日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 忙しいったらありゃしません。報道量が倍加する毎年恒例の政治イベント・全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)の開催を来月に控えたこの時期だというのに、中国関連の刺激的なニュースが次々と飛び込んできて、こちらは大わらわ。野次馬なんですけど「もう少し休ませろ」と文句も言いたくなります。

「尖閣諸島問題で5月に台湾の民間団体が上陸作戦。中国と香港からも活動家が参加か」

「日本が国連改革に乗じて、安保理常任理事国入りに再挑戦へ」

 という、これなんてパーフェクトなコンボが先週成立して、さてどうなるかなとこちらはwktk。「反日」フラグが立つことで、胡錦涛の敵対勢力がこれをネタに政権を揺さぶろうと暗躍するでしょうし、ネット世論を中心に庶民レベルでの「沸騰」の可能性も大。

 野次馬としては2005年春の反日騒動を想起せずにはおれません。政争勃発はもちろん、当時よりもんのすごーく悪化しているいま現在の中国の社会状況下で「沸騰」が起きたら一体どうなってしまうのだろう、という化学変化への期待感も膨らむというものです。

 ところがそう思っていた矢先に、幸か不幸かロシアによる中国貨物船撃沈事件が発生。

 「反日」の旗振り役である電波系対外強硬派メディア、『環球時報』や『国際先駆導報』は「反日」を放り出してこのニュースに飛びつきました。ネット世論も同様です。そりゃそうでしょう中国貨物船が理由が不明瞭なままロシアの巡視船に銃撃され撃沈し、しかも中国人船員に死者が出ているのですから。

 ただし当初はともかく数日眺めていると、対日問題に比べ、ネット世論の反応ぶりはいまひとつ勢いに欠ける感がありました。日本が相手であれば、

「東京を原爆で焼き払え」

「日本人の男は全員殺して女はレイプだ」

 みたいなどぎつい書き込み、これは中国語が即物的な表現に傾いていることにも起因するのですが、まあこういった言辞が掲示板を埋め尽くします。ところが今回の貨物船撃沈に対するロシアに向けての書き込みには、これほどの勢いがありません。

 そもそも悪意をこめてロシア人のことを「北極熊」と読んだりしています。「日本豬」とか「小日本」という明らかに侮蔑的な表現とはちょっと違います。ロシアとロシア人に対する畏怖のようなものが「北極熊」からはにじみ出ているように思うのです。なに遠慮してんでしょーね。ひょっとしてロシア人女性には食指が動かないのでしょうか?……おっと筆が滑り過ぎた。

 あるいは、反ロ気運のヒートアップぶりに勢いが欠けるのは、江沢民の始めた愛国主義教育で「反日」は叩き込んだけど「反ロ」はやらなかったから、なんてのも一因だったら嫌ですねえ。

 ――――

 中国当局(外交部)の反応も元気に欠けます。

「ロシア側に急ぎ接触した」

「ロシア側は中国のこの問題に対する関心について高度に重視している」

 という、『環球時報』や『国際先駆導報』より一歩遅れた初動から、

「ロシア側の対応ぶりには不満だ」

「貨物船撃沈についてロシア側の説明を受け入れられない」

 といった姿勢のまま、昨日(2月24日)の外交部報道官定例記者会見では、

「われわれはこの事件に深刻な関心を寄せている」

「すでに何度もロシア側に接触している」

「ロシア側は船員に死傷者が出たという悲劇的な結果に遺憾を表明した」

「ロシア側は中国側へ事件の調査状況を早急に通知するとしている」

「いまはその結果待ちだ」

 と、どうも及び腰。長年の交渉によってロシアからの20年に及ぶ石油供給契約が成立したということもあるでしょうし、対米関係、対ロ関係のバランスに対する配慮もあるでしょう。蠢動すべき対外強硬派などアンチ胡錦涛側もそれに同調しているのかも知れません。それから、「北極熊」という言葉が象徴するような、ロシアに対するそこはかとない畏怖のようなものをやはり指摘しておきたいところです。

 ●「新華網」(2009/02/19/22:22)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/19/content_10852065.htm

 ●「新華網」(2009/02/19/22:22)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/19/content_10850660.htm

 ●「新華網」(2009/02/19/22:22)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/19/content_10851635.htm

 ――――

 李輝・外交部副部長がロシア大使への不満表明を行ったりもしているのですが、ロシア側は、

「発砲は合法的行為」

「貨物船の沈没と乗組員多数遭難の責任は同船船長が追うべきもの」

 などと取り付くシマもなし。船長は刑事起訴される見通しですが、日本も尖閣問題における民間団体の領海侵犯に対しては、追い払うのではなく拿捕して日本の法律でサクサクと裁くことが必要ですね。実効支配の「実」をあげるべきです。

 まあ今回の事件、日本に撃沈されたなら取り返しのつかない騒ぎになっていたでしょうが、その騒ぎっぷりを受け止められる余裕がもはや失われているために、中国社会が大崩壊へと進む可能性もありました。その最悪のシナリオを、一方の当事者が日本でないために回避できたのは幸いというべきかも知れません。

 ●「新華網」(2009/02/19/19:15)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20090220/ca51915c.htm

 ●「明報即時新聞」(2009/02/20/21:39)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20090220/ca52139c.htm

 ●「新華網」(2009/02/19/17:35)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/19/content_10850660.htm

 ●「新華網」(2009/02/19/22:22)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/19/content_10852065.htm

 ●「環球網」(2009/02/20/15:12)
 http://world.huanqiu.com/roll/2009-02/379901.html

 ●「環球網」(2009/02/20/15:18)
 http://news.sina.com.cn/c/2009-02-20/151817256058.shtml

 ●「新華網」(2009/02/24/19:33)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-02/24/content_10886998.htm

 ――――

 そもそもネット世論がファイヤーしないようにするためか、この事件に関してはその内容にも関わらず新華社発の情報が少なく、また『人民日報』など機関紙系の筋の通った全国紙での扱いもそう大きくはありませんでした。情報の多くは例によって『環球時報』や『国際先駆導報』からもたらされ(その大半は独自取材)、

「ロシア側は弾庫がカラになるまで撃ちに撃った」

 というようなセンセーショナル見出しが躍ったこともありました。大手ポータルのニュースサイトがこれらをほぼ逐一転載しているため、電波系メディアの発した情報でも一応全国ニュースとなってはいます。

 ただ『国際先駆導報』などはその一方で、「中ロ人民は双方とも冷静に向き合うことが肝要」などといった火消し記事も掲載しています。大手ポータルでも「新浪網」の関連報道では船主である香港企業側の声明を掲載するたびに、

「当声明を掲載したのはより多くの情報提供のためであって、その内容を事実と認めたことを意味する訳ではない」

 という断り書きをわざわざ文末に付しています。……あ、騒いでいる張本人の「環球網」にも同じ文言がありました。恐らく当局の差し金か、当局の意を汲んでの前代未聞ともいえる但し書きなんでしょう。こうなってくると、撃沈された貨物船がクロだった可能性も勘繰りたくるというものです。

 ともあれ。「尖閣問題&常任理事国入り再挑戦」という反日ネタを吹き飛ばした北極熊の大暴れについて、中国のネット世論は鎮静化の方向へと進みつつあります。むろんこれは当局の何らかの圧力が奏功しているというだけでなく、フランスの例の事件、すなわち第二次アヘン戦争で北京に進攻した英仏連合軍が略奪した文化財が中国側の反対を一蹴してオークションに出されるというニュースへと中国国内メディアの目先が転じているからでもあります。

 という訳で次回はたぶん、おフランスということになるのでしょうか。この問題についても火消し記事が出始めており、多くを期待するのは望み薄なんですけど(笑)。

 いよいよ政治的に敏感な時期に入りつつある中国国内の問題になかなか入っていけないので困ります。

 ●「新浪網」(2009/02/23/10:47)
 http://news.sina.com.cn/c/sd/2009-02-23/104717270565.shtml

 ●『国際先駆導報』(2009/02/23/10:59)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2009-02/23/content_10874616.htm

 ●「環球網」(2009/02/19/12:32)
 http://world.huanqiu.com/roll/2009-02/378299.html

 ●「新浪網」(2009/02/23/18:12)
 http://news.sina.com.cn/c/2009-02-23/181217272168.shtml

 ――――

 なお、今日2月25日はチベット暦の元日にあたりますが、以前紹介したように、中国国内のチベット人の間では「正月を祝わない」運動が広く行われる可能性があります。在台湾のチベット人たちもこれに同調しているようです。

 では日本は?ということになるので、伝手があるので電凸してみました。権威筋によるとこの運動は「目指せチベット独立」を標榜する(ダライ・ラマの主張より遥かに踏み込んだ)「チベット青年会議」が中心に行っているため、TSNJなどチベット関連団体が足並みを揃える可能性は低いとのことでした。

 それにしても「正月を祝わない」という、民族にとっては晴れのイベントであろう大切な伝統行事を敢えて自ら拒否する、という勢いと断固たる決意は、中国のネット世論とは全く別次元。比較にならない民族の怒りと悲しみの激しさを感じ、そこまで思い切ることにある種の戦慄を覚えずにはいられません。

 ●「明報即時新聞」(2009/02/22/20:57)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20090222/ca72057c.htm





コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (90)
2009-02-25 20:53:50
日本とロシアに対する温度差の元は、一応日本に対しては「勝利」しているのと、基地外教育の抗日映画で勝利するシーンを子供の頃から刷り込まれているのに対し、ロシアにはまともに対決できたことがないからではないでしょうか。フランス程度の領土を取られたままだといいます。
確か去年ロシアの極右にシナ人が襲われたはずですが、シナの反ロデモもないですし。
…もっとも某巨大掲示板でもロシアは「おそロシア」と呼ばれていますし、シナの指導者を笑ってもプーチン首相を揶揄する書き込みはありませんから、非常に不気味な印象を与える国であることは確かですね。
 
 
 
また広東か!(て、ちょっとちがうか; (?!)
2009-02-26 09:48:02
アメリカの商務長官が、中国系のゲイリー・ロック氏に決まったようですね。
両親は、広東省台山市の出身だそうで、彼は移民二世です。
この不景気にして「商務」ですからね・・彼のお仕事がどういう方向に展開して行くんだろうか・・・気になります。
 
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