診療所だより

開業医gobokuの日記

こんなこと考えながら、
こんな生活しています。

心配で心配で仕方がないんです

2017年04月25日 | 診療
当院では、患者さんのためになることなら、
なんでもやってあげようと思っているのですが、

それは、逆に ためにならないことは やらない。
ということなんでしょうか?。

ためになるか、ためにならないか、医者が決めてもいいのでしょうか。

先日、こんなことがあったのです。

コレステロールが高く、内服治療を続けている多摩さん。
カルテを見ると、まだお薬は残っています。
どうしたんでしょう。

多摩さんは70代の男性。娘さん夫婦とこの子供たちと暮らしています。
一番上のお孫さんが今年の春、大学生になり東京で一人住まいを始めたそうです。

「多摩さん、どうしたんですか?」

「実は先生、心配で心配で、胸が張り裂けそうです。今すぐにでも飛んでいきたい気分なんです。」
「東京に行った孫がどうしているか、
ちゃんとご飯を食べているか、お金が足りているか、心配で心配で。」
「あの子は、一人では何にもできない子で、アルバイトはちゃんとできているのかも心配で。」
「もう、気持ちが落ち着かなくて、いてもたってもいられないです。」

「先生、なんとかこの気持ちが落ち着いてくれるお薬を出してもらえないでしょうか?」

切羽詰まった様子で、僕をみる多摩さん。
うーん、と考え込む僕。

これは病気なの?
薬を飲むようなことなの?
これで、薬をだしていいの?

僕の頭の中で
洗濯機の乾燥ドラムがくるくる回っています。

結局
安易に薬に頼らない方がいいのでは?と思い
「多摩さん、あんまり簡単に薬に頼らない方がいいですよ。」
「ご家族でいろいろお話をなさるといいと思います。」
といって、薬を処方しませんでした。


そのあと、
多摩さんがまた診察にみえたとき、聞いてみたら、

「他の医院の先生からデパスを出してもらいました。いろいろ言われましたが。」

そんなもんなんですね。