ジーケン・オイラー 日々是プロデュース日記

音楽・CM業界に携わり20数年。現在、音楽以外にも多数日々プロデュース中。

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帰国・・・しなけりゃ良かったずら

2006-11-16 18:51:15 | Weblog
 三ヶ月もさぼってしまった。
ここまであまりにも怒濤の勢いで書き倒してきたから、ちょいと疲れてしまったのだな。
それと、会社の資金繰りが毎月毎月毎月毎月・・・・10日25日末日と連続波状攻撃で襲ってきて、ヘロヘロのへとへとになってしまっていたのだ。ホント、経営者なんざなるもんじゃねーな。自律神経失調症だの鬱病だの片頭痛やら虫歯やらインポやら歯も眼も魔羅もオッペケペーのふっにゃふにゃだよ、ちきしょうめ。

 では又輝かしくも青臭い過去に戻ろう。ばびゅーん・・・・・。
 東京に戻って事務所に行くと、社長と専務が僕を待ちかまえていた。いわゆる苦虫を100匹くらい噛みつぶした顔をして。
「ケンジ!!上条のおやじはどうしてんるんじゃ!!」
「どうって・・・レコーディングやってますよ。真面目に。あの・・・なんかそれでレコーディングの資金が乏しくなってきたらしくて・・・それで、あの、まあ僕が帰ってきたわけなんですが・・・」
「あほ!!なに寝ぼけた事抜かしとるんじゃ!!レコーディングっちゅうのはそんなに金が掛かるもんなのか、既に3000万円越えとるんじゃ!!」
「一流ミュージシャン使ってるんで、まあ掛かっちゃってんすかね」
しかし、今考えても掛かり過ぎである。当時がプラザ合意前の一ドル360円換算の時期だとしても、冷静に考えればその半分ぐらいで済む筈だ。
「あのな、ウチの金主筋からの話なんだがな、上条のおっさんな、いたる所で博打の負け金を踏み潰しているらしくてな。今帰ってきたら間違いなく身体バラバラにされるわ。肝臓も腎臓も角膜も何もかも売っぱらわれて、跡形もなくなるわ」
専務が言うには毎日六本木近辺を縄張りにしているTS会という暴力組織の下部組員がボスを探し回っているとの事だった。
どうやら渡米前にレコーディング費用である3000万円の内のかなりの分を博打に費やしてしまったようだ。つまり渡米の理由はつまる所ボスの借金踏み倒し逃亡ツアーだったのだ。レコーディングはその為の大義名分。今では確かに考えられない贅沢レコーディングであった。大ヒットを出しているアーティストならともかく、売れてないアーティストが海外でアルバムレコーディングを行なう場合、その行程は一週間から掛かっても二週間が限度だろう。一日に3曲のリズム録り、ダビングに2日、歌入れに一週間。一日やはり3曲ペース。泊まりは一泊70ドル程度のモーテル。今ならばTDは任せてあとはネットのファイルのやり取りで済ませる。余談になるが、現在はハードディスク1台持っていけば充分。当時は24チャンネルのアナログテープをアルバム分ならば3本から4本持っていく。厚さは2インチだから巾6センチくらいか。一本のテープの重さが2キロ近くある。それを何本も持っていくのだ。で、出国と入国の持ち物検査が厄介だった。当時の検査はX線と強力な磁気を使用していたのでアナログテープを通すと録音されている音が消えてしまう事がままあるのだ。なので、執拗に「No X-ray Please」を連呼しなければならなかった。
僕が帰国した時点で既に二ヶ月が経過していた。つまり二ヶ月間ボスは逃げているわけだ。やれやれである。
音楽業界の知識が皆無の、サラ金会社の社長と専務は結局はボスにいいようにやられてしまったのだ。さすがにこれ以上資金導入する気はないようだ。まあ、笊だし、ドブ金状態ではある。国際電話でこの件をボスに話すと、案の定電話口でキレた。当時の国際電話は会話が遅れる。キレているボスは僕が話している途中から喚き始めるのでぶちぶちに音声が途切れ、もうなんか獣が吠えている状態。何を言っているのかさっぱり解らないので途中で受話器を置いた。しかし、この頃はまだボスに対して忠誠心があった。なんとかしなければならないと思ってしまった。馬鹿だよね。・・・で、ある日、出社中六本木を歩いている時に僕はヤクザに拉致られ、連れ去られてしまったのだ。
なんと、サラ金会社の同僚(?)にチクられたのだ。つまりボスを探している組に、僕がボスの居場所を知っているという事を喋ったらしい・・・。所詮は暴力金融。ヤクザと同じくそったれだ。
車に乗せられ赤坂のマンションの一室に連れていかれた。こんな機会も滅多には無いことなので、つぶさに観察した。なんでかね、結構冷静だった。既にこの頃はボスの影響と暴力金融会社での激烈な勤務によって、闇世界と暴力には麻痺していたのかもしれない。
 事務所の入り口には出前のラーメンの丼が重ねられている。残ったスープの脂が白く固まり、縁には乾いた麺が残滓のようにこびりついてた。天下一ラーメンだった。ドアを開けるとさらにもう一つ頑丈な扉がある。まるでレコーディングスタジオだ。そして、のぞき穴で確認された後、中から扉が開けられた。中は10畳くらいの事務所。奥にもう一部屋。壁には立派な神棚と関連組織の名前の提灯がずらり。革張りのソファに事務机が3つ4つ。ホワイトボードには競馬場と競輪場の名前、開催日付と意味不明の数字がびっちりと書き込まれていた。その下にカタカナの名前が書かれた無数の紙が貼り付けられている。そんな光景を、ほぉ、と思いながら眺めていたら、肩を掴まれて奥に進まされた。もう一つの部屋を肩を掴んでいた男がノックし、言った。
「カシラ、連れてきました」
・・・うおお・・・カシラかよ。いわゆる若頭ってやつだな・・・
「おう」とカシラさんが答える。
ドアを開けると・・・社長室にあるような立派なデスクに両足を乗せてスポーツ新聞を読んでいる痩せた銀髪七三のカシラさん。スリーピースの背広に幅広のネクタイを締めた姿は見た目は普通のダンディなビジネスマンである。年齢はおそらく40代後半。角刈りでもパンチパーマでもない。しかーし、眼が違う。完ぺきに堅気ではない。頬には深い傷痕。脱ぐと背中にはモンモンが入っているのだろうな。
じっと僕を見つめる。思わず頭を下げる僕。
カシラさんはとてもとても優しい声で、僕に言った。
「すまないね。こんな所に連れてきて、さっ座りなさい」
そう言うとデスクの前のソファを指さした。
僕を拉致してきた男に眼だけで出ていけと指示し、カシラさんは僕の前に座った。
小さくなりながら僕もソファに座る。目一杯素直でつぶらな瞳をして。
しばらく何も言わないカシラさん。一旦座ったかと思うとまた起ち上がってデスクに戻った。タバコを取ってきたようだ。タバコはJPS。ボックスから取りだし銜えると僕に箱を差し出した。すかさず遠慮する僕。もう一度ぐいっとタバコを差し出される。断れる状況ではないので右手を伸ばしボックスから一本つまむ。しかし手が震えている。その瞬間、
右手首を掴まれた。ものすごい力で引っ張られた。そして、カシラさんはタバコのボックスをテーブルの上に置くとポケットに手を入れた。
・・・あっ、手刺されるんかな・・・びくっとした。しかし、その手には金ぴかのライターが握られていた。キンッと蓋を開け、シュコッと火を付ける。その間カシラさんは一言も喋らず僕の目を見据えている。正直怖かった。なんというか暴力的な臭いの質が、ボスやサラ金会社の連中とは明らかに違うのだ。当時のヤクザは今のように経済ヤクザではなく、始終牙を剥き、連日抗争事件を起こしていた。六本木や赤坂ではまだ韓国系の組織が介入する前だったので、国内の、特に関西系の進出に伴う衝突が日常茶飯事だった。その眼に見据えられ震えていると、
「火・・・付けてやるよ」そう言いながらライターの火を僕の顔に近づけてきた。いきなり掴んでいた右手を放された。同時にタバコが指から落ちた。タバコはころころと転がりテーブルの下に落ちた。拾おうと身を屈めた途端、目の前のテーブルが横に吹っ飛んだ。テーブルの上の受話器が転がり、ガラスの灰皿が壁にぶつかって割れた。カシラさんが蹴っ飛ばしたのだ。そして、その足は屈んだ格好の僕の首筋の上に乗っけられた。僕の頭は床に押し付けられた。カシラさんは悠然と自分のタバコに火をつけライターをポケットにしまった。
「すまんな、おにいさんにはなんの責任も無いのは知ってる。だけどな、こっちも仕事なんだ。正直に上条の居場所教えてくれよ。そうしたらすぐに帰れる」
端から隠す気は無かった。なにせ海の向こうである。
「か、上条さんは今、ロスにいます」
「そういう噂は確かに聞いた。じゃあホントなんだな」
床に押さえつけられ呻きながら僕は答えた。
「はい・・・今ロスでレコーディングしています」
ふっと頭が軽くなった。カシラさんはボフっとソファに座った。
「で、いつ帰ってくる」
「レコーディングが終われば・・・」
「今から電話をしろ。上条を電話に出せ」
午前中の出来事だった。ロスは今夕方だ。家にはいない。スタジオに入っているだろう。
「今は居ないかも知れないのですが・・・」
「いいから掛けろ!」
「はいっ」
カシラさんは床に転がる電話を拾って僕の目の前に置いた。僕は受話器を取り上げ0051を押した。ピピポパ。オペレーターが出る。ロスの電話番号を告げた。するとこっちの状況も知らないオペレーターは厄介な事を聞いてきた。僕は一瞬迷ったが受話器を外しカシラさんに訊ねた。
「あのコレクトコールにしますか?」
実に間抜けだ。しかし、当時の国際電話は高いので負担を掛けてはまずいと思ったのだ。
「構わない。普通に掛けろ」
再びオペレーターにそのまま繋いでくれと告げた。カチッという切り替えの音の後しばらくしてから日本の電話の呼び出し音ではないくぐもったアメリカ独特の呼び出し音が鳴った。トルルルルル・・・・・トルルルルル・・・・・しばらく鳴り続ける。呼び出し音と呼び出し音の間の無音がとても長く感じた。カチャッ、受話器を上げる音がした。アチャッ、やべっ居たんだ。
「Hello」
んっ?誰だ?知らない声だ。
「あの・・・」
「well?Give' your name?」
「あー、うー、ユア、ユアテレフォンナンバー、トゥーワンスリーエイトエイトワン、××××?」
「No, wrong number」
「・・・・・そ、そーりー・・・」
がちゃっ。・・・うっわー・・・なんちゅうこっちゃ。
「どうした。いたのか?」
「あっいや、あの、電話番号・・・間違えてしまったみたいで・・・」
再び目の前の電話が吹っ飛んだ。カシラさんたら短気なんだから。
「す、す、すみません。もう一度掛けます」
搾り出すような声で言った。あたふたと部屋の隅に別々に吹っ飛んだ受話器と電話機を拾い再び0051にコール。
「コレクトコールにしますか?」
またもやこちらの状況を知らない暢気な問い掛け。むかっとしつつ、
「いや、そのまま繋いでください」
トルルルルルル・・・・・トルルルルルル・・・・・トルルルルルル・・・・・・
一度目は出るなよと願ったが今回は誰か出て欲しいと切実に思った。なんとなく。
トルルルルルル・・・・・・カチャッ
「ハロー」
ほっ、キヨミだ。居たんだ。
「おお、俺、居たんだ」
「ケンジ?今日こっち日曜でスタジオ休みなんだわ。おお、そういえばあのさ、お前が帰った日、ロンダが来て寂しがっててさ・・・・」
いや、もはやロンダはどうでもいい。いらつきながらキヨミの言葉をさえぎった。
「キヨミ、ごめん急いでるんだけれどさ、あのさボス今居る?」
「ボス、テリーとスタジアム行ってるよ。ドジャースの試合観に」
「・・・ああああ、そうなんだ。・・・・ちょっと待って」
送話口を押さえてカシラさんに向いた。
「今、出掛けてるみたいなんですけれど」
いきなりカシラさんは僕の手から受話器を取り上げた。
「おいっキヨミさんよ、ああっ?おまえ男かよ、女みてえな名前付けるんじゃねーよ、なにっ?俺の事なんかどうでもいい。名前?・・・・だまれっ」
カシラさんは受話器を外し僕に聞いた。
「誰だ、こいつは」
「えーと、ギタリストなんですが」
「生意気なガキだな」
・・・ぷっ、いや笑ってる場合じゃない。
「おいっギター弾き。上条が帰ってきたらすぐに○○会のカツマタまで電話するように言え。それまでこいつは帰さねえから」ガッチャーンーンーンーン!!!!受話器が叩きつけられた。今ごろキヨミはキレてる事だろう。
ドジャースの試合が終わるまで僕はここから帰れない事に相成った。まだ試合は始まったばかりだ。アメリカは決着がつくまで試合は終わらない。終了が真夜中になる事もある。
「そういう事だ。しばらくここに居ろ。おーい、ヤスナカー」
ドアが開き傷だらけの坊主頭が後頭部を見せた。90度以上のお辞儀だ。
「はいっ、カシラっ!」
「こいつ、しばらくここの部屋で見てろ。向こうの部屋には連れていくな。ショカツが来ると面倒だ。俺はカイシャに行ってくる。上条から電話があったらな、そのまま切らずに俺が帰ってくるまで待たせとけ」
カシラさんはそう言うとそのまま部屋を出ていった。
それからの時間が長かった。結局ボスから電話が掛かってきたのは八時間も後の事だった。ドジャースの相手がどこか知らないが、試合の行方を海の向こうでびくびくしながら待っている青年がいた事など大リーガー達は少しも知らずに何時間もボールに戯れていたのだ。だから野球選手は嫌いだ。ガイジンは嫌いだ。いまだに野球全般大リーグも全く興味が持てないのはこの時のトラウマか。いや、サッカーもか。っつーかスポーツ全般全く興味無いんだわ。あれもセックスとおんなじで人がやってるの観るより自分がやる方が気持ちいいと思う。そんな事言ってる場合じゃないね。しかし、実はこの事務所にはそれから数ヶ月後再び来ることになるのだ。更に言うとこの時の坊主頭のヤスナカ、本名安中・・・下の名前は忘れたが、こいつとは数年後に出会い、妙ないきさつで舎弟のようになってしまったのだ。当時は18才。死んだのは・・・23才だったかな。五年後に死ぬとは目の前の坊主も僕も知らないんだな。しかしつくづく世の中とは縁だな、やっぱり。
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4 コメント

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おめっとさん (SAYA)
2006-11-16 19:40:25
待望!?の3ヶ月目の再開!おめっとさん!です。

次回も期待だにゃん。
拉致監禁・・・ (ジンジム)
2006-11-16 22:41:42
んー・・・、本物の修羅場。これ、文庫に入れるなら、幻冬舎アウトロー文庫だな、やっぱり。
Unknown (さおりあん)
2006-11-16 23:45:47
今さ 浪花金融道7巻目まで読んでてさ。
すでに 同じ絵柄でジーケン読んでます

目つきの悪さはカシラのまねっこなんだね ♡
暴力団 (のだせ)
2006-11-27 18:11:50
うち、親父が昔、神奈川県で広告会社をやっていたことあって(倒産したけど^^;)、神奈川県の○○会と付き合いありましたよ。湯河原や箱根や小田原の観光関係の仕事もやっていたけどネオン看板とかやると、どうしても暴力団と絡むんですよね。(苦笑)で、付き合いがあったみたい。○○会は湯河原での賭博開帳から稼いで大きくなったらしいです。僕は、暴力団とは知らず、○○会の所有する土地でよく遊んでいました。ちびっ子のころは。なにげにお兄さん達、優しかったですけどね。よく缶ジュースをごちそうになりました。○○会の拠点のあった湯河原の○○会の土地だってことはあとから親に聞いてビビリました。
まぁ、幹部クラスや直結の下っ端さんは堅気には手をださないのでトラブルはなかったです。
まぁあとから考えると湯河原町の議員や観光協会とかも、○○会とはおつき合いあったろうと思います。それで自分たちの仕事の領域が守られていたんでしょうね。まだ、抗争とかが表面化する前の話ですけどね。

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