ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

転々

2009年02月06日 | 映画レビュー
 冴えない中年男とさらに冴えない青年が二人、東京を数日かけて転々と散歩するというだけのお話。とはいえ、中年男は妻を殺して警視庁に自首しようっていう状況にあるわけだから事態はかなり緊迫しているはずなのだが…。

 借金取りの福原(三浦友和)に「100万円やるから俺と一緒に気の済むまで散歩につきあえ」と言われた大学8年生の文哉(オダギリジョー)は事情を飲み込めないながらも、84万円の借金返済期限が迫っているため、そのオファーを当然にも断れない。親子ほど歳の離れた男二人が東京の下町を歩き回る。その間にいろんなところに寄り道し、福原の愛人の世話になったりあれこれとサイドウェイへと脱線していく。一方、殺された妻の勤務先の社員たちは、無断欠勤している福原の妻の様子を見に行こうと3人が福原宅を目指して出かけるのだが…。

 福原はいつ自首するのか、その前に妻の勤務先の3人が死体を見つけてしまえば自首は成立しない。のんべんだらりとしたお話なのに実は事態は緊迫しているという分裂が映画全体の雰囲気をなんともいえない面白可笑しいものにしている。三木聡監督の「図鑑に載っていない虫」には参ったが、この作品はなかなかによろしい。福原と文哉の漫才にも似た会話の面白さといい、いつのまにやら擬似親子の感覚に陥っていく二人の心理がとてもゆったりとした間合いで描かれていくほのぼのさといい、心地よい映画だ。

 正確時計屋、あぶどら肉店、スナック時効等々、店の名前が面白すぎる。オダギリジョーの髪型はなんとかしてほしい。あの鬱陶しい髪の毛、ひっつかんで切ってやりたくてイライラしたわ~~! 三浦友和の髪型といい、二人そろってよくもそんな鬱陶しい格好をしているもんだ、確かに似たもの同士だわ。

 それにしてもいくらコメディでもそんなに都合良くいろんなことが起きないでしょ~っと突っ込みたくなる。なんでそんなところにチョークが落ちてんのよ! スナックのママのくせに、仕事はどうしたのよ~っとか。あと、そこまで小ネタにこだわらなくてもいいんじゃない、というような余計なカットが多いのも気になるけど、それはまあよしとしよう。エンドクレジットが終わったあとにもボーナスカットがついていて、これがまた笑える。

 映画に登場する東京の街をほとんど知らないため、行ってみたいと思わせる珍しさと同時にいつか見た風景という懐かしさの両方に満ちた作品。

ラストシーンはなかなか切ない。(レンタルDVD)

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転々
日本、2007年、上映時間 101分
監督・脚本: 三木聡、製作: 辻畑秀生ほか、エグゼクティブプロデューサー: 甲斐真樹、國實瑞惠、原作: 藤田宜永、音楽: 坂口修
出演: オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子、吉高由里子、岩松了、ふせえり、
松重豊、広田レオナ、笹野高史、鷲尾真知子、石原良純、岸部一徳

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