◇「応益負担は間違っている」一斉提訴原告に県内から森平さんら4人
◇通所費1割負担、困窮に拍車 家族の実態知るべし
「福祉サービス利用料の原則1割負担を求めた障害者自立支援法は、憲法が定める法の下の平等や生存権を侵害する」として、全国の障害者らが10月、国を相手に一斉提訴に踏み切った。県内に住む男女4人も原告に加わり、受給する福祉サービスの利用料に応じた負担を課す「応益負担」の違憲性を訴えた。原告の1人、近江八幡市の森平和也さん(28)の父泰雄さん(68)は「普通の人と同じ生活をするのに、なぜ負担を強いられなければならないのか」と国の方針に反発する。同法の施行は県内の当事者にどのような影響を及ぼしたのか、現状を取材した。
和也さんは3歳の時に「自閉症」と診断された。不完全なものに過敏に反応し、糸が少しほつれた服を引き裂いたり、欠けたブロック塀を壊したりした。「余分な費用がいくらかかったことか…」と泰雄さんは疲労感をにじませる。
東近江市の知的障害者授産施設「虹彩(こうさい)工房」で週4~5回、機(はた)織り作業に従事して得られる工賃は月平均約2万5000円。法施行後、毎月の通所費の1割と給食費の実費負担分の計約1万5000円は生活に重くのしかかった。月2回利用するデイサービス(外出付き添いなど)を1回に減らしたが、生活リズムが崩れたことに混乱した和也さんがひどく暴れ、元に戻さざるを得なかった。
泰雄さんが和也さんの提訴を決断したのは今年夏。市への通所費用免除申請と県への不服請求申し立てが退けられ「息子を残してこのまま死ぬ訳にはいかない。目の黒いうちに何とかしてやらなければ」と思った。
通所施設利用の負担上限額を一時的に引き下げる県(06年~)と国(07年~)の緊急措置で現在の負担はピーク時から半減した。それでも、両親と姉、和也さんの4人が和也さんの障害基礎年金を含め月約30万円の所得で過ごすには、医療費や通所費などの負担があまりに重い。「本当につめに灯をともすような生活をしている。国には私たち家族の生活実態を見てほしい」と窮状を訴える。
◆行政の対応◆
こうした事態に、独自の負担軽減措置をとる県内自治体もある。東近江市は昨年4月、市民が通所施設を利用する際は無料とする制度を導入した。通所費などの負担が作業賃金を上回るため、就労意欲をなくして施設を退所したり、自宅に引きこもるケースが相次いだためだ。
同市障害福祉課は、市内の作業所訪問や説明会で当事者の声を聞き、制度導入に向けて会議を重ねた。今年度は約1100万円の予算を組んでいる。今年度末までの暫定措置だが、事業を主導した岸幸男・同課副参事(49)は「作業所利用者の不安を解消するため、事業を今後も継続したい」と話す。
また、日野町も作業所の利用無料化を検討している。
◆国は姿勢変えず◆
厚生労働省は今月10日、同法見直しについて諮問機関の社会保障審議会に示した報告案で、負担軽減措置の継続に言及する一方、応益負担自体は維持する姿勢を示した。
原告らには、障害に起因する補助なのに「利益を得ている」と受け取られることへの抵抗感が強い。泰雄さんは「一般企業で働けない息子は得られる収入が格段に少ない。前提条件が違うのに、経済的自立ばかりを求めようとする応益負担は間違っている」と疑問を投げかける。
毎日新聞より
◇通所費1割負担、困窮に拍車 家族の実態知るべし
「福祉サービス利用料の原則1割負担を求めた障害者自立支援法は、憲法が定める法の下の平等や生存権を侵害する」として、全国の障害者らが10月、国を相手に一斉提訴に踏み切った。県内に住む男女4人も原告に加わり、受給する福祉サービスの利用料に応じた負担を課す「応益負担」の違憲性を訴えた。原告の1人、近江八幡市の森平和也さん(28)の父泰雄さん(68)は「普通の人と同じ生活をするのに、なぜ負担を強いられなければならないのか」と国の方針に反発する。同法の施行は県内の当事者にどのような影響を及ぼしたのか、現状を取材した。
和也さんは3歳の時に「自閉症」と診断された。不完全なものに過敏に反応し、糸が少しほつれた服を引き裂いたり、欠けたブロック塀を壊したりした。「余分な費用がいくらかかったことか…」と泰雄さんは疲労感をにじませる。
東近江市の知的障害者授産施設「虹彩(こうさい)工房」で週4~5回、機(はた)織り作業に従事して得られる工賃は月平均約2万5000円。法施行後、毎月の通所費の1割と給食費の実費負担分の計約1万5000円は生活に重くのしかかった。月2回利用するデイサービス(外出付き添いなど)を1回に減らしたが、生活リズムが崩れたことに混乱した和也さんがひどく暴れ、元に戻さざるを得なかった。
泰雄さんが和也さんの提訴を決断したのは今年夏。市への通所費用免除申請と県への不服請求申し立てが退けられ「息子を残してこのまま死ぬ訳にはいかない。目の黒いうちに何とかしてやらなければ」と思った。
通所施設利用の負担上限額を一時的に引き下げる県(06年~)と国(07年~)の緊急措置で現在の負担はピーク時から半減した。それでも、両親と姉、和也さんの4人が和也さんの障害基礎年金を含め月約30万円の所得で過ごすには、医療費や通所費などの負担があまりに重い。「本当につめに灯をともすような生活をしている。国には私たち家族の生活実態を見てほしい」と窮状を訴える。
◆行政の対応◆
こうした事態に、独自の負担軽減措置をとる県内自治体もある。東近江市は昨年4月、市民が通所施設を利用する際は無料とする制度を導入した。通所費などの負担が作業賃金を上回るため、就労意欲をなくして施設を退所したり、自宅に引きこもるケースが相次いだためだ。
同市障害福祉課は、市内の作業所訪問や説明会で当事者の声を聞き、制度導入に向けて会議を重ねた。今年度は約1100万円の予算を組んでいる。今年度末までの暫定措置だが、事業を主導した岸幸男・同課副参事(49)は「作業所利用者の不安を解消するため、事業を今後も継続したい」と話す。
また、日野町も作業所の利用無料化を検討している。
◆国は姿勢変えず◆
厚生労働省は今月10日、同法見直しについて諮問機関の社会保障審議会に示した報告案で、負担軽減措置の継続に言及する一方、応益負担自体は維持する姿勢を示した。
原告らには、障害に起因する補助なのに「利益を得ている」と受け取られることへの抵抗感が強い。泰雄さんは「一般企業で働けない息子は得られる収入が格段に少ない。前提条件が違うのに、経済的自立ばかりを求めようとする応益負担は間違っている」と疑問を投げかける。
毎日新聞より