グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~
貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。
 



11月4日(火)

国際連帯税などの革新的な開発資金メカニズムを推進する多国間の枠組み、「連帯税リーディング・グループ」の第5回総会が、11月6日~7日、ギニアの首都コナクリで開催されます。この会議には毎回日本の市民社会から参加をしていますが、今回は私、オルタモンド運営委員の高木晶弘が参加することになりました。ロンドン、パリを経由して、昨夜、コナクリに到着したところです。やや蒸し暑い感じです。

ホテルのインターネット回線速度が非常に遅いのですが、なんとかつなげないことはないので、ここコナクリからできる範囲で、会議の模様などをアップデイトしていきたいと思っています。

ギニアは西アフリカの海岸沿いに位置し、北にはギニアビサウ、セネガル、南にはシエラレオネ、リベリア、コートジボワールと国境を接する、人口約960万人の国です。旧宗主国のフランスとの結びつきにより、今回、リーディング・グループの議長国を今年3月から務めていて、今回の総会を主催することになりました。

フランス外務省からの連絡によると、明日5日には政府関係者のテクニカル・ミーティングがあるそうなのですが、それにNGOが出席できるものなのかどうか、良く分かりません。この分野では最も活発なイギリスのNGO、Stamp Out Povertyのデイビッド・ヒルマンも明日到着する予定らしく、おそらく今回はまとまった市民社会会合もないかもしれません。

さて、今回のプレナリー会合で注目したい点は、大きく言って以下のとおりです。

①日本政府の正式参加

これまではオブザーバー参加だったのですが、今回からは連帯税リーディング・グループの正式なメンバーとして参加する日本政府。閣僚級会合ではありますが、今回は外務省の植野氏(国際協力局多国間協力課長)が出席します。過去の会合では、オブザーバーなので議論を遠巻きに眺めているだけといった感じでしたが、正式メンバーとなってその姿勢にどのような変化があるのか、注目したいと思います。これまでのプログラムをみると、日本政府がスピーチする場所が見当たらないのですが、まさか何も発言しないということはないでしょうから、建設的で具体的な提案が出てくることを期待したいところです。

②多様なラウンドテーブル

今回の会合では、かなり多岐にわたるラウンドテーブルが開催される予定です。これまでもこの枠組みは様々なテーマを取り上げてきていますが、今回もかなり多い印象です。以下、列挙すると、

 1.革新的な資金調達の援助効果(議長:未定)
 2.南南協力(議長:チリ)
 3.気候変動、市場の活用と開発資金調達(議長:ブラジル)
 4.革新的な資金調達のための、自発的な連帯税とミレニアム基金(議長:ドスト・ブラジ氏/国連)
 5.デジタル連帯(議長:セネガル)
 6.移民の海外送金(議長:スペイン)
 7.開発のための民間資金調達の役割:課題とその革新(議長:OECD)
 8.航空券税に関するアフリカ・タスクフォースの組織化(議長:コートジボワール)
 9.通貨取引税と他の金融フロー税(議長:フランス)

自分自身がどのラウンドテーブルに参加するかは、日本政府がどれに参加するのかによって変わってくると思いますが、今のところ1、4、9に参加する予定でいます。

③不正金融フローに関するタスクフォースの報告

2007年9月、前回のソウル会合において、「不正な資本フローに関する国際タスクフォース」が設立されることが決まり、ノルウェー政府がその議長国を務めました。以来、オスロにおいて同タスクフォース会合が3回開催され、報告書が取りまとめられました。このタスクフォースにはメンバー各国の政府代表、国際機関、研究者、NGOなど多様な専門家が参加し、不正な金融フローの実態ならびにそれが開発に与える影響が議論されました。今回のコナクリ会合ではその成果が報告される予定です。すでに報告書が手元に来ているのですが、それを読んでみると、非常に興味深いことがいろいろと書いてあります。

簡単に言ってしまえば、現行の金融システムを悪用した不正な資本移動を見過ごすことは、「穴のあいたバケツにどうやって水をいっぱいにするか」を議論するようなものだということです。2007年、途上国からは7000億ドルもの資本が流出したそうですが、さらに追加で不正に流出する資本は5000~8000億ドルにも達するそうです。この数字は公式には捕捉されていない規模なので、実際にはもっと多いのではないかと推測されています。

連帯税リーディング・グループでは、いかに資金を調達するかが議論され、そして実行されていますが、このように出ていく資金をどうするのかという議論も同時に行われています。開発資金をいかに増やしていくのかを議論するならば、こうした視点はとても合理的なものです。これはそもそもTax Justice NetworkなどのNGOが主張してきたことで、それが現在、政府を巻き込んでの議論に発展しています。こうしたNGOのイニシアティブが、このグループの議論の方向性を引っ張っています。

④金融危機とドーハ国連開発資金会議

今回のコナクリ会議は、その後に開催される2つの会議の文脈と合わせて考えると、これまでと意味合いが変わってきます。ひとつは、11月15日ニューヨークで開催される金融サミット、もう一方は、11月29日からドーハで開催される国連開発資金会議、いわゆるモンテレー・フォローアップです。

現在起こっている金融危機は、これまでの世界経済の在りかたを根本的に問い直すきっかけとなっています。それは先進国だけの問題ではなく、途上国の開発にとっても大きな意味合いをもってくる気がします。金融工学による錬金術で、巨額の富を築いてきた先進国の金融業界。政府当局が把握しきれないシステムを作り上げ、それを利用して途上国からも多額の資金が不正に流出しています。実体経済よりもはるかに規模の大きい金融資本が、世界経済の方向性を決定づけてしまう構造のなかで、先進国と途上国の格差の問題も、金融を抜きにしては語れなくなってきています。原油価格や食料価格の高騰問題においても、その犯人が投機資金であることが間違いないですが、ほんの一部の人々で行われる金融取引が、途上国を含む全世界の人々の生活を脅かすことが可能になってしまっています。それは、これまでの途上国での開発成果を、ごくわずかな時間で台無しにしうることも意味します。

このような構造を根本的に見直していかない限りは、先進国と途上国の格差、世界経済における公正など、おそらく実現できないでしょう。そうした意味で、金融資本に対して何らかの規制をし、開発ファイナンスという観点から役立てていくべきではないかという議論をこの連帯税リーディング・グループでしていくことは、意味のあることだと思います。今回のコナクリ会議では、当初からドーハ会議へのインプットも目的のひとつとしていますので、成果を期待したいところです。ただし、このグループは設立の当初から、経済環境に影響を与えないことを強調しながら、まずは開発資金を増やしていくために導入を推進していこうという枠組みですので、どこまで規制に踏み込めるかは疑問です。長い目でみましょう。

明日は、テクニカル・ミーティングに参加できれば、その様子などを探りたいと思います。参加できなければ、そのときにまた考えたいと思います。では。

11月4日 コナクリのホテルにて 高木晶弘


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