もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

エビデンスは今

2021年03月04日 | コロナ

 昨年の今頃、盛んに使用されて脚光を浴びていた「エビデンス」は今どうしているのだろうか。

 エビデンスは「証拠、科学的根拠、証明、検証結果」と訳されているが、武漢ウィルスに対する最初の緊急事態宣言の発令と解除に際しては、各界・各層で使用されて流行語大賞に選ばれても可笑しくない勢いであったが、この頃ではトンと耳にしない。
 コロナウィルス感染症である「中東呼吸器症候群(MERS)」、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」を経験したとはいえ、ウィルスの特性・感染力・感染方法も定かでない新種感染症対策にエビデンスなど存在しないであろうことは、医学・公衆衛生・統計学に無知な自分でも分り切ったことであったが、「エビデンス」なる言葉は、施策反対の論拠としては為政者の「グーの音」も封ずる魔力を持っていたし、対策を躊躇する側にも論拠として使用できると云う、将に魔法の言葉であったように思う。
 国民にエビデンスに基づく要請など必要としない中国は、強権による汚染地域の完全封鎖で感染局限に成功したし、北朝鮮は国境を封鎖して鎖国することで1名の感染者も出していない(笑)。
 1カ月を目安として発令された今回の緊急事態宣であるが、東京、神奈川、千葉の1都3県では当初期限の3月7日から2週間程度延長される気配が濃厚である。例によって賛否が割れているが、科学的根拠は曖昧ながら人が群れなければ・人がうろつかなければ感染者は確実に減ることを経験的に知った今では、延長に対して殊更エビデンスを求める人もいない。
 現代のエビデンスは数字で示されることが多いために、数字の魔力が独り歩きすることも珍しくないようで、高血圧の基準値が130と云われると129では安心し131では脳梗塞を心配する人もでてくるし、世論調査で内閣支持率が下がったと野党が快哉を叫んだものの、よくよく見れば内閣支持率低下分は野党支持に流れたものではなく支持政党なしの増加である構図はおなじみである。
 数字は科学技術の進歩には必要不可欠なものであろうが、実生活では参考的な指標程度に捉えるのが正しいように思える。

 ワクチン保管用の冷凍庫が故障して1,000回分のワクチンが廃棄された事象があった。故障の原因は所謂「たこ足配線」という単純なものであったが、数字と統計を基に巧緻に練り上げられたであろう接種計画であっても、蟻の一穴で修正・変更を余儀なくされるため、ワクチン接種事業に過大な期待と幻想を抱かないようにと示された一時でもあるように思う。
 古人は「50歩百歩」として数字を重視する愚を戒めたが、エビデンスそれも数字を過大に評価する現代にあっては、7万円と2万円の接待額の多寡で罪科の軽重を決定するが、いかがなものであろうか。


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