主人は昔買った砥石でよく包丁を研いでいたが、研いで切れ味が良くなったためしは無く、いつも自分で研ぎ直していた。私は手軽に器の底で研ぐが、それで十分に切れ味が良くなるので、今まで主人の研ぎ方に文句をつけたことはなかった。
去年のこと、長年使っていたカット鋏の切れ味が悪くなり買い換えようとした。私はいつも美容院へ行かずに自宅でカットしているので、例え値が張った鋏でも安いものである。
すると主人が研いでやると言い出したので試しに研いでもらったら、髪の毛どころか紙も切れなくなってしまった。やっぱりねぇ、と思ったが主人は腑に落ちないようで首を捻る。今までの研ぎがいかにだめだったかを知らしめるために、昔から使っている大きな洋裁用の裁ちばさみで再挑戦してもらった。
その鋏は高校時代の男友達が、社販で安く買ったからとプレゼントしてくれたもので、だから48年使っている年季物。切れ味が悪くなったので布ではなく針金や硬いものを切るのに重用していたが、きっと昔のちゃんとした鋏だから研ぎ直したらまた布も切れるようになるはず、いつか研ぎに出そうと思とながらも放置していた鋏。
そしたら今度こそ呆れるくらい全く切れなくなった、やっぱりねぇ、、、、
主人はさすがに自分の研ぎがだめなのが分かったらしく、研ぎ屋さんを探してきて研いでもらってきた。
さすがさすがプロ! 見事な切れ味になり戻ってきた。
今は何でも使い捨てになってしまい、鋏だって買っても安いものになった。でも昔は何でも修理に出して長年大事に使ってたのよねぇ。
少々の修理費用をかけても大事に使いたいものを買って長いこと使うのが一番だな。鋏だって包丁だって鍋だって親から子へ引き継いで使えるはず。