格の村民3名を逮捕。

 抗議行動に参加した村民によると、村民委主任は選挙で選ばれることが法的に保障されているのに、太石村では何度抗議しても村民委によってそれが容れられず、訴訟を起こしても時間ばかりかかるため、やや過激ながらもハンスト、座り込みといった方法を選んだそうです。

 ●香港紙『明報』(2005/09/01)
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5kk.html

 太石村は番禺区ですから広州の郊外型農村といったところでしょう。で、都市部の拡大に伴い、この村も御多分にもれず土地収用にまつわるトラブルが頻発しており、村民と開発業者が衝突するといった事件も以前から発生しているようです。

 こうなるとよくある話に落ちる訳ですが、要するに村民委主任が真ん中に立って甘い汁を吸っているのではないかという疑惑が持ち上がります。ところが会計帳簿を見せろと迫った村民に対し、村民委主任はこれを拒否。このため村民は主任罷免を決議し、主任改選要求を区の担当部門に求めたもののキッパリと断られたため、訴訟は時間がかかるとしてハンストに及んだとのこと。

 村民は急いているようでもありますが、これはどんどん迫ってくる都市化の波に煽られたというところでしょうか。ちなみに村民委員会主任を選挙によって選出することは「中華人民共和国村民委員会組織法」が根拠となっています。

 村民が
「民主をよこせ法治をよこせ」などと叫ぶために番禺区政府は過敏になってしまったのかも知れません。上述した通り警官隊を繰り出してリーダー格3名を逮捕。あとは座り込んだ村民と人の壁を作る警官隊の睨み合いとなっており、昨日午後時点では事態は終息していなかったとのことです。

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 ……以上、引用終わり。農民が「民主」を叫び、村民委主任改選要求という民主的手続きの実施を主題に据えたこと、それにハンストという抗議手法を採ったこと、この2点が目新しい点です。

 ただ、上記2点が「ちょっと違う」ことの全てではありません。

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 ちなみにこの件は某巨大掲示板の東亜板に別の暴動に関するスレッドが立っていたのでスレ違いながらそこへ書き込んでみたところ、色々な情報を頂きました。

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 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん 投稿日:2005/09/02(金) 02:29:01
 
この件、16日に警察と衝突していたようです。
 下記でその動画が見れます。

 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/08/26/china_rights/
 
左にある「相關視聽資料」がそうです。
 撮影者の声も入っていて臨場感満点です。
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 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん 投稿日:2005/09/02(金) 02:41:47
 
8月31日現在のハンストの様子の写真です。
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2005/08/31/0831hunger-protesters200c.jpg
 
これからどれだけハンストの人数が増えるかな。
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2005/08/31/jueshi/
 
――

 「RFA」とは反中共系ラジオ局。土地問題をめぐる村民委主任の限りなくクロに近い疑惑は前述した通りです。2000ムー(1ムー=6.67アール)の土地売却で1億元近いカネが動いたのに、その行方が不透明。このため7月末に村民委主任罷免動議となり、そして8月中旬に2日間にわたって警官隊と村民の衝突があったのですね。これに対し私は、

「それにしても誰がハンストという抗議方法を農民に教えたのか気になりますw」

 とレスしたのですが、この「誰が教えた?」が今回の事件の焦点のように思えたのです。いかに都市郊外型農村とはいえ、ムシロ旗ならぬ深紅に染め抜いた抗議の横断幕も農民にしては手際が良すぎるような気がしました。軍師がいるのでは?という、これも限りなくクロに近い疑惑が頭をもたげたのです(笑)。

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 事件の経過をさらに追いますと、ハンスト開始の翌日である9月1日、番禺区政府は早朝に機動隊多数を投入して17名を拘束するなど農民を追い散らしました。上記スレッドでは、

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 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん 投稿日:2005/09/02(金) 15:05:34
 
広州郊外の件、警察が明け方に鎮圧に動いたみたいですね。
 http://hk.news.yahoo.com/050901/12/1g71w.html
 
さて。
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 とのレスがつきました。この香港誌『明報』によると、このとき政府庁舎前に徹宵で座り込んでいた農民の数は約100名に達していたとのことですから、農民側もヤル気満々です。ただこのときは大がかりな衝突には発展せず、ともかく農民側は退却したようです。

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 そのまま泣き寝入りして沈静化?と思っていたらあにはからんや。上記スレッドに新たな情報が書き込まれました。

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 <丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん 投稿日:2005/09/08(木) 02:03:50
 
広州郊外の件、農民負けずに村民委員会の主任罷免を求める
 署名活動を開始し、現在800名ほど集まった模様。
 ネット上でも宣伝活動を開始するらしい。

 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2005/09/06/panyu/
 ――

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 ハンストの次は署名活動とネットでの宣伝活動。実に華やかな展開です。そしてこの記事で軍師の存在が明らかになりました。署名に応じた人権活動家がいることと、学者・弁護士・作家など28名が9月4日にインターネット上で農民による村民委主任改選要求を支持する声明を発表したのです。「ちょっと違う」所以がここにあります。

 ●「番禺太石村村民ハンスト事件に関する声明」
 http://asiademo.org/news/2005/09/20050905.htm#art01

 反体制系ニュースサイト「大紀元」(GB)が9月8日、RFAの記事を転載しています。

 http://www.epochtimes.com/gb/5/9/8/n1045244.htm

 内容は主に人権活動家や村民へのインタビューで、署名は960人に達しているとのこと。そして記事の最後に、署名に名を連ねた劉暁波氏(評論家)のコメントも出ているのです。この人は1989年の天安門事件でも大学生のイデオローグとして活躍し、投獄されたこともある中国国内在住の反体制系知識人の横綱ともいえる人物です。

 海外在住の反体制系知識人にも動きがあります。この種の人たちの集う反体制系サイト「民主論壇」(
http://asiademo.org/)にも今回の農民運動を高く評価し、支持するという趣旨の文章が劉暁波氏をはじめ内外から続々と寄せられています。

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 いままでに数限りなく取り上げてきた農民争議や都市暴動は社会問題という色彩で染め上げられたものばかりですが、今回の件は違います。農民が「民主」を求め、反体制系知識人が応援に乗り出したことで、
明確に「政治色」を帯びた事件だといえるかと思います。だってこれ、大袈裟にいえば「農民による民主化運動」ですから。

 少なくとも中共当局はそう認識しているでしょう。一見庶民派のスタンスであるかのような胡錦涛総書記・温家宝首相なら一議もなく潰しにかかるところでしょうが、海外で報道されるとそう簡単に事を運べなくなります。

 さらにこの事件を種にアンチ胡錦涛派が現執行部(胡錦涛政権)を叩くなど、党上層部の政争の具にされる可能性もあるでしょう。

 現段階では先がみえませんが、来月に党の重要会議「五中全会」(第16期党中央委員会第5次全体会議)が予定されていますので、煮詰まりつつある政局も含め、事態の推移が気になる事件です。

 最後になりましたが、暴動スレで情報提供をして頂いたみなさん、本当に有難うございました。



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 今回はちょっと変則的です(ときどきやってますけど)。前回のコメント欄にて頂いた御質問に、私が馬鹿は馬鹿なりに考えて何事かをお答えできれば、というものです。素人によるものですから(しかも出鱈目を謳っている)あまり期待してはいけません(笑)。

 頂いた御質問は下記の通りです。


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中共内部の暗闘? (wnm)
2005-09-06 00:59:59

こんばんは。断片的な情報しか入ってこないので、最初は胡耀邦復権をダミーに掲げた長老層の復権運動かと私も思っていました。それと、もう一つ気になったのが、抗日戦争の死者数のボディーカウント論争でこれまで公式に認められていた数字が誇張(そりゃ、そうでしょうね)を含んでいたという主張が国内の新聞、新京報に現れた点です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050831-00000173-kyodo-int(※1)

でも、ご指摘のように、江沢民が2番目の序列で登場したと言うことは、こうした一連の動き(なんでしょうか)が江沢民の上海閥に打撃になっていないことなのでしょうか。或いは、逆に対抗手段として、江沢民側がそのような序列を要求したのか、私に見られる情報からではこれ以上何とも言えないですね。ただ、抗日戦の死者の数を水増ししたという報道は明らかに江沢民時代に取られた様々な反日運動へのアンチに、結果としてなっていることは確実でしょう。ご高見を伺いたいです。


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 まず胡耀邦再評価、正確には生誕90周年記念活動の動きから。

 いきなり言葉尻をとるようで申し訳ないのですが、これについて私は「長老層の復権運動」という側面がどれだけあるのかは疑問だと思います。私が考えるに、胡耀邦評価は第一に共青団人脈による示威活動のようなものであり、第二により重要な点としてこの記念活動によってかつて胡錦涛の有力な支持母体であった党長老たちとの関係修復を図り、権力闘争上の戦力強化を目指しているのではないかと思います。

 あと、清廉なイメージが胡耀邦にはありましたから、胡耀邦を持ち上げることで党幹部による汚職蔓延という現実を批判し、風紀粛正を求めるという意味合いも多少はあるかも知れません。その点では共青団人脈を際立たせつつ、現在行われている「共産党員の先進性保持活動」をやるような、一石二鳥のような面、これはあるかも知れません。

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 ちなみに、胡錦涛がかつての胡耀邦人気にすがるもの、という側面はないと思います。仮にそういう側面があったとしても効果は薄いでしょう。香港紙『明報』(2005/09/04)は「自由派学者」の支持を得るためという一面もある……と書いていましたが、そういう知識人の支持が高まっても権力闘争における戦力アップにつながるとは思えません。

 胡耀邦人気というのも国民の世代交代で昔の話になりつつあるように思います。胡耀邦に対し直接ないしは間接的に有り難さを感じているのは文革(文化大革命)を経験したり、文革で貼られたレッテルを剥がしてもらい名誉回復を受けた世代。これを中核に、下限はせいぜい1989年の天安門事件(六四事件)を経験した30代後半~40代まででしょう。

 学校教育の場で文革がどのようにどれだけ教えられているのかわかりませんが、現在の若い世代にとって胡耀邦という名前は馴染みが薄いかと思います。という訳で、この面での効果を狙うとすれば利用価値には疑問符がつきます。

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 前回書きましたように、「自由派知識人」とは端的にいえば天安門事件の名誉回復を求めるような知識人ということになるでしょう。しかし『香港文匯報』(2005/09/05)によると、

「天安門事件に対する政治的評価が翻ることはない」

 とわざわざ書いてありますので、胡耀邦再評価が「自由派知識人」を喜ばせるような内容にはならないと思います。

 ●『香港文匯報』(2005/09/05)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0509050003&cat=002CH

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 この『香港文匯報』の報道はなかなか興味深い内容です。湖南省にある胡耀邦の旧宅はシロアリに喰われてかなり痛んでいたのを、一般市民も見学できるよう、4月11日から地元政府が40万元余りを投入してメンテナンスを行っているということです。要するにこの時期にはすでに「生誕90周年記念活動」が準備されていたのでしょう。もちろん政争の具として使うことを想定した上でのことだと思います。

 11月20日の生誕90周年当日は記念活動を全国ネットの中央電視台(テレビ局)が放送する予定とされています。面白いのは、記事がここでロイター電を引用し、

「胡錦涛はこの活動を党中央主催にするものと定めた」
「当日は胡錦涛を頭とする中共中央政治局のメンバーのうち、一部がこの活動に出席する」

 としていることです。全員ではなく「一部」なんですね。お偉方もなにかと忙しいのでしょうが、格でいえば公務の二の次にされてしまうイベントでしかないようです。むろんこれは記念活動に対する党上層部の足並みが揃っていない、記念活動を行うことに消極的な政治勢力があることを示唆するものです。

 それにしても11月20日という胡耀邦の誕生日、胡錦涛派からしたら「もう少し早ければいいのに……」というところではないでしょうか。


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 御質問の二点目、いわゆる抗日戦争における死傷者数などに対して、一部で水増しが行われていることを批判する学者の声が北京紙『新京報』に出たことについて。

 原文にあたるとわかるのですが、この学者・王錦思氏は「中国抗日戦争史学会会員」という肩書です。良心的なその道の専門家が、史実を無視した「水増し」がまかり通っている現状を見るに忍びなく、とうとう声を上げたという印象です。しかし結果的には反日で盛り上がろうとする向きに水をぶっかける、立派な政治活動となっています。

 ●『新京報』(2005/08/31)
 http://www.thebeijingnews.com/news/2005/0831/11@015116.html

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 この記事を胡錦涛派が繰り出したジャブとするのであれば、かつて当ブログで紹介した虚実定かならぬ日本人駐在員による中国人女性殴打事件(「斜陽の広東王国に村民のハンストに上海の情報戦」2005/09/01)と対をなすもののように思えます。上海の事件(反日を煽る内容の記事に対し公安当局が虚報認定)はアンチ胡錦涛派が仕掛けたか、その末端の血気にはやった連中が親分の思惑を超えて仕掛けてしまったか、でしょう。

 いずれにせよ、この『新京報』の歴史学者の記事と上海の反日煽動記事はどちらも9月3日の「抗日何たら記念活動」を大々的に報じるマスコミの勢いではるか彼方に押し流されてしまったような観があり、情報戦とすれば狙った効果を上げていません。

 ただ上海の反日煽動記事は「鉄砲玉」のようなものですが、『新京報』の記事は歴史学者に政治勢力の「後台」(後ろ盾)がなければ恐ろしく勇気のある発言だと思います。学者生命を絶たれるリスクが伴いますから。

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 被害者水増し批判は、「歴史は歴史として扱うべきだ」(政治の道具ではなく)という歴史学者としての良心の発露かも知れませんし、文化大革命のような風潮に流れることへ警鐘を鳴らすものとみることもできます。

 また「大きいことはいいことだ=効率無視で規模優先=GDP成長率信仰」という現状を批判した胡錦涛の「科学的発展観」にも沿う内容で、極めて真っ当なものです。ただそれで済ますことのできる内容かどうかは、この記事に対する批判が出るかどうかによります。共同通信では、

「誇張の例として、遼寧省瀋陽の博物館が中国戦線で200万人の日本兵が死亡したとしているが実際は45万人だったことなどを挙げた。中国の軍人の死傷者数についても『一致した定説はない』と言い切った」

 という部分を実例として引いているのですが、実は原文にはそのすぐ後に最も重要な部分があります。

「中国戦線で死亡した日本軍は200万人ではなく、45万人前後で、第二次大戦における日本軍の総死者数の20%前後だ。抗戦による中国側の死者は3500万人ではなく2200万人前後で、ソ連(の死者数)より2700万人も少ない」

 という一節、共同通信がこれをスルーしたのは行数制限のためかどうかはわかりませんが、「2200万人」とは江沢民が言い出した「3500万人」という定説(笑)に異を唱えるものです。9月3日の「抗日何たら記念活動」における胡錦涛演説でも「3500万人」を踏襲しています(ただし『新京報』の記事は「死者3500万人」、胡錦涛演説では「死傷者3500万人」)。

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 言うなれば中共政権の定説に真っ向から反論するものですが、これによって史学界に論争が起こり、それが注目を集めることで、行き過ぎた「反日」が相対的にトーンダウンするとすれば胡錦涛側の思惑通りの展開、になると思います。

 風当たりが強すぎると胡錦涛は平気で切り捨てることもあるでしょうから、記事を書いた王錦思さん、血祭りに上げられなければいいのですが(笑)。ただ私たちは、この「2200万人説」にしても水増しされていないという保証はないことを忘れてはいけないと思います。


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 最後に江沢民の序列2位の件、こういう内情については私たち部外者には何もわからず、結局は憶測するしかありません。ただ前回と少し違うことを書きますと、「序列2位=甲斐性なしの証」なのかも知れません。

 私は以前から「江沢民=甲斐性なし」としてきました。昨年9月の四中全会で軍権を握るポスト・党中央軍事委員会主席から引退し、それを胡錦涛が継承する際、制服組を別とすれば、江沢民は腹心の部下(例えば曽慶紅)を同委に滑り込ませることすらできなかったのが好例です。

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 で、「序列2位=やっぱり甲斐性なし」というのは、小粒ゆえに序列に頼らなければならないという意味です。神様や皇帝のような「誰もが認める絶対的な存在」ではなく、「序列2位」という相対的なモノサシを用いないと出て来られない。

 トウ小平であれば序列は無用、ただの党中央委員となっても自他ともに認める最高指導者だったでしょう?江沢民は小粒ゆえにその真似ができないから、「序列」というものにすがるしかないのかな、という感想を持ちました。

 ただし、現役の指導者も江沢民同様、小粒なんですね。だから「序列」に関して綱引きが行われて、江沢民をナンバー2に置くことを許してしまった。この点、胡錦涛派の勢力は今年3月の全人代(全国人民代表大会)時点よりもかなり衰退した、あるいは頽勢に立たされている、といった印象が強いです。


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 以上、「wnm」さん、ショボい回答でお役に立てず、本当に申し訳ありません。


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 【※1】URLが長かったのでヤフーに出た同じ内容のものに改めました。


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 【追記】
書き漏らしましたが『新京報』の抗戦死者数の件、エントリーで引用した部分で「中国戦線で死亡した日本軍は200万人ではなく、45万人前後で、第二次大戦における日本軍の総死者数の20%前後だ」というのも尋常ではありませんね。要するにいま党中央が連呼している「対日戦争の主役は中国」「対日戦争において中国は中心的役割を果たした」とかいう話を、「20%前後」という数字でバッサリ斬って否定していると読むこともできます。少なくとも『新京報』のこの記事に反感を持った向きはそう感じることでしょう。(2005/09/08/15:42)



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 江沢民が出てきましたね。

 いや他でもない9月3日の「抗日何たら記念イベント」のことです。胡錦涛が記念演説を行いました。その場に出席した要人の名前もズラリ。その筆頭、つまり胡錦涛に次ぐ序列ナンバー2の位置に江沢民の名前がありました。

 下記URLはそれを伝える『人民日報』(2005/09/04)一面のPDF版です。ある意味節目になるかも知れませんので、こういうものはとっておく方がいいかと思います。

 http://www.people.com.cn/pdf/200509/04/0904A1.pdf

 実は大きな流れの話をしたいのです。江沢民の出現もその文脈で語るべきなのですが、いまちょっと手が離せない(仕事優先)ので遺憾ながら手近な話題にとどめます。上っ面をなぞるだけになるかも知れませんが、まあ予告編のようなもの、ということで諒として頂ければ幸いです。

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 さて江沢民。表舞台に姿を現わしたこと自体がニュースですけれど、やはり「序列2位」というのが眼をひきます。

 ●江前主席、今も序列2位か=肩書なくても扱い異例-中国人民日報(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050904-00000036-jij-int

 【北京4日時事】4日付の中国共産党機関紙・人民日報は、抗日戦争勝利60周年を記念した3日の胡錦濤国家主席の演説を1面トップで報じた中で、記念式典に出席した江沢民前国家主席を胡主席に次いで2番目に紹介した。江氏は昨年9月、共産党中央軍事委員会を退任、今年3月には国家中央軍事委からも退き、公式な肩書は何もなくなったが、異例の扱いとなった。3日の新華社電も同様の序列で伝えている。(2005/09/04/15:02)

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 確かに異例です。中国について報じる海外マスコミにとっても、常識的に考えても、ひいては中国の一般庶民にとっても、これは異例でしょう。

 ただ『人民日報』は中国共産党中央の機関紙です。そこでこの序列が明らかにされたということは、一般庶民や末端幹部はどうあれ、党上層部においてはこの序列がいちばんしっくりくる、ということなのでしょう。異論もあったかも知れませんし、事前に様々な綱引きが行われたのだろうと思いますが、何はともあれこのランキングに落ち着いた、と。

 とりもなおさず、これは党上層部における主導権争いの現状を反映したものです。肩書がなく、事実上引退した江沢民が序列ではいまなお胡錦涛に次ぐナンバー2に収まっている。それが党上層部の最大公約数的感覚(あるいはある政治勢力が押し切った結果)として「一番しっくりくる形」なのですから、野次馬である私たちはやはり「異例」と言わざるを得ません。そして中共は、上層部において政治的に何事かが進行しつつあると外部から勘繰られても仕方がありません。

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 「いまなお胡錦涛に次ぐナンバー2に収まっている」と迂闊に書いてしまいましたが、果たして「いまなお」なのかどうか。ここ半年、あるいはもう少し長い時間、例えばここ1年近くといった流れの中で、紆余曲折を経つつも、江沢民がナンバー2に居座る状況がようやく形成された、と言うべきかも知れません。

 3月の全人代(全国人民代表大会)では、国家中央軍事委員会主席から引退するという花道イベントがありながら、ついに姿を見せなかった江沢民。それがここで出てきたというのは、半年近い党上層部における主導権争いを経て、全人代当時には望めなかった状況、例えば出てくるに相応しい格式(ナンバー2という序列)が用意されたからなのかな、と私は考えます。

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 この状況が国家主席+党総書記+党中央軍事委主席を務める序列第1位・胡錦涛にとって望ましいものとは当然ながら考えにくいです。下のニュースはそれを裏付けるものといっていいかも知れません。

 ●胡錦濤・中国国家主席、胡耀邦・元党総書記を復権か(ロイター通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050904-00000609-reu-int

 【北京4日/ロイター】中国の胡錦濤・国家主席は最近、改革開放路線を指揮したが失脚し1989年4月に死去した胡耀邦・元党総書記を復権させる決断をした模様だ。11月20日に人民大会堂で、胡耀邦氏の生誕90周年記念式典が共産党主催で行われるという。胡耀邦氏の家族に近い筋と生誕記念式典の関係者が明らかにした。
 国民に人気のあった胡耀邦氏の追悼集会は、1989年6月の天安門事件に発展。中国の国営メディアでは今でも、その名はほとんど言及されない。
 ある関係筋は「胡錦濤・国家主席は、胡耀邦氏の名を借りることで、その政治的な資産を受け継ごうとしている」と述べた。(2005/09/04/20:41)

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 同様のニュースは香港紙でも流れました。元ネタはやはりロイター電です。

 ●『明報』(2005/09/04)
 http://hk.news.yahoo.com/050904/12/1g9lq.html

 そして今日の親中紙の筆頭格『香港文匯報』もこのニュースを掲載。ニュースが事実であることを中共政権が認めたといっていいでしょう。

 ●『香港文匯報』(2005/09/05)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0509050003&cat=002CH

 ――――

 なぜここで胡耀邦?ということですが、ロイター電のいう、

「(胡耀邦の)政治的な資産を受け継ごうとしている」

 というのは曖昧ですね。

 第一に言えることは、世代が異なるとはいえ、胡耀邦も胡錦涛も共産主義青年団(共青団=ユース共産党)人脈ということです。同じ系列の人脈に属するのです。胡錦涛は共青団を足場に主として党務ポストを重ねつつ抜擢されていった訳ですが、トウ小平はもちろん、胡耀邦も生前、共青団人脈の有力なホープとして胡錦涛を可愛がっていたのかも知れません。要するに、胡錦涛を頂点とする共青団人脈を改めて固め、気合を入れ直すといったところでしょうか。

 『明報』の報道ではこのほか、胡錦涛が今回切った胡耀邦カードのもうひとつの効用として、

「一部の自由派学者から賞賛されることを狙っているとみられる」

 としています。「自由派学者」とは、端的にいえば1989年の天安門事件の名誉回復を求めるような知識人ということでしょう。そういう側面があるかも知れませんが、それがどうした、権力闘争に何か効果あるの?といえば甚だ疑問です。

 ――――

 で、私にはもうひとつの見方があります。胡耀邦を持ち上げることで、長老たちや物故した元老の子女などからの支持を強めよう、あるいは関係修復を図ろうとしているのではないかということです。むろん、何の根拠もないのですけど。

 長老というのは胡耀邦と同時代(80年代)に第一線にいた人物、もはや現役を引退して80代から90代になろうかというところですが、元々は胡錦涛にとって有力な支持母体であったこの勢力が、今年1月の趙紫陽・元総書記の死去に伴うゴタゴタ(生前の事蹟の再評価を求めた)で、胡錦涛との距離を置いたように思えます。物故した元老の子女はいま現役で中堅よりちょっと上のポスト(地方の指導者から閣僚クラス)まで昇格してきていますが、この2代目グループも趙紫陽死去当時、長老連と同じ立場をとりました。

 趙紫陽を再評価しろという要求は故人への友情云々というより、趙紫陽の業績を抹殺してしまうと、中国の改革・開放は長老たちが第一線にいた1980年代をすっ飛ばして、江沢民時代から本格化した、ということになってしまうからです。江沢民を子供扱いできる長老連にとっては許せることではありません。そういう関係から、胡耀邦を改めて持ち上げることで、胡錦涛は支持母体との関係修復を狙っているのではないかと愚考する次第です。

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 以上は事態のほんの一部分にすぎないのですが、いま時間的余裕がなくてこれだけしか書けず申し訳ありません。一度腰を据えてここ1年の流れを振り返りたいと思います。

 ちなみに、日本のマスコミは胡耀邦を「復権」としていますが、これはどうでしょう。確かに胡耀邦は総書記の座から引きずり下ろされましたが、ただそれだけで、党中央政治局員、さらに最高の意思決定機関ともいえる党中央政治局常務委員のポストからは外れておらず、趙紫陽のように公職追放・軟禁といった扱いを受けた訳ではありません。1989年4月に死去した時点でも「偉大なる革命家」などの様々な賛辞とともに、大がかりな国葬(あるいは党葬?)が行われています。

 また、その名を出すことが決してタブーでなかった証拠に、記事検索をかけると今年の様々な記事に胡耀邦の名前が散見されます(以前視察に来たとか)。さらに昨年秋、趙紫陽系の改革派だった田紀雲が胡耀邦を追憶する文章を発表しています。あれは確か江沢民の党中央軍事委主席引退により胡錦涛政権がスタートした(四中全会)前後だったかと思います。とすれば田紀雲の文章発表はそれ自体が政治活動であり、胡錦涛系列のささやかな示威活動だったのかも知れません。

 今回の胡耀邦カードも、胡錦涛系列によるより大がかりな示威活動というのが本質でしょう。それがどれほどの規模と勢いを持つものになるのかは興味深いところです(しまった紋切型)。


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 何といいますか、ここにきて川の流れが突如急になったような感じです。私にしてみますと当ブログで取り組むべきことが激増した(ちょっと大袈裟)といったところですが、とりあえず宿題を片付けることにします。前回、

 本来ならこういうときこそ「狗仔隊」(パパラッチ)と諷される香港プレスの潜入取材に期待したいのですが、それもなし。……というより香港は香港の事情で目下大騒ぎの真最中、記者は深セン市周辺を駆けずり回っているところでしょう。

 と触れた「大騒ぎ」のことです。

 以前「重金属野菜」(2005/03/25)にて、工業廃水などにより土壌が汚染されたため、作物まで基準値をはるかに超えた、いわば重金属まみれの野菜が広東省で増えているとお伝えしましたが、今度はその「お魚編」です。香港のマスコミはここ何日もこの話題で騒いでいます。

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 ちょっと前に例のブタの連鎖球菌に感染して(とされています)四川省などで30人前後が死んだ奇病騒動がありました。安全宣言めいたものが当局から出されていますが、んなわきゃーない。たぶん現在進行形だろうと私は考えています。

 ちょうどいいタイミングで昨日の香港紙『明報』(2005/09/01)がこの問題……というより病死豚を含む無免許の豚肉解体がヤミ業者によって行われているという特集を組んでいます。

 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5ky.html
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5l0.html
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5l4.html
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5l6.html
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5l7.html

 舞台は香港に隣接する深セン市。驚くべきことに、同市内でスーパーなどで普通に売られている豚肉の3分の1が無免許解体によるもので、もちろん病死した豚肉もその中に入っているとのこと。ヤミ業者は近接する宝安、龍崗あたりに集中していて、無免許解体の約7割を占めるとされています。

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 ともあれ、先の奇病騒動で四川産豚肉の輸入が一時ストップされ、その後深セン市で病死した豚肉が市場に出回ったという情報も流れたことで、香港では豚肉屋さんが大打撃を受けました。

 今度はその魚バージョンという訳ですが、最初に火の手が上がったのはウナギでした。日本でも報道されましたが、広東省で養殖されているウナギから合成抗菌剤「マラカイトグリーン」が検出され、同省当局が輸出停止措置をとったというものです。詳しいことは私も知りませんがこのマラカイトグリーン、発ガン性物質で食品に含まれていてはいけないもののようです。日本向け輸出もストップされました。

 これを契機に、「一応養殖つながりだし」と香港の衛生当局が広東省で養殖されている淡水魚のサンプルをとってチェックしたところ、何とその一部からもマラカイトグリーンが検出されて大騒ぎに。というのも、香港の一般家庭で食卓にのぼる魚は淡水魚が中心で、一部は香港で養殖されているものの、大半は広東省からの輸入に頼っているからです。

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 豚肉騒動では輸入停止に踏み切ることが遅れて散々叩かれたこともあり、香港政府も今回はすぐさま広東省からの養殖淡水魚を御禁制の品に。……で、豚肉屋さんに引き続き、いまは魚屋さんが商売ガタ落ちで困っているところです。香港産を扱う店もこの状況下では消費者に信じてもらえません。中華レストランも値段の高い海水魚を淡水魚の代わりに出すしかなく、コスト上昇によりこの状況が続けば経営が苦しくなるということです。

 夫婦でやっている香港系ブログで最近この話題を配偶者(香港人)が取り上げ、

 ついこの間は「豚」がダメで、もっと前は鶏がダメで、結局、今は何を食べたらいいのでしょう!さあ、次は何になるんでしょう。恐いですね。

 ……と書いていたので私は、

 一番怖いのは「中国と地続き」ということではないかと愚考する次第。

 と茶化してみたのですが、全然シャレになってません。だって豚肉にせよ淡水魚にせよ、さらに鳥インフルエンザからあの中国肺炎(SARS)に至るまで、香港に厄災をもたらすのはいつも中国本土ではないですか。

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 まあ、魚類をノーチェックで輸入していた香港も香港ですけど。……ということで、今さらながらそのあたりを厳格にしよう、ということになりました。

 販売業者は抗議デモの決行をチラつかせ、当局の尻をつついてきます。食卓への影響も大きいので、焦眉の急は安全な養殖淡水魚の輸入再開。そのための緊急措置として、香港政府は安全な淡水魚の供給が保証できる養殖業者のリストアップを広東省当局に求めました。

 広東省衛生当局によって速やかに作成され、国家質検総局の御墨付きも得たそのリストは、8月29日に香港政府より発表されました。安全が保証された養魚場は合計18カ所。淡水魚の輸入再開に道が開かれたのです。

「国家質検総局の推薦する養魚場だから、安全基準を満たしているものと確信している」

 と香港食環署の梁永立・署長は胸を張って宣言しました。めでたしめでたし。

 ……と、そうならないから香港各紙の記者がここ数日、広東省や深センを駆けずり回っているのです。

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 これまで騒いできた流れから、マスコミとしては養魚場の写真を撮ったり経営者のコメントを取ったりして、一件落着のニュースに華を添えるのがセオリーというものでしょう。発表されたリストによると、18カ所の養魚場のうち、8カ所が深セン市内、残る10カ所が広東省内の業者でした。

 ところが、実際に現地へ行ってみた記者たちは仰天することになります。

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 ●養魚場の筈が埋め立てられて造成地になっていた。
 ●養魚場らしきものはあったものの、養殖はもう行われておらずすっかり荒れ果てていた。
 ●リストアップされた経営者から「誓ってウチは養殖をやっていない。この身にかけて保証する」と言われた。
 ●リストアップされていることを知らない業者がいた。
 ●養殖は行っているものの香港向けの淡水魚とは全く別種の小魚ばかりだった。
 ●養殖しているのが淡水魚ではなく、海水魚だった。
 ●養魚施設は残っているものの、営業を停止して久しいと聞かされた。
 ●業務用電話登録がされていないため現地へ足を運んでみると整った養魚場はなく、地元村民相手の細々とした養殖だけが行われていた。
 ●深セン市質検局はリストアップされた市内8カ所の養魚場のうち一部の存在を知らなかった。
 ●深セン市内にあるリストアップされた養魚場のうち、2カ所は営業免許を剥奪されていた。
 ●御墨付きの筈なのに安全基準を満たしていなかった。
 ●資料の提供を拒否された。

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 ……というのが、『蘋果日報』と『香港文匯報』(2005/08/31・2005/09/01)によるレポートで、他の香港各紙の報道も当然ながら同じようなものでした。

 開いた口がふさがらないというか、さすがに予想の遥か斜め上、まさに中国クオリティーと言うほかありません。『香港文匯報』によると、その「遥か斜め上」ぶりに呆然と立ちすくんだ記者の耳には、

「国家質検総局の推薦する養魚場だから、安全基準を満たしているものと確信している……している……している……」

 と、あの自信に満ちた香港当局者のコメントが改めて甦ったそうです(笑)。『蘋果日報』(2005/08/31)の大見出しは、

「粤官愚弄港官」

 というものでした。「粤」とは広東省のこと。つまり香港政府が広東省当局に愚弄された、という意味です。香港人の大陸(中国本土)及び大陸の中国人に対するある種の優越感や軽蔑する感情(汚い・臭い・粗雑・無知・垢抜けない・マナーが悪い……など)を踏まえると、この一見淡々とした6文字には「騙しやがったな」といった強い怒りと悔しさが込められていると思われます(笑)。

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 と、まあそういうオチでした、これは大変ですねえ、ジャンジャン。……とここで終わると思ったら大間違いです。

 今日付の香港各紙(2005/09/02)の報道によると、
アオハタからもマラカイトグリーンが検出されたというのです。こちらは何と海水魚。養殖つながりで検査してみたのかどうかは不明ですが、淡水魚に続いて海水魚もアウトということで、香港の関連業界には戦慄が走りました。

 クロ判定が出たのは大手スーパー「恵康」(ウェルカム)で販売されていた台湾産の養殖アオハタ。

「政府の認可する問屋から仕入れたものなのに、無念です」

 とは広報担当者のコメントです。ウェルカムでは直ちに全店からアオハタを撤去しましたが、当然ながらこの影響は海鮮料理店にも及びます。養殖アオハタに代わってアカマダラハタ(タイガーグルーパー)を出したりしているようですが、これもコストアップになるので長期戦になると苦しいとか。

 ともあれ台湾からのアオハタ輸入はストップ。ただアオハタは天然ものを含め、フィリピン、インドネシア、タイ、中国本土などから広く輸入されており、香港産もあります。とりあえずは衛生担当者が主要市場に足を運び、アオハタに限らず海水魚全般について検査を行うことになるそうです。

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 以上、今回のエントリーはこれで本当に終わりですけど、香港の魚騒動はまだ終息する気配がありません。これは大変ですねえ、ジャンジャン、であります。



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 いやー困りました。あるんですこういう日が。大ネタ小ネタが同じ日にわらわらと湧いて出て、こちらは対応し切れません。散漫になるのを承知の上で片っ端から手をつけていくことにします。

 まずは続報から、というより続報がパタリと途絶えてしまった件。広東省・梅州市の炭鉱事故(大興煤鉱・死者123名)の事後処理についてです。

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 前々回お伝えしたように、地元当局が法規に違反していない合法的炭鉱もヤミ炭鉱と一緒に、しかも機械・設備類ともどもドカーンと爆破してしまったことで、炭鉱経営者は借金王に、炭鉱夫(地元住民+出稼ぎ農民)は失業者に、また炭鉱相手の商売で生計を立てていた地元住民も揃って失業者になってしまいました。

 同じ広東省の清遠市や韶関市でも同様の措置が採られました。民衆の反応はどこでも同じです。経営者も炭鉱夫も地元住民も揃って抗議活動を展開。1万人規模の集団陳情や数千人が政府庁舎を取り巻いて座り込み、その過程で警官隊との激しい衝突があったり逮捕者が出たりしていました。そういえば北京の中央政府から派遣された特別調査チームが宿泊しているホテルに直訴に押し掛けて、警官隊に阻まれる事件もありましたね。

 で、こういう情報を甲斐甲斐しく報じていたのが『香港文匯報』です。親中紙つまり香港における中共の御用新聞なのに「民」の抗議行動などを積極的に取材し、梅州など各地元当局の横暴な措置の背後には広東省当局の強い支持があることを暴露。当局を悪人扱いしかねない書きっぷりが何とも意外で、これは中央政府と広東省の間に方針のズレや善後策についての見解不一致といった齟齬が生じているのではないか、と勘繰ったものです。

 ところが、この『香港文匯報』による抗議関連の報道が8月29日付を最後に全く途絶えてしまったのです。今までの流れからすると、この唐突な断ち切り方は「書くな」との勅命が天から降ってきたのでしょう。そうでなくても党上層部がグラグラして政情不安な上に、放っておいても官民衝突が起きている社会状況です。一揆を煽りかねない記事はけしからん、という声が出ても不思議ではないかと思います。

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 ただ、かといって抗議行動が一瞬にして鎮静化する訳でもなかろうに……と考えていたら、ようやく出ましたよ続報。それも香港紙ではなく国営通信社のサイト「新華網」です。要するに中国国内向けの記事ということになります。

 ●広東省安監局を査問・処分へ――大興煤鉱事故で(「新華網」2005/08/31)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/31/content_3427553.htm

 この報道によると、広東省安全生産監督管理局の胡建昌・副局長を筆頭に、その部下である譚均偉・処長、王鎮成・副処長が職務停止処分となり、取り調べ中とのこと。

「これによって規律違反及び違法行為の事実を徹底的に暴き出す」

 となかなか勇ましいのですが、多分これはトカゲの尻尾切り、つまり広東省当局が中央の追及を避けるために精一杯妥協して、累が上層部に及ぶのを回避した結果なんでしょうねえ。すでに事故現場である梅州市と興寧市の市長はそれぞれ停職のうえ取り調べを受けています。玉石ともに砕く無理無体な措置の後押しをしておきながら、省当局はかばい切れなかったのではないでしょうか。

 葉剣英、そしてその息子である葉選平と2代続いた強力なボスのもと、中央による介入を容易に許さず、一時は独立王国とまで言われていた広東省が北京に攻め込まれ、内堀まで埋められている状況には隔世の観があります。一同は収賄容疑などでお縄になりそうな気配です。

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 ところで抗議活動は?というところですが、上記新華社電ではもちろん言及されておらず、『香港文匯報』も沈黙したままです。前述した政情不安や社会状況の悪化だけでなく、炭鉱整理及び官民癒着の根絶が温家宝・首相の陣頭指揮のもと呼号され、全国一斉に行われているという理由もあるでしょう。

 それでも、職を失い、路頭に迷いかねない、もう失うもののない一群が梅州、清遠、韶関などの地に確実に存在しているのです。恐らく万単位になるであろうその人々のケアをどうするか。というより果たして手当てできるのか。炭鉱整理だの官民癒着云々だのと掛け声だけ華々しくても、それによって生み出される大量の失業者をケアできなければ社会状況はいよいよ不穏になります。そうでなくても失業問題は政府の頭痛のタネなのですから。

 本来ならこういうときこそ「狗仔隊」(パパラッチ)と諷される香港プレスの潜入取材に期待したいのですが、それもなし。……というより香港は香港の事情で目下大騒ぎの真最中、記者は深セン市周辺を駆けずり回っているところでしょう。

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 それを後回しにして広東省ネタをもうひとつ。広州市番禺区の魚窩鎮・太石村で昨日(8月31日)、選挙による村民委員会主任(村長)選出を求める村民たち約80名が番禺区政府の正面玄関前に座り込み、抗議のハンストに突入しています。他に村民数十名も近くに座り込んでおり、事態に驚いた地元当局は警官多数を出動させてリーダー格の村民3名を逮捕。

 抗議行動に参加した村民によると、村民委員会委員は選挙で選ばれることが法的に保障されているのに、太石村では何度抗議しても村委員会によってそれが容れられず、訴訟を起こしても時間ばかりかかるため、やや過激ながらもハンスト、座り込みといった方法を選んだそうです。

 ●香港紙『明報』(2005/09/01)
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5kk.html

 太石村は番禺区ですから広州の郊外型農村といったところでしょう。で、都市部の拡大に伴い、この村も御多分にもれず土地収用にまつわるトラブルが頻発しており、村民と開発業者が衝突するといった事件も以前から発生しているようです。

 こうなるとよくある話に落ちる訳ですが、要するに村委員会が真ん中に立って甘い汁を吸っているのではないかという疑惑が持ち上がります。ところが会計帳簿を見せろと迫った村民に対し、村委員会のトップである主任はこれを拒否。このため村民は主任罷免を決議し、主任改選要求を区の担当部門に求めたもののキッパリと断られたため、訴訟は時間がかかるとしてハンストに及んだとのこと。

 村民は急いているようでもありますが、これはどんどん迫ってくる都市化の波に煽られたというところでしょうか。ちなみに村委員会主任を選挙によって選出することは「中華人民共和国村民委員会組織法」が根拠となっています。

 村民が
「民主をよこせ法治をよこせ」などと叫ぶために番禺区政府は過敏になってしまったのかも知れません。上述した通り警官隊を繰り出してリーダー格3名を逮捕。あとは座り込んだ村民と人の壁を作る警官隊の睨み合いとなっており、昨日午後時点では事態は終息していなかったとのことです。

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 香港の騒ぎも気になるのですが先に大ネタの方を。上海を舞台にした日本人を巡る謎の事件です。上海市公安局長寧分局の報道官がきのう(8月31日)、それに関する声明を発表しました。

「8月30日に新浪網(SINA)など商業系サイトに転載された『民主と法制時報』王敏記者による記事『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実から著しく逸脱した内容である。」

 ●『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実に反したもの(「解放網」2005/08/31)
 http://www.jfdaily.com.cn/gb/node2/node142/node200/userobject1ai1048311.html

 全く同じ内容の記事が昨日夜までに、「新華網」や「人民網」(人民日報電子版)、それに「新浪網」など大手ポータルのニュースサイトに転載されました。「解放網」ではタイトルにボールド(太字)をかけて重要ニュース扱いでした。異様です。

 そんな事件あったの?と思ってダメ元で探したら幸い残っていました。

 ●「上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打」
 http://news.sina.com.cn/s/2005-08-31/10116828922s.shtml

 かなり長い記事です。ニュースというより雑誌の記事といった印象です。

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 日本人ビジネスマンと中国人ホステスのストーリーなのですが、実名や会社名はここでは伏せます。仮に日本人男性を「J氏」、中国人女性を「C嬢」としておきます。

 痴情のもつれめいた話なのですが、元記事と上海公安局の声明は内容がかなり異なります。

 まずは元記事から。

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 ●元記事(長いので超濃縮版)

 日本企業の駐在員であるJ氏が自宅近くの日本人相手の和風クラブに通ううち、C嬢を見初めて指輪などのプレゼントなどを贈った。ある晩来店した際に、酔ったJ氏はC嬢の手をぐっと握るなり「結婚してくれ」とプロポーズ。

 酔った勢いだろうと気にも留めなかったC嬢だが、その後J氏が本気とわかり、その気のなかったC嬢は「自分はもう結婚していて子供も二人いる」と話してJ氏に諦めさせようとする。

 ところがJ氏のアプローチがどんどん執拗なものとなり、とうとう7月11日午前1時ごろ、帰宅しようと店から出てきたC娘に待ち伏せていたJ氏が言い寄り、口論に発展したうえJ氏がC嬢に対し殴る蹴るの暴行を加え、止めに入った警備員にも怪我を負わせた。

 クラブ内にいた同僚たちは息をひそめ、誰も警察に電話してくれない。C娘は重傷を負い、J氏は勢いに任せてC嬢のバックを取り上げてタクシーに乗り込み、その場を去った。

 C嬢は事件を警察にも届けたが調書にはJ氏との関係を「恋人」と書かれてしまう。その後C嬢は元のクラブに戻ったものの同僚たちからよそよそしく扱われ、冷たい眼で見られる。

 意を決したC嬢は弁護士を伴って再び警察署を訪れ起訴手続きを行うも、「証拠不十分」などの理由で却下。しかし記者が取材を進めるうちに、現場近くの監視カメラ映像を入手。ただしカメラの角度の関係で事件の全貌は捉え切れていなかった。

 警察はJ氏に「警告」の行政処分を課して事件を片付けた。文末の記者のコメントは「日本人J氏による暴行は複雑な事件でもないのに、J氏は中国の法律を無視して平然としているのは空恐ろしいことだ。この事件の進展には今後も注目していく」。

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 ●上海公安局の声明(一部省略)

 7月11日午前11時ごろ居酒屋勤務のC娘が新虹橋治安派出所を訪れ、同日午前1時ごろ日本人J氏に殴打されるなどして怪我を負わされたので捜査してほしいと届け出た。

 当公安局が調査し確認したところ、C娘は居酒屋でJ氏と知り合い、ほどなく恋人の関係になった。事件が発生するまでに、J氏はノートパソコン、時計、ダイヤの指輪などをプレゼントしており、C嬢が日本語を習う学費もJ氏が負担した。

 7月10日夜、居酒屋に来店したJ氏に対し、C嬢は交際を終わらせるため、実は自分には夫がいて双児の子供もいると嘘を言った。J氏はそれを聞いて立腹し、自分が感情を弄ばれ騙されていたと考えた。

 そして7月11日午前1時ごろ、J氏は自分の部屋に来てちゃんと説明してくれと頼んだものの断られ、怒りに任せてC嬢を殴打し、勢いでC嬢のバックを自宅に持ち帰った。このバックは当日のうちにC嬢に返却された。また病院の診断によればC嬢の顔の傷はごく軽いものだった。

 事件が痴情のもつれに端を発しており、C嬢の怪我もごく軽いものであることから、当公安局は「治安管理処罰条例」の関連規定に基づいて調停を試みたが、肺賞金額が折り合わず和解は不成立。このため「治安管理処罰条例」の関連規定に拠って、J氏に「警告」の処罰を下した。

 当公安局は「上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打」の記事文中において二人が恋人関係ではないとした点、J氏がC嬢に強盗行為(バック持ち去り)を働いたという点、またC嬢に重傷を負わせたとした点、警察側の下した処分が不当に軽いものだとしている点などが事実から甚だしく逸脱しており、法律についても事実に反している。

 このため当公安局はここに事実を証明し、明らかにした次第である。広範なるネットユーザーは虚報に踊らされないようにしてもらいたい。また、当公安局は該当記事を執筆した記者に対し、法的責任を追及することになるだろう。

 ――――

 新聞記事になるくらいですから、上海の日本人社会では周知のことなのかも知れませんね。とりあえず注目すべきは、「元記事」の文末には
「日本人が中国の法律を平然と無視し」云々とあるのに対し、上海公安局の声明では「広範なるネットユーザーは虚報に踊らされないようにしてもらいたい」とわざわざクギを刺していることでしょう。

 しかも公安局の反応の速いこと速いこと。「新浪網」に元記事が掲載されたのが
「2005/08/31/10:11」、これより早い時間に掲載したニュースサイトもあるのかも知れませんが(公安局も問題の記事は30日からネットに流れたとしていますし)、これに対して記事の内容を虚報とした上海公安局の声明は「2005/08/31/12:42」には地元の「解放網」に出ているのです。

 事実はどうあれ、本質は「火付け役」と「火消し役」による丁々発止の情報戦のようですね。私は4月末に上海での反日デモ+プチ暴動を真っ向から斬って捨てた『解放日報』の署名論評が、一度は「新華網」や大手ポータルに掲載されながら短時間で削除されていったことを思い出しました。

 小泉首相による「八・一五靖国参拝」がなかったので元々そこに狙いを定めていた「火付け役」も肩透かしを喰ったのかも知れません。そこで今度は9月3日の抗日何たら記念日をターゲットに仕掛けてみた、というところでしょうか。もちろん「反日」は前回同様、党上層部における主導権争いのためのお題目、つまり政争の具にすぎないでしょう。もちろん4月のときのように、騒ぎの当事者たちはそんなことを考えたりもしないのでしょうけど。

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 これはちょっと面白くなってきましたね。第二弾も是非お願いします(笑)。

 ……あ、香港の騒動を忘れていました。如何せんもう一杯一杯(体力も字数も)なので宿題ということにさせて下さい。






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