喜多圭介のブログ

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四季のレクイエム(4)

2007-04-19 12:31:11 | 俳句・短歌と現代詩
白い詩集の少女 北条綾子(18歳)


あなた

あなたが私を忘れていても
私はあなたを忘れない
あなたがだれかを見つめていても
私はあなたを見つめている

あなたが似合うと言ってくれた
スカーフを私はしてきているのに
あなたは誰かを見つめている
私はあなたを見つめているのに

あなたが私にほほ笑みかけた
それは私の勘違い
あなたがほほ笑みかけたのは
私の隣の美しい人

あなたの心が離れていくのを
私は知りつつ止められない
あなたの心が離れていっても
私の心は離れない

あなたが去ったテーブルの向こう
私はあなたの幻を追う
あなたが去ったあの日から
私の時間は止まったまま

あなたが私に残したものは
私の悲しみ 私の哀しみ
あなたが私に残したものを
私は抱いて生きてゆく

あなたが私を忘れていても
私はあなたを忘れない
あなたが誰かを見つめていても
私はあなたを見つめている


◆念のために。北条綾子はぼくなんです。心中小説、長編小説『四季のレクイエム』の挿入詩として創っています。