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モラモラ会社員がムラムラしながらお届けするヌルヌルアーカイブ。

農林水産省でめしゲバXserve

2005-06-29 | ヌルヌルアーカイブ
「霞が関の中央官庁は、身分証さえ見せれば誰でも入館できる」
「一度入りさえすれば、なかの職員食堂や売店は利用し放題」
「なかでも、農林水産省の職員食堂がいちばん美味い」
「メニューは豊富かつ激安で、定食が300~500円台、寿司でも800円くらいで食える」
「外務省の食堂もまぁまぁだが、入館時のチェックが一番厳しい」

――というまことしやかな都市伝説を、元霞が関のOLから入手。さっそく、噂に名高き農林水産省に潜入を試みる。しかし、そこはさすがの中央官庁。そうそうやすやすとはいかない。

「プルルルル……(農林水産省にTEL)」
「農林水産省でございます(お姉さんの声)」
「あ、すみません、そちらの食堂についてお聞きしたいのですが……」
「??(一瞬の沈黙)……少々お待ちください」

(この時点で“一瞬の沈黙がある”とは、どういう了見だ? まさか、これはガセビアだったのでは……)

「お電話かわりました(おっさんの声)」
「あの、そちらの職員食堂についてなのですが、外部の者でも入れますか?」
「……はぁ? 失礼ですが、どちらさまでしょうか?」
「えーと、その、近隣で働いているものなのですが……」
「はぁ、なるほど……えー、基本的にご用のない方の来館はご遠慮いただいております」

(この時点で、いろいろな感情が頭をもたげる。焦り、不安、やるせなさ、無力感、憤り、あきらめ、羞恥心etc...)

「えー、あのう……その、食堂に用があるんですが
「うーん。そうであれば、入り口の守衛にそのようにお伝えいただけば、入れると思います。念のため身分証をお持ちください」


(キタ━━━━(゜∀゜)━━━━━!!!)


しかし、問題がひとつあった。時間帯である。電話口のおっさん@農水省は、「あくまで職員用なので、食堂の営業時間は11:45くらいから13:00までです」と、宣(のたま)っていた。食生活が崩壊している身としては、このように健康的な時間帯での昼食の摂取は、命にもかかわりかねない。

だが、事実とは常に“霞の向こうに”あるものだ(←うまいこと言った!)。ネットで検索してみると、なんと、かのlivedoor 東京グルメに件の情報が載っているではないか……! そこに、営業時間が「8:30~19:30」と書かれているではないか……! しかも、農林水産省の食堂は、第一から第六まで、6か所もあるというではないか……!!

しかし、ここで安心してはいけない。事実とは常に“霞の向こうに”あるものなのだ(←この表現気に入った!)。俺は迷わず、省内の食堂のひとつに直TELを入れる。すると、営業時間は「8:30~10:00、11:30~14:00、16:30~19:00」という答えが返ってきた。そう、つまり……朝、昼、晩と、飛び飛びで営業しているのである。いやぁ、奥が深いわ。っていうか、もう、つかれたわ……。

と、ここまで調べて、ついにやっと本日決行できた、農林水産省めしゲバ。
ふつーにおいしく、ふつーに手抜きで、ふつーに激安でした。

そして、今回なんと言っても気に入ったが、あのなんとも言えない場末感。農林水産省の職員には若い人はほとんどいなくて(若い人はきっとみんな外へ行くんだろう)、白髪交じりのいい年をしたお父さんたちばっかりで、食堂なのに会話もほとんどない。そういう光景が、もう何十年も続いてきてるということを、食堂の壁のシミ、隅に追いやられた鉄製の間仕切り、ヌルくべっとりとした蛍光灯のあかりなどが、否応なく証明している。Tシャツにジーパンという学生みたいな格好の俺たちは、とにかく浮く浮く。その違和感が、とても楽しい。

ほかにも、省のなかには激安の果物屋や、靴屋やコンビニ、あとなぜか平山郁夫の25万円のリトグラフなんかを売っている絵画の露天商なんかもあった。せまく薄暗い路地に、それらの店が雑然とならび、額に斜線の入ったお父さんたちが行き交う様子は、なぜだか不思議と、とても絵になっていた。まるで、諸星大二郎のマンガの世界に迷い込んだかのような、そんな錯覚すら覚えた。

店のひとつで紅茶の試飲販売をしていて、飲んでみた。なんだか見たこともない珍しい紅茶で、美味かったので思わず買った。690円だった。

「この値段って、やっぱ激安なんですか?」
「んー、そうでもないけど、ほかでは売ってないよ!」

なんだかちょっとうさんくさい売り子のおばちゃんも、この場所にいるというだけで、「農林水産省御墨付」になれる。ここは、そういうミラクルスポットなんだ……と、思った。