文化住宅、この単語、もう死語になっているかも知れない、若い人にはきっと通じないだろう。
Wikipediaで調べたら「近畿地方で、主に1950年代~1960年代に建てられた集合住宅の一種」とあった。へぇー、近畿地方独特のものだったんだ。
今思えば戦後のまだまだみんなが貧しかった頃、アパートの一間に家族が肩寄せ合って住んでいたそんな時代。台所も便所も風呂も共同で、6畳一間に親子6人で暮らしていた家族もいた。
我が家の裏にそんなアパートが建っていて同年代の子どもが大勢住んでいたのでよく出入りしていた。
大きな建物だったので部屋数が多く、一階の真ん中に共同の台所があり、天窓からの光が射しても昼日中でも薄暗く、私の子どもの頃の今はセピア色となった思い出がたくさんそこから生まれた。小学生時代の終わりごろにアパートが閉鎖されたが、それからも何年もの間、物語の舞台となっては夢に現れていた。
アパートが姿を消し、その後に次々と文化住宅が建てられ、狭いながらも各部屋に台所と便所がついていて、もしかしてその時代に始めてプライベートの感覚が生まれたのかも知れない。
そんな文化住宅が地域にはまだまだ残っていて、老朽化もありかなりノスタルジックなものになっていたが、最近馴染みのある近くの文化住宅が壊されたのを知った。
子どもの頃に出入りしていたご近所の文化住宅、昔のアパートと同じく次々と姿を消していく中でまだ残っていたその文化住宅、まだ知り合いの老夫婦が住んでいたはずなのに。
アパートの時代から文化住宅へ、そして今は一戸建ての建売住宅へと人は移り住み、綺麗な町並みに変わり、小奇麗な人が歩くようになった。小さな犬にお洒落な服を着せ歩く人も増えた、もう番犬なんて居ない。
なんか寂しいな、この綺麗な世界が。