「新華網」のトップニュース(トップページで大見出しになっているもの)は一日に何度か変更されるものですが、さっきのぞいたら、
「李登輝の訪日は分裂狙い/日本政府は台独を野放しにするな」
となっていました。来ましたねえ。特集です(厳密にいえば、関連記事をまとめてこの見出しでくくっているだけですが)。
大見出しに直結する親記事はこれです。
http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2367123.htm
内容は、まず李登輝氏へのビザ発給をめぐる経緯を中共視点で示し、外交部の声明へのリンクを張るなどして中国の立場を改めて強調しています。そのあと李登輝氏がいかに台湾独立に向けて熱心かということを紹介する一方で、例のコスプレ写真を引き合いに出して、
「台湾を愛せといいながら自分は日本文化を抱き締めて放そうとしない。『台湾皮日本骨』(原文)だ」
と悪罵、いやこれは悪罵ではなく中共なりの分析ということなんでしょう。しかし無聊な文章です。
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また、
●海外メディアの反応:日本の放埒な李登輝入国許可は中日関係を害する
http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/22/content_2366445.htm
という記事もあります。外電の論評を都合のいいところだけ引き抜いてまとめたものがあり、AP、ロイター、AFPが名を連ねていますが、朝日と共同もこの中に入っています。たぶんこの2社に関しては編集せずにそのまま掲載しても中共の意に沿っているのではないでしょうか(笑)。
李登輝氏訪日の件では共同の働きが特に目覚ましく、「新華網」にもどんどん引用されていて、御注進メディアのMVPといった観があります。
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●タイの華字紙、李登輝の来日を許した日本政府を批判
http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2364919.htm
という記事もありました。でも華僑に読ませる新聞じゃあねえ。少なくともタイには中共寄りの華字紙が2つある、ということは勉強になりました(笑)。
他に香港の親中紙のひとつ『香港商報』の論評、
http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2366444.htm
これも李登輝と日本政府を非難する内容で新鮮味に欠けます。みんな一本調子なので読んでいて面白くありません。中共の指示というより、叩くネタがないため、みんな似たような内容になっているという印象です。
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他に書くことないの?と思っていたら、ひとつだけ興味を引いた記事がありました。
●李登輝へのビザ発給に在日華僑団体が抗議声明
http://news.xinhuanet.com/taiwan/2004-12/22/content_2366360.htm
というもので、日本華僑華人聯合総会、東京華僑総会、留日台湾省民会がそれぞれ抗議声明を出したようです。「台湾省」ですか(笑)。中国人犯罪が激増して、昨年末に中国大使館でこの問題などに関する座談会を設けたときに集まってきた連中でしょう。そのときの結論は「犯罪者はごく少数、日本のメディアは騒ぎすぎ」でしたね。
さてこの記事の注目すべきところはそこではなく、なぜか広東省での民意調査結果なるものが唐突にこの記事に出てくるのです。かいつまんで訳しますと、
「日本政府が李登輝へのビザ発給を認めた事件は内外で広く注目されている」
という中共の認識(妄想)に基づいた当然の前フリがあってから、
「内地(中国本土)における経済では筆頭格の広東省の公衆がこの事件をどうみているかを掴むべく、広州社情民意研究センターか緊急電話調査を行った」
と続きます。単に広東省で電話による緊急アンケートを実施した、では駄目なんでしょうか。まあそれはいいとして、調査結果はというと、
「7割の広東民衆が今回の件に憤慨している」
ポイントはここからです。
「注目すべきは、『相当一部分』(翻訳不能。どっちかはっきりせい!)の広東民衆の日本製品購入について、この事件が影響していることだ。32%が日本製品の購入に対し今回の事件が『やや影響する』『影響が大きい』と回答。また32%が日貨排斥に『賛成』あるいは『割と賛成』と、強硬的な姿勢をみせていることだ」
この記事のこの部分だけが一連の記事の中で際立った印象を受けます。足並みが揃っていない、ともいえるでしょう。あるいは跳ねっ返りの糞青(反日信者で自称愛国者)まがいの記者が、目立たぬよう「在日華僑」云々という無関係なテーマにこれを滑り込ませたのでしょうか。
日貨排斥を前向きに扱った記事が国営通信社のサイトである「新華網」に掲載されるとは驚きです。だって日貨排斥をやったら困るのは中共の方じゃないですか。ただでさえ失業者対策が悩みのタネのひとつなのに。
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まあ第一報以来、初めて「新華網」にまとまった李登輝特集のようなものが出たということになるのですが、上に紹介した「日貨排斥」を別とすれば、中共が最初に発した抗議声明の線より踏み込んだものはない、という印象です。
「日貨排斥」が主流になったら面白いんですけど。
ちなみにどのページに飛んでも、李登輝氏の写真は例のコスプレバージョンだけでした。中共もいたく気に入っているようです(笑)。
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【追記1】このブログを投稿してから改めて「新華網」のトップに飛んでみたら、もう大見出しが変わっていましたね。渾身の李登輝特集はトップページの見出し一覧からも消えています。台湾が独立宣言をした訳でもなし、一般市民の関心は所詮その程度ということでしょうか。
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【追記2】読者の方からの御指摘で、上記本文にある在日華僑団体が抗議声明を出した部分について、東京華僑総会については新華社の捏造であることが判明しました(コメント欄参照)。下に同総会による声明を掲げておきます。
件名:「台湾の声」【声明】東京華僑総会 歓迎李登輝先生
声明文 李登輝先生の訪日を歓迎する
私たち東京華僑総会は李登輝前総統が日本を観光で訪問されることに心からの歓迎の意を表します。
そして李前総統に入国ビザを発給した日本政府に対しても感謝いたします。
しかし中国政府のスピーカーである新華社通信が、李前総統の訪日に反対する本会名義の「声明」なるものをでっち上げました。本会は新華社が報じたこの声明が真実のものではないことを明確に表明ます。そしてこの声明を本会の真意といたします。
東京華僑総会
会長 黄宗敏
2004年12月22日
http://www.emaga.com/bn/?2004120071346735001105.3407
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