Go Hollywood!!映画れびゅう

今まで見てきた映画の覚え書き。(ネタばれ注意!)雑記録。

サイドウェイ(2004)とサイドウェイズ(2009)

2010-05-11 23:28:50 | 映画レビュー(サ行)
Sideways (2004)サイドウェイ 
Director & Writer : Alexander Payne
Novel : Rex Pickett
Cast : Paul Giamatti, Thomas Haden Church, Virginia Madsen, Sandra Oh

離婚のショックから立ち直れていないマイルス(ポール・ジアマッティ)は、小説家志望の国語教師。夢もなかなか実らずくすぶっている40代。
友人のジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、昔はレギュラーも持って人気もあったが今は売れない俳優。
で、無類の女好き。
そのジャックがついに年貢を納めてアルメニア人の不動産屋の娘と結婚するから、結婚前に二人でワインとゴルフ三昧の旅行をしようぜと提案。
車でサンフランシスコのサンタバーバラに向かった。

お気楽で気の多いジャックは、山ほどのコンドームを抱えて結婚前にアバンチュール(言葉古い??)を楽しむ気満々!
一方、今イチはじけきれないマイルス。彼には人生がうまくいかない閉塞感を心一杯に抱えていた。

二人がワインレストランで出会ったのがマヤ(バージニア・マドセン)とステファニー(サンドラ・オー)。
明るくてムードメーカーのステファニーとジャックはすぐに意気投合。(勿論ジャックはもうすぐ結婚することは隠してる。)
やはり、離婚経験者でキャリアアップを目指してコツコツ働いているマヤとマイルスも穏やかながら、ワイン好きという趣味が合うことから仲良くなってゆく。

マイルスはマヤとの付き合いの中で、もう一度自分の人生と向き合いはじめるのだった・・・。



サイドウェイズ (2009)
監督:チェリン・グラック
脚本:上杉隆之
キャスト:小日向文世、生瀬勝久、菊池凛子、鈴木京香

売れないシナリオライターの道雄(小日向文世)は留学時代の友人大介(生瀬勝久)から結婚式の招待を受け、学生時代以来サンフランシスコやって来た。
書いた脚本もなかなか採用してもらえず、長くつきあった彼女から別れを告げられたばかりの道雄。
アメリカ行きは本当は気が乗らなかったのだが、どうせ壁にぶち当たって落ち込んでいるのならここで気分転換にとやって来たのだ。

過去にヒーロー物で一度だけ売れたことのある大介は、今やサンフランで有名なレストランの雇われ店長。
オーナーで大きな不動産屋の娘と結婚するのだが、その前に二人でラスベガスにでも行ってぱーっと独身最後の一週間を楽しもうぜと大介。
サンフランシスコと言えば、ナパでワイナリー巡りだろうと提案したワインオタクの道雄の提案には耳もかさない。

昔お世話になったホストファミリーの家で、留学時代に道雄が心惹かれていた麻有子(鈴木京香)がナパのワイナリーで働いているから会いに行ったらと言われ二人は行く先をナパに変更。
偶然ワインレストランで再会した3人。
そこには麻有子の友達ミナ(菊池凛子)もいて、早速大介は自分の結婚のことは隠してミナをナンパ。

一方道雄に麻有子は、今まで自分の歩んできた人生について少しずつ語り始めた。
結婚、離婚、家族からの反対を押し切って単身で渡米。キャリアを得てしっかり独り立ちしたいと思っていること。
二人はゆっくりと心を開き、気持ちが近づき始める・・・。

しかし、そんなに意地を張ってないで日本に帰ろうと道雄が言ったことから麻有子と険悪な雰囲気に。
その上、彼女は大介の結婚のことを知ってしまい、道雄がそのことを隠して大介に好きなことをやらせてミナを傷つけていると激怒。

結婚式の日がせまり、けんか別れしたままサンフランシスコに帰った道雄と大介。
しかし、道雄は自分自身を見つめ直し、今必要な物、いや昔からずーっと必要としていた物に気付いて麻有子に電話を。
「ワインの美味しさを分かち合いたい人を見つけました。もし君も同じ気持ちでいるなら・・・。」と。



ハリウッドバージョン、日本キャストでの焼き直しバージョンを並べてみました。
前者はサンタバーバラでロケ。
サンタバーバラというところは、過去に一度だけ「郵便配達は2度ベルを鳴らす』でロケに使われただけと言う美しい風景の残るところ。
日本版は、日本人にもおなじみのワインのメッカ、ナパとカリストガでのロケ。

勿論ナパはいいところなんですが、シーンとしてはやっぱりサンタバーバラの方が哀愁があってよかったかなぁ。
それはやっぱり道雄が日本からのビジターであるということが影響して、シーンに観光番組のようなエッセンスが入ってしまったのかも?(・・・と私が感じてしまったのかも。)

あと、車の運転ができない道雄がやたらと歩いて行動しているところが不自然。
日本じゃないんだから、歩いて行けるところに麻有子の家があったり、レストランがあったりしないよなぁって。
ワイン飲んで、麻有子の家から歩いてモーテルに帰るなんて・・・考えられないよ。危ない危ない。


ストーリーの大筋、キャラクター設定はほぼ同じ。
菊池凛子ちゃん頑張ってましたけど、やっぱり比較しちゃうとサンドラ・オーの柔軟性のある演技に負けちゃうなぁ。
オープンマインドで明るくて、感情のだし方もストレート。ジャックの不貞がバレたときなんてそりゃひどいほど怒りを爆発させちゃうけど、憎めないチャーミングさ。
昔見た映画“トスカーナの休日”でも、体外受精までして妊娠したのに相手にふられちゃってシングルマザーになるゲイの役をやってた時も、シリアスな設定をうまくコミカルに明るく演じていたもんね。
彼女の持っているキャラクターなのかしらね?
この時は監督と婚姻関係にあったサンドラですが、この後しばらくして離婚しちゃってますね。理由は何だったっけ?

サイドウェイとは”寄り道”。
40過ぎて寄り道できるなんて贅沢よん!
子どもがいちゃ、寄り道する心の余裕も無いわ~。寄り道なんかしたら、家庭が崩壊しちゃうじゃない!
なんて思いながら映画をみました。
実際、うらやましい。自分を見つめ直すなんて・・・、正直ちょっと今はできないわ。
後20年くらい経ったらできるかしら?


食物を扱う映画を見ると、絶対食べたくなる!そんな事ありません?
2年前に行ったナパワイナリー巡り、もう一回行きたくなっちゃって子どもを説得中です。
ほんとのとこ、子どもは預けて運転手を雇って回りたいのだけど!
映画『Bottle Shock』で出てきたワイナリーも行ってみたいし~!
近いうちに、是非!



乱(1985)

2010-05-06 14:19:18 | 映画レビュー(ラ行)
乱(1985)
監督/脚本:黒澤明
出演者:仲代達矢、寺尾聡、根津甚八、隆大介、原田美枝子、ピーター

元ネタはシェイクスピアの『リア王』。
三人の娘を息子に置き換え、戦国時代の日本を舞台に作り上げた脚本です。



戦国時代を無情ともいえるやり方で生き抜き、今や3つの城を征服し領土として抱える大殿秀虎(仲代達矢)は、3人の息子と客人を従えて狩りを楽しんでいた。
狩りの後突然思い立った秀虎は長男孝虎(寺尾聡)に家督を譲り、隠居をすると皆の前言い渡した。
二男正虎(根津甚八)は父上の仰せのとおりにと承諾をするが、三男直虎(隆大介)は「父上は馬鹿者だ。兄弟3人力を合わせろだのと言うが、こんな家督の譲り方をしては血で血を洗う事態になるに決まっている。」と言い放つ。

客人の前で恥をかかされたと怒った秀虎は、即刻三男を勘当に。
しかし、率直にものをいう直虎に感心した客人の一人藤巻(植木等)は彼を養子に貰い受けようと言う。

され、孝虎が跡目を継ぎ一の城の天守閣の殿の座に座ってから、直虎の言うように父への裏切りとも言える仕打ちを秀虎に下した。
というのも彼の正室楓の方(原田美枝子)は、もともとの一の城の城主であった父を秀虎に殺され人質同様に孝虎の妻にさせられたことを深く恨んでおり、夫をうまく操って憎い舅をなき者にしようとしていたのだ。

体よく一の城を追い払われた秀虎は二男を頼って二の城へ行くが、今度は正虎から城へ入るなら家来を城外に残して入ってくれと言われる。
二人とも引退してもなお影響力のある父を疎ましく思っているのだ。
我が家来を見捨てることができなかった秀虎は、家来とともに行くあても無く野をさまようことになる。




旦那が今まで一本も黒澤作品を見たことが無いというので、図書館で借りてきた一本です。
私にとってもこの”乱”は、多分20数年前に片手間に日曜洋画劇場かなんかで見たのが最後だったので、ちゃんと見直すいい機会になりました。


しかし、やっぱり黒澤作品はかなりの影響力がある!
見てから一週間くらいは頭の中が”乱”で占領されていたわ~。

独裁的とも言える監督の映画作り。
皆さん既にご存知とは思いますが、黒澤監督は自分できっちりと色付きの絵画のような絵コンテを描いて、ほぼそれと寸分違わぬ映像を作り上げて行きます。
妥協はしない。(本人はあれで妥協しているつもりでしょうが・・・。)

監督のOKのラインはかなり高く、それに見合うものをセット、衣装、小道具を始めとするスタッフと役者で作り上げて行ったんだと言うことが映画を見ながらビンビン伝わってくる。

その難しい要求をすぐに理解して、監督の思うとおりに演技できる仲代達矢という俳優を本当にものすごい人だと思いながら本編、メイキングのシーンを見させてもらいました。見ている時はもう彼の演技に釘付けになって、言葉も出なかった。
あの演技力は数ある役者の中でも群を抜いていると改めて確信。
彼のメークは、能面をイメージしたもので、皺の一本一本まで細かく入れてある。ご本人がおっしゃっていましたが、自分が自在に動かせて演技できるのは目だけだと。
それだけに、目の演技口元の演技は一つ一つはあんな小さなパーツなのにうわっと迫ってくるものがありました。


本家シェイクスピアでは必ず出てくる道化の役。
狂阿弥という大殿お付きの狂言師はピーターが。
さすが人間国宝吉村流家元の長男、踊りの基礎はきちんとできてますから、狂言師野村万作の指導のもと狂言師の役を見事演じています。
野村万作と言えば、この映画には高校生だった野村萬斎が本名の野村武司名義で二の城を追われた鶴丸という役を演じてますねぇ。
初々しい・・・。


エキストラ1000人、アメリカから輸入してわざわざ調教した馬50頭による合戦は、固定カメラで赤と黒の兵士が渦を巻くように戦うシーンを撮っているあの有名なシーン。
“ラストサムライ”はこれをパクったんだなぁー。
まぁ、黒澤作品はいろんなハリウッドの監督に影響を与えてますからね~。


これを機会にちょっとしばらくは古いものから少しずつ黒澤作品を見直して行こうっと。



歩いても歩いても (2008)

2010-05-05 04:45:52 | 映画レビュー(ア行)
歩いても歩いても(2008)
監督・脚本:是枝裕和
出演者:阿部寛、夏川結衣、You、原田芳雄、樹木希林

ある夏の昼下がり、台所でとしこ(樹木希林)が、娘と息子家族を迎える料理の準備に忙しい。
娘ちなみ(You)夫婦と二人の子どもたちはもう到着しており、ちなみは母親を手伝っている。
母娘は忙しいながらも、おしゃべりも途切れることなく、料理の音と二人の会話で台所は活気づいているように見える。

一方、引退をしているが開業医だった父恭平(原田芳雄)は自分の書斎に閉じこもって一人考え事をしているのかただ一人でいたいのか。
二人の会話からも恭平の表情からも、どうも彼は頑固者らしい。

今日は息子良多(阿部寛)が最近結婚したらしい妻(夏川結衣)とその連れ子を連れてやってくるようだ。

久しぶりに実家で顔を会わせる家族の食卓。
良多と父親の関係はしっくりこないようでぎくしゃくしているが、女たちの会話で和やかに食事が進んでゆく・・・。




小津映画のようにある家族の一日をたんたんと描いた映画です。
どこにでもありそうな風景。
結婚や独立して出て行き、自分たちの家庭を持っている子どもたちが実家に帰省してくる。

それを子どもの好きだった料理で精一杯もてなそうとする母。
実家から遠のいている息子。
そのぎくしゃくした父と息子の間をを持ち前の明るさと、娘という遠慮のない立場でうまく繋ぐYouの演技がなかなかよかった。

おいしそうな母の手料理が画面いっぱいに映され、料理の音、娘の明るい会話で幸せそうなどこにでもある普通の家庭の様子が描かれてゆきます。
しかし“幸せな食卓の風景”で表面を覆っている、その下にはそれぞれ心の中に昇華できずにいる思いを抱えているのがちらちらと垣間みられる・・・そういう映画なんです。


優秀で将来医者になってきっと父の跡を継いだであろう長男は、何年も前に事故でなくなっている。
その絶望感をまだまだ胸にとめたままでいる両親。
小さな頃から兄への劣等感を持っていた良多は、兄が死んだ後も兄に成り代わって父を助けることができない後ろめたさを持ちながら、実のところ自分は自分として認めてほしいと思っている・・・。それが彼の素っ気ない、父親を拒絶するような態度に出ているみたい。


穏やかそうに見える母も、良多の連れてきた妻にちくりと忠告したり、長男が身代わりになったために命拾いをした男性を毎年命日に家に呼んだりする。ちょっと残酷なところがちらり。
この”ちらり”の演技が難しいんで、「さすが樹木希林!」です。
大女優の風格が感じられます。
あからさまにいやなヤツの演技なんて言うのは、簡単に演じられるもんですよ。

頑固で家族の中でも自ら孤立する父を演じる原田芳雄。
この演技は結構プライベートライフにかなり影響したらしく、撮影中は実生活でもついつい頑固者になっちゃったそうです。
撮影が終わってほっとしたって。
頑固っていうのも相当エネルギーを使うもんみたいですね。



何か大きな事件が起きるわけでもない。
この映画は、何気ない日常に見え隠れする人間の心情を感じながら見る映画のようです。
静かに流れるシーンのどこかで何かがあなたの心に引っかかる・・・。


“人生は、いつもちょっとだけ間に合わない。”
そういうこともあるよね・・・、なぁんて。


料理のシーンはとても鮮明に心に残りました、私。
この映画を見たら、もしかしたらお母さんの手料理を食べに実家に帰りたくなっちゃうかもしれませんね。