GOCCIのオトコヲミガク旅(w)

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「サウスバウンド」奥田英朗著、読んでみました 。

2006年11月05日 | *本*BOOKS*
  
「サウスバウンド」奥田英朗著、読んでみました 



主人公の父親「上原一郎」「元左翼活動家」と言う設定が意表をついてるなぁ。

想像だが、この作品は作者が何らかの機会に沖縄に行って、「ガンジン」さんや「アカハチ」のエピソードに触発され「上原一郎」という魅力的なキャラを創造したのではないかと思う。(実際、書く前1回、書いてる最中に1回行ってるとの事)。

「上原二郎」を取り巻く「黒木・カツ」「南先生」「夢精」「お姉さんの不倫」「アキラさん」「四谷の祖母たち」「母の過去」など数々のてんこ盛りのエピソード。

ある時は冷静に、ある時は熱く、ある時は父親を反面教師とし、そしてある時は父親を師とし、問題に立ち向かっていく「現代っ子」の描写は活き活きとして臨場感がある。

作者はインタビューで
 “「登場人物を裁かない」というのがモットーで、自分に戒めている”  “それぞれの主張に正しい部分とやましい部分があるし、すべては白と黒じゃなくてグレーゾーンにあるんですよ” と語っているが、

この作品では作者のその辺りの「絶妙な立ち位置」が貫かれ、どのエピソードも後味の悪さを感じる事無く読める。

作者が創造した「上原一郎」という人物に対し「全面的に共感出来る人」は少ないと思うが、決して「全面的に否定出来る人」も少ないと思う。いや、どちらかと言うと「違和感」を感じながらも「親派」になっている人が殆どじゃないだろうか?

思春期の葛藤」「環境・思想・本音と建前など」の大人の世界をリアリティを持たせながら無理なく自然に描き、一気に読ませてしまうのはさすが。

作者が色紙に「3年がかりで書きました。チョット自身があります」と書いてあるように「ぜひ一度は読むこと」を薦める一冊です。