パープルヘィズ

タクシー内が全面に禁煙なんだと。
運ちゃん可哀想じゃないかい?
どういうつもりだろう、どこまでやるんだろう。やがて非合法になり喫煙者は迫害され差別され地下に潜る。そしてゲリラ化し厳しい弾圧に対し断固抵抗を続ける。いつしか最後の愛煙者が逃亡の末、虚しく生き絶える。信念を貫いたその死に顔には満足な微かな笑みが。そして最後の一服を付けたタバコの紫煙だけが彼の最後を看取る。
中崎たつやの作品にそんな内容の漫画がある。
そして最後のコマにはどこぞの市民団体風のおばちゃん達がこう言うのだ。
「とうとうやったワ、次は酒ね」「がんばりましょ」
そして中崎氏の私的な声が叫ぶ。「ざけんじゃねぇ！」と。
驚きなのはこの話が収められた単行本は15年以上前に刊行された本なのである。社会への痛烈な風刺をアイロニーさえ漂うギャグに転嫁するのも持ち味だったりする中崎氏の作風だが現実はギャグを追い越そうとしている。あまりにもこの世は滑稽過ぎる。