障害を理由とした差別的な扱いを禁じた障害者差別解消法の施行から2年半。鳥取県内では7月にタクシーやバスの乗車を巡り不適切な対応があったことが判明し、事業者は業界を挙げて改善に乗り出した。
同法では障害による差別を禁止し、障害者に対して「合理的な配慮」を講じるよう国や自治体に義務付け、民間事業者にも努力義務として課している。県は障害者の相談に応えて差別解消を推進する「障害者差別解消支援地域協議会」を設けており、本年度の会合で報告された2件では、電動車いすの重量を理由にUDタクシーと路線バスで電話予約や乗車を断られた。
一方、国土交通省鳥取運輸支局は、車いす乗車用スロープの基準を挙げて「全て乗せられるわけではない」との認識を示す。車いすの種類によっては、利用者と医療器具などの荷物、乗車させる運転士の重量を合わせるとスロープの耐荷重200キロを超える可能性があるからだ。寸法が乗車スペースに収まらない例も考えられる。
ただし、同支局の藤原徳行支局長は「物理的に無理な場合には利用者にしっかり説明し、理解していただく必要がある」と指摘した。
今回の事案を受け、県内のタクシー、バス事業者の業界団体は、電動車いすの取り扱いに慣れるため、県東中西部の3地区で研修を実施することを決めた。1日に鳥取市内で開かれた研修には運行管理者ら約40人が参加。同法への理解を深めるとともに、スロープの荷重を軽減させるため、片足を地面に着けたまま乗車させる手順を習得した。
講師として参加した障害者生活支援センターすてっぷ(米子市道笑町2丁目)の光岡芳晶所長は「障害のある人が利用、移動しやすいよう社会を合わせていくのが法律の趣旨。早く研修に取り組んでいただいたことはよかった」と話した。
県ハイヤータクシー協会は、一般人だけでなく、障害者や高齢者など誰でも乗りやすいUDタクシーの導入に当たり、県内でドライバーが研修を受けられるよう自前で講師を養成するなど、積極的に対応を進めてきた。
同協会の船越克之会長は「不適切な事案があれば具体的な情報を提供してもらいたい」と述べた上で「公共交通機関として苦情が出るのは望ましくない。可能な限り改善していく」と強調した。
電動車いすの乗車方法を確認するドライバーら
2018年10月2日 日本海新聞