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赤紙と水木しげるのレフグラフで平和祈念Xserve

2004-08-16 | ヌルヌルアーカイブ
デパートの催事場が好きだ。いや、好きだといっても、実際にしょっちゅう行ってみたりとか、デパートごとの催し物をチェックしたりとか、そういう“好き”ではなく――そう、あの雰囲気が好きなんだ。

まるでそこだけ時が止まったかのような、外界から隔絶された空間は、わざわざ「ラーメン博物館」のような装飾をほどこすまでもなく、そのままで……いや、ほんとそのままで「昭和」の空気だ。それプラス、人がまばらにしかいないという現実が、「場末」というキーワードを想起させる。「キン肉マン」でスグルがデパートでバイトしてめちゃめちゃにするという話があったけど、あのころから世の中は変わっても、本当に何も変わっていない気がする――デパートってやつは。でも、そういうアタイはどうなんだろ。アタイはあのころから……変わったのかしら? 弟が生まれる直前に昭和天皇が死んだあの日から、はや16年の歳月が流れた。あのころから変わったことといえば、オナニーの頻度が著しく減ったことくらいのものじゃぁないかしら。かしらかしら。ご存知かしら?

――っていう、図らずも逡巡しちゃうようなアトモスファーが、たまらなく好きなわけですよ。ええ。

というわけで、後半いってみよう。後半しゅっぱーつ。
(スッと暗転……迅速かつおごそかにセット転回)

銀座松坂屋の催事場の催し物。今現在やっているのは、
「水木しげる妖怪展」と、「語り継ぐ体験者の労苦 -兵士として 抑留者として 引揚者として- 平和祈念展」だ。これに行ってきた。

場所が銀座だからといって、それしきの装飾が、“デパートの催事場”が隠し持つミラクルなエネルゴンに勝るはずもなく、どこまでも“昭和の空気”だった。その昭和っぷりときたら、あの伝説のライブハウス「昭和」もクリビーに違いないだろう。

そんな――実質的に――場末の催事場で、「水木しげる展」と「平和祈念展」というのは、あまりといえばあまりに絶妙なマッチングであり、ひとりで静かに感動のるつぼにはまり込んで行ったのだった。

■平和祈念展
独立行政法人 平和祈念事業特別基金」が、銀座の松坂屋を借りて毎年やってるらしい催し物。有名な人、無名な人、富める人、貧しい人――それぞれの経験や遺物が、「被戦者」ということばのもとにパラレルな存在になっていく。訓練中の日記(やたら上手いけど意味が理解できないイラスト入り)、書き出しが「父上様、母上様~」な、家族への遺書……。

なかでも印象的だったのが、「赤紙」だ。本物ははじめて見た。こんな紙切れの効力がどれほど絶大だったかは、ガキのころ車のなかで聴いたかぐや姫の名曲「あの人の手紙」の歌詞ではじめて知ったような気がする。

終戦直後のおかっぱの子供が母親の死体の前で呆けている写真とかを見ると、ガキのころに観させられた「はだしのゲン」の長編アニメを思い出す。原爆が落ちた直後、目玉をプランプランさせながら歩いている真っ黒い人影、たまらず川に入って体を冷やすもそのまま息絶えていく黒焦げの人々、やっと一段落ついたと思ったら降りはじめる放射能を帯びたどす黒い死の雨……など、もう「蛍の墓」どころじゃない、その反戦アニメの枠を越えまくったスプラッタな描写は、いまでも俺のまぶたに焼き付いている。

というわけで、本気で平和を祈念するなら、銀座の松坂屋で展示会をするよりも、その金で「はだしのゲン」みたいなドギツイ反戦アニメを作って流通させた方が効果的なのでは? という結論に達したのでした。というか、「はだしのゲン」もっかい観たい。

水木しげる展
平和を祈念したあとは、妖怪イラストに決まってる――そういわんばかりに、隣りのスペースでは水木しげる展が。すばらしい。やっぱり、妖怪はすばらしい。というか、水木しげるがすばらしい。こんなに多種多様で精緻な妖怪画を描けるのはあとにも先にも彼だけでは? で、そういう感動をもって目を下に移すと金額が……! 実は展示即売会ですってオチか。しかも、べらぼーに高い! 安いので8,000円。高いのだと20万以上しやがる。ていうか、まともなのはすべて5万円以上だ。レプリカなのに。特殊な印刷方法らしく、たしかにめちゃくちゃキレイではある。でも、デジタル技術なんでしょ? だったら安価に大量に複製できなければ、ウソなのでは。大体、こういう新しい技術は経年変化が気になる。というか、そういう気になる点の説明が場内でほとんどなされていない。売る気あるのか? 事実、それぞれが「○百枚限定」と書かれていたのに、売約済みと書かれた札は数えるほどしか付いていなかった。あーあ。買う気なくしたよ、俺は。すごく欲しかったのに。一瞬。というか、欲しがりません、勝つまでは。いや、勝っても要りません。くれるならもらいます。以上!

戦争――全力で避けるべきもの。
人生――全力で戦うべきもの。

気を抜くと、両者が入れ替わってしまうような。
いや、入れ替わりつつあるような……。

エロイムエッサイム。