傘がない

ビジネス交流会にお馴染みのビニール傘を持ってきた男の子がいた。あれ、雨が降り出したのかな、ここにもビニール傘売ってるんだ。

新規参加者の自己紹介が始まりその傘の意味が判った。
「ベトナムでこのビニール傘を売り出そうと思っています。今作ってくれる工場を探していますが見つかりません、売り出し方等も含めて皆さんにご意見いただきたいと思って参加しました。」

「需要無いんちゃう?　みんなバイク乗るからカッパやし。」
「日本料理店に客用に置かしてもらったらどうかな。」
「日傘を売り出したほうが良いよ。」

傘差しているのは大抵日本人女性でそれも日傘。日本人そのものが少ないので売れても知れている。だいたいが雨が降ったら傘も差せないほどの豪雨だし。ベトナム人は歩かないから傘が不要だし、濡れても暑いからすぐ乾くので平気だし。と、否定意見続出。

日本料理店に売り込む、希望があれば店名を入れる、のがベター、てことで落ち着いた。

後で話す機会があったので聞いてみた。「どうしてここで傘を売ろうと思ったの?」

「初めて来たとき雨に降られて傘を捜したけど売っていなかったんです、だから売れるかなと思って。」

「若いって素晴らしいなぁ」「すぐ実行に移せるなんて」「見てて惚れ惚れするなぁ」とその若者の熱心さと歯切れの良さにおじさんたちは感心しきりだった。

うん、素晴らしい!