ゴエモンのつぶやき

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おもや 「障害者」と「農業」つなぐ

2018年04月17日 13時29分50秒 | 障害者の自立

 「おいしかった。ありがとう」。手をかけ目をかけて育てた野菜や米に寄せられる言葉が、なにより励みになる。自分たちが社会の中で役立っていると実感できるから。NPO法人「縁活」(栗東市)が運営する「おもや」は、無農薬、無肥料の「自然栽培」による野菜や米、果実作りをする障害者就労支援事業所だ。近隣の農家などから借りた田畑約170アールで、毎日20人前後の障害者が農作業に汗を流している。

 取材に訪れた日、栗東市内の法人事務所に近い畑ではサトイモを植える準備が進んでいた。おしゃべりをしながら、約10人の障害者が、畝に、土を栽培に適する環境に整える「マルチシート」を張っていく。この後、種イモを植え、収穫は10~11月になる。

 作業をする1人、22歳の男性は、「農業が好き」と希望して「おもや」に入った。4年がたった現在、職員から受けた指示はメモを取って忘れないようにしている。刈払機など農機具もひと通り使いこなせるようになった。「植えた野菜の苗などの生育状況を気にして自主的に見に行ってくれるまでになれば、もっと仕事が楽しくなるはず」。「縁活」設立者で常務理事の杉田健一さん(41)は成長を期待する。

 野菜の栽培品目は約40種類あり、四季折々の旬の作物を作っている。春ならスナップエンドウ、ニンジン、タマネギ、レタス、ナスなどを露地とハウス計約120アールで生育させる。2017年度はこのほか、米が約40アール、イチジクが約10アール。農家から依頼を受け、植え付けや収穫などの手伝いにも出向く。売り上げは約500万円になった。

 農作業は一年中ある。そして、さまざまな仕事がある。障害者それぞれが役割を果たす中で、「自分にもできることがある」と自信を持つ。「障害者は働くことを通じて生きがいを見つけ、少しずつ自分を好きになっていく。農業は障害者の自己実現の場になると思います」。杉田さんは、そう話す。

 杉田さんは障害者支援の社会福祉法人の生活支援員をしていた09年に、生まれ育った栗東市の霊仙寺地区で「縁活」を設立。グループホームの運営を始めた。

 農業をはじめるきっかけは偶然だった。市職員を退職後、農業をしていた父の体調が優れなくなり、長男として栗東特産のイチジクの畑など約30アールを引き継いだ。

 グループホームを始めたのは、地域で暮らす障害者と「ともに生きたい」からだった。当初、就労支援を考えていなかったが、「障害者と、お日さまの下、汗を流し日に焼けて、土を触り、作物を育てるのもいいな」と思ったという。11年、就労継続支援B型事業として「おもや」で農業を始めた。

 農薬をまかず、肥料を施さない「自然栽培」に取り組んだのは13年から。松山市で障害者とともに「自然栽培」をする生産者と出会い、農園を見学した。「土に何も入れない、作物に何もかけない」農法に驚いた。自然が持つ力に頼る農法だ。

 リスクも大きいと、ためらいも頭をもたげたが、腹をくくって「自然栽培」への移行を決めた。農薬も肥料も使わない代わり、こまめに、水をやり、雑草をひき、作物につく虫を捕る。作物の生育状況を念入りに見守る。農薬や化学肥料を使う通常の農法に比べ、手間はかかる。「しかし、手間をかける仕事を、障害者はいとわない」と、強みを生かせるとも思った。

 では、とれた野菜をどこに売るか。杉田さんらスタッフが頭を悩ましたのは、この課題だった。自然栽培では大きさや形、収穫量などが一定しない。自然に依存する分、土壌や天候が大きく影響する。いわば、通常の市場ルートにはのらない「規格外」の作物だ。

 安心・安全の野菜であることは自信を持っている。「『おもや』の野菜を必要としている人たちはいるはずだ」。京都市などに出向いて移動販売をし、受け入れてくれるファンを少しずつ増やしていった。やがて、生活協同組合や東京の「自然栽培」作物販売店などにも販路ができ、売り上げが伸びていった。

 14年からは米作りをはじめた。田んぼにはニゴロブナの稚魚を放流し、育てて琵琶湖に放っている。

 いかに作物の生育を気にかけ、しっかりと育てているかが問われている。それで、「おもや」の作物が消費者に選ばれると思っている。だから、その声に敏感でありたい。「おいしい」と言ってもらえる半面、厳しい意見も寄せられる。しかし、それがよい作物を作る原動力になる。

 17年10月、「縁活」は認定農業者となった。障害者の働く場として、農業を続けていく。その覚悟を示した。「本当においしいものをこだわって作ることで、それを欲しいと言ってくれるお客さんができ、ファンになってくれた。これからも、分かってくれる人たちに、私たちにしかできない『尖(とが)った』ものを作っていきたい」。そう決意している。

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