小説『雪花』全章

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3、世界で最も素晴しい旅のつれ

2012-11-18 12:18:19 | Weblog

 親子の旅は日々刻々と進んでゆき、時にはどこからか鳥の鳴き声が聞えてきた。時には樹の葉の香りが漂って来る……こうやって寒冬酷暑に耐え、なにごともなく一年が過ぎた。母もとうとう100歳を迎えていた。
 市街地の車、色とりどりの服装の人たち、高層ビルなど、なんにでも母は目を走らせて、眩しく見た。この賑やかさに母の胸の鼓動は高鳴ってきて、自分が生きているのは間違いないかと、手で胸をおさえ心臓の音をたしかめた。
 そして、休憩する度に周りの人々によく声をかけられていた。
 「お母さん、おいくつ?どこからきたの?……」
 誰でもこの親子の行動に驚き、母の生命力と民の強い精神に感服を禁じえなかった。母が福の神のように仰ぎ見られて、握手の人が続々と寄り集まってきた。
 人だかりの中に、突然靴の足音を響き渡らせて一人の女性が温かい麺を持って来た。「お母さん、これ、お祝い長寿麺よ、食べて!」
 「ありがとう!ありがとう!」母は碗を両手で持ち、俯いた顔には微笑みがこぼれていた。心が熱くなった母が鼻洟をすすりこみながら、「民、半分ずつ分けて食べよう」と言った。
 「いい匂い……おいしい!」この味は東北の片田舎で生きていた親子にとって、あまりにも旨過ぎたご馳走なので、汁の器のふちを舐めんばかりにして最後の一滴まですすった。
〝親子三輪車の旅″の噂は訪れる村々に飛び交い、すぐ多くの人の耳に伝わった。それはやがて中国に広がっていった……
 親切な人々がこの親子にお菓子を与えたり、家まで招いたりして、親子はあたたかな家に泊まる事もあった。
 テレビ局の記者も駆けつけて来て取材し、〝世界で最も素晴しい旅のつれ″と讃えられて、テレビで全土に放送された。
 民の親孝行という最高の行いが多くの人々を感動させた。民もこの旅でたくさんの人との温かい出会い触れ合いによって、多くの声援から勇気付けられ、母との約束が現実になり、母と外の世界に向けて旅することは、自分の生き甲斐と強く実感した。
 その後も親子の三輪車がまた、そよそよと吹いている風の中を順調に走っている。時が移り行くにつれ、南へ進むと気候と世界の色合いがより大きく変っていた……
 つづく
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