小説『雪花』全章

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小説『雪花』第七章-16節

2017-09-24 11:33:01 | Weblog
   その時、杜が朝食を持ってきた。糯米に小豆や棗、金柑が入った料理だ。
 朱に染まっている糯飯を眺めた凡雪は「美味しそうね」と期待した。
 杜が椅子に腰を下ろして、ご飯を装った。「口に合うかな」祖父は、笑みで御飯を勧めた。馬に似た穏やかな双眸が、いっそう優しく見えた。
 卓台の前に置かれたご飯を見た凡雪と凡花は、静かに視線を合わせた。碗を持ち上げた凡雪は、一口を食べて、ゆっくりと噛んだ。絶妙な柔らかさと甘さが、すぐ口の中に蕩けて広がっていく。優しい気持ちになるような味だった。
 凡花は、一口一口じっくり食べて、碗の隅々まで、米粒を残さず綺麗に食べている。
 食後に再び、祖父の淹れたお茶を飲んだ凡雪は、茶の豊かな香りに倍の滋味を感じた。
 何気なく窓を見遣った凡雪の視界に、一片も雲のない青空が映った。ふっと脳裏に、仁の顔が過った。
 心地よい熱が仄々の胸に込み上がってくるのを感じた凡雪は、密に想像をした。
 羽織袴を着けた仁が、空から爽やかな風に乗って走ってくる。
「雪さんー、祖父のお茶を飲むと、病みつきになるでしょ!」と仁は、暫くじっと凡雪を見つめた。
 ふと笑った仁の目は、祖父の目と似て、駿馬を思わせる黒目がちの優しい双眸だ。
 突然、庭から足音が聴こえてきて、楚が客間に現れた。
 楚は、柳枝で編んだ篓を持っていて、中には、枇杷が一杯に積まれていた。
「あぁ、間に合って、良かった! 香山の枇杷を持っていってください!」
 凡雪に近寄ってきた楚は、朗らかな声で伝え、篓を卓台に置いた。
 窓から陽射しが明るく客間を浴びている。枇杷は陽の輝きを秘めた色に反射して、澄色に艶めいていた。
 時間は、本の最後のページのように、容赦なく迫ってきた。外の風も、戦ぐ度に、庭の樹木をさわさわと鳴らして、別れの時間を告げているように聴こえた。
つづく
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