中国の党大会ネタを優先してきたため鮮度はちょっと落ちたかも知れませんけど、ミャンマー問題いきます。
御存知のようにミャンマーといえば軍事政権。それを長年支援してミャンマーを属国まがいに仕立て上げたのが中国です。先の国連安保理における議長声明採択でも、反発を重ねて事実上「非難声明」を骨抜きにしてしまいました。
こういう構図の全てがミャンマーの一般市民に理解されているかどうかはわかりませんが、庶民の対中感情というのはどういうものなのか気になります。ええ、私がワクテカではないといえば嘘になります(笑)。
マレーシアやインドネシアでは植民地時代に華僑が白人の手先、つまり買弁として活躍してきたために、独立後、いや現在に至っても現地住民のの華僑に対する感情は良好とはいえないようです。特にインドネシアでは約10年前にも反中暴動が起きて華僑が血祭りに上げられています。
マレーシア同様に英国の植民地だったミャンマーではどういうものなのか、ちょっと気になっているのです。フフン♪……じゃなくてwktk。
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ともあれミャンマーの古都・マンダレーで10月7日未明、正体不明の武装グループが同地の中国総領事館を銃撃するという事件が発生しました。
ノルウェーのビルマ語国際放送DVB(ビルマ民主の声)による報道を香港紙『明報』が伝えたところによると、中国総領事館を襲撃したのは武装した男性の一群。ただし銃撃はピストルによるものだったらしく、その他の装備など一切が不明なため「武装グループ」と表現していいのかどうか迷うところです。
発砲による死傷者はなし。現地住民によると、事件後にミャンマー軍が駆けつけて中国総領事館前に土嚢を積むなどして警備態勢を敷いた模様。
●『明報』電子版(2007/10/10/17:50)
http://www.mpinews.com/htm/INews/20071010/ca31750c.htm
この事件については香港の親中紙『香港文匯報』も翌日に似た内容を報じています。というか事件そのもについては『明報』の報道をそのままパクったような感じです。
●『香港文匯報』(2007/10/11)
http://paper.wenweipo.com/2007/10/11/CH0710110014.htm
で、日本ではこの『香港文匯報』による報道の一部が報じられています。共同通信のお仕事です。
●中国総領事館に発砲か ミャンマー(MSN産経ニュース 2007/10/11/13:05)
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/071011/asi0710111351000-n1.htm
11日付の中国系香港紙、文匯報は、ミャンマー第2の都市マンダレーで7日早朝、何者かが中国総領事館に向かって発砲したと報じた。けが人などはなかったというが、ミャンマー側は総領事館前に軍を派遣するなど警戒を強化しているという。
報道によると、発砲したのは男とみられる。犯行動機は不明だが、中国政府が長年、ミャンマー軍政を支援していることから、現地で反発が広がっているとの見方が出ている。(共同)
「犯行動機は不明だが、中国政府が長年、ミャンマー軍政を支援していることから、現地で反発が広がっているとの見方が出ている」
というのは共同通信が付け足したもので、元記事にはない内容です。……その一方で、『明報』電子版や『香港文匯報』が報じているものの、共同通信電では省かれている部分があります。
「中国総領事館への銃撃事件によってマンダレー在住の華人の間にはすでにパニックが発生。この事件を発端に地元の華人が襲撃される事態に発展することを恐れ、一部では中国語の看板を撤去したりする動きがみられる」
という一節です。現場の息づかいや脅える華人の様子が伝わってくるような描写だと思うのですが、この部分は日本では報じられていません。
ちなみに、当の中国では銃撃事件が発生したことは余り報道されていません。外交部報道官もこの件には一切ふれていません。ただ香港やシンガポールの親中紙の電子版などから情報が中国国内に流れているとは思いますし、香港の親中紙から引用する形で報じている中国国内メディアもあります。香港紙の場合は、上述したインドネシアの華僑排斥暴動で香港人に死者が出ていることから敏感に反応したのでしょう。
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やはり香港紙である『東方日報』(2007/10/11)の報道によると、事件と軍隊の出動(中国総領事館の警護)によってマンダレーには緊張した空気が走り、地元の華人社会はパニックに。さらなる襲撃がある際に目標にされることを恐れ、華人の経営する商店では慌てて中国語の看板を自ら撤去する動きがみられた。……と、やはり同じようなことが書かれています。
●『東方日報』(2007/10/11)
http://orientaldaily.on.cc/new/new_b01cnt.html?pubdate=20071011
似たり寄ったりになるのは恐らくどの新聞の情報源もDVBだからでしょう。ただ中国語での表現まで瓜二つなのは、第一報の『明報』の記事を下敷きに他紙が記事を書いているからかと。香港では新聞記事のパクりなんざ日常茶飯事ですから。
ただし『東方日報』の記事にはDVB記者のコメントとして、
「この事件は、ミャンマー人が軍事政権とそれを背後で支援している中国に対し非常に憤激していることを示すものだ。反政府デモが軍事政権を動揺させられないでいることで、怒りの対象が華人へと移ることを懸念する」
という一節がついています。さらに元ミャンマー駐在の中国外交官の、
「もしミャンマー人が華人への怒りを抑制できなれば、かつてのような中国とミャンマーの間の紛争が再発する恐れがある」
というコメントも紹介。何だか根深い因縁があるようなのですが、私は勉強不足でこのあたりはお手上げです。
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この『東方日報』は今回の一件ではなかなか働き者。当の駐マンダレー中国総領事館にも電話取材を試みています。電話に出た女性職員は「ないないないない」と繰り返し事件を否定した上で、
「報道は誤り。そういう事件は起きていません」
とバッサリ。ではミャンマー当局による警備が強化されたのは事実か、と記者がさらに粘ると、今度は相手が男性の声に替わり、替わったと思った矢先にすぐ電話を切られてしまったとのこと。
その後の事態の推移に興味津々なのですが、如何せん続報がありません。中国外交部の報道官は、
「ミャンマーのことはミャンマー人民が自ら解決すべきだ」
という趣旨のコメントを発表しています。むろんこれは軍事政権を非難せんとする欧米への牽制球なのですが、むしろその言葉通り、ミャンマー在住の華人についてはミャンマー人民に処分を任せてしてしまうのもアリだな、なんて思ったりして。フフン♪