ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

第3回

2007年01月10日 01時04分16秒 | 障害者の自立
今日は沖縄での出来事です。

[沖縄タイムス 2006年12月23日・朝刊]
■県、終日介助認めず:ヘルパー時間で裁決、重度身体障害大城さん請求――夜間30分は「不適切」/沖縄■

 重度身体障害者の大城渉さん(21)=宜野湾市=が、名護市が七月に決定したヘルパーの支給時間では足りないとして、決定を取り消し支給時間を増やすよう求めた不服審査請求で、県は二十二日、大城さん側の請求を一部認める裁決を下した。二十四時間支給は認められなかった。大城さんの出身地で、サービスを支給している名護市は今後、午後十一時から午前七時までの就寝中の支給量を現行の「一日三十分」よりも増やさなければならない。残る十六時間の支給量は適切と判断された。名護市は「なるべく早く支給時間を見直したい」と述べた。障害と人権全国弁護士ネットによると、四月の障害者自立支援法施行後、不服審査請求の裁決は全国で初めて。
 大城さんは進行性の難病・筋ジストロフィーで、筋萎縮や筋力低下のため両手足を動かすことができない。痰を出したり、就寝中の体位変換や人工呼吸器の作動確認もあり、二十四時間のヘルパー支給を求めていた。

 裁決では「体位変換と呼吸器確認は二時間に一回程度が全国的に標準」という主治医の意見書に基づき、一日三十分では体位変換(二十分程度)が一回しかできないため、名護市の決定は不適切と判断した。

 一方、就寝中以外の介助については、午前に三時間、午後に四時間のヘルパーがいない空白があるものの、日中の体位変換用の時間として一時間の支給があることから適切とした。

 裁決書を受け取った後、県庁内で会見した大城さんは「取り消しは一部だけで、二十四時間介助の必要性が認められなかったことで複雑な気持ちだ。名護市は就寝中だけでなく、日中の支給時間も改めてほしい」と肩を落としていた。

 名護市は今後、午後十一時から午前七時までの就寝中のヘルパー支給量について大城さんと交渉に入る。宮城幸夫福祉部長は本紙の取材に「決定を謙虚に受け止めたい」と早期見直しを明言し、二十四時間支給については「状況に応じたサービスを給付していく」と従来の立場を繰り返した。

 大城さんは今年九月十一日に県障害者介護給付費等審査会(金城博会長)に不服審査を請求。三度の審査会と大城さんの意見陳述などを参考に、県が裁決を下した。
【平良秀明】


     ◇     ◇     ◇     

・自立の道 行政が壁

 ささいな事故や風邪が生命の危機に直結する重病と闘い、障害者が安心して生きる権利を訴えた大城渉さん(21)。二十四時間の介助を求めたが、県が二十二日下した裁決は名護市の処分を「一部取り消す」内容。全国初の挑戦に、多くの障害者の仲間と期待を膨らませてきたが、「負けたような気持ち」と悔しさをにじませた。無償で支援してきた代理人の岡島実弁護士は、満足な結果ではないとしながらも「市の姿勢を一部でも誤りと認めたことは評価すべきだ。小さな一歩だが、前進だ」と、今後の名護市との交渉を控え鼓舞するように語った。

 「審査請求を認容し、名護市の処分を一部取り消す」。宮城洋子県障害保健福祉課長が裁決書を読み上げると、手渡された文書をじっと目で追っていた大城さんの顔が輝いた。しかし、生きる権利として求めた「二十四時間介助」は、県にも拒まれた。


・小さな一歩

 大城さんは「最初はうれしかった。でも結局、二十四時間介助は必要ないと書かれていた。負けたような気持ち」と悔しさをにじませた。「でもやってきたことが、全国の障害者の力になるなら、やってよかった」と気丈に笑顔を見せた。

 岡島弁護士は「小さな一歩だが、前に進んだことは大きい」と一定の評価をした上で、「二十四時間介助は必要ないとした県の認識は残念。生命の安全を維持しながら生活するにはどうすればいいかを、真剣に考えてほしい」と強調。就寝時八時間の支給を求め、早ければ年内にも名護市と交渉に入りたい考えだ。


・あきらめぬ

 九月の不服申し立てと同様、多くの仲間や支援者が県庁の会見室を埋めた。重苦しい雰囲気の中、県自立生活センターイルカの長位鈴子さんは「県外でも支給時間など減らされている仲間は多い。地域で生きることをあきらめてはいけない。沖縄の動きを九州などにも広めていけたらいい」と話した。
【儀間多美子】


◇実態把握に疑問――障害と人権全国弁護士ネットの竹下義樹代表
 就寝中以外の時間は、本人の生活実態とニーズを把握した上で必要量を判断したか疑問だ。どんなに専門家の意見を入れたとしても、現実に本人が人間らしい生活を送れていなければ意味がない。(行政の予算の枠にはめるのではなく)個々の障害者の生活実態に照らして妥当性を判断すべきで、こうした不十分な給付の在り方は今後問われると思う。


≪解説≫ヘルパー不在 水摂取は排泄は――「地域で生活」理念遠く

 県が大城渉さんの就寝中の支給時間を不適切として取り消した根拠は、「二時間に一回の体位交換や人工呼吸器の動作確認が全国の標準」とする主治医の意見書にある。

 午後十一時から午前七時の就寝中の八時間が、現行の三十分だと一回の体位交換(所要時間二十分)だけで終わってしまうため、標準的な介助ができないというのが取り消しの理由となった。

 逆に就寝中以外は、計七時間のヘルパー空白時間に対し一時間の体位交換時間が給付されているので、適切と判断した。

 これだと食事や入浴などの時間を除き、「二十分の体位交換を二時間に一回の割合で確保していれば十分」と、サービス量を決める市町村に解釈される恐れもある。

 大城さんはヘルパーがいないと水を飲んだり、排泄するなどの日常生活ができない。外に出る余裕もない。すでに大学もやめた。「一度きりの人生を悔いなく生きたい」と自立を目指して施設を出て、地域社会でアパート暮らしを続ける大城さんの希望とは隔たりがあまりにも大きい。

 代理人の岡島実弁護士は「行政上の手段を可能な限り尽くす」と今後の訴訟については否定的だ。ある福祉関係者は「予算の枠に縛られる県が市町村に行う裁決では、結局何も変わらない」と、国を巻き込んだ訴訟の必要性を強調する。

 国が、予算枠内での給付から個別ニーズに対応する給付へと障害者福祉に対する考え方を変え、財政面で市町村をバックアップしない限り、「障害者が自立した日常生活や社会生活を営む」という障害者自立支援法の理念の実現は遠い。