今日は少々細かい、まとまりのない内容を、つらつらと書きつづっているので、そんな内容が好きな方のみお読みください(笑)。
ちょっと前の記事、
オオクワガタの幼虫は何を食べて成長しているのか?
の続きです。
東京大学で以下の比較調査を実施しています。
1.腐朽菌(菌糸)だけを与えた幼虫の成長調査
※正確には菌糸+無栄養の寒天
2.材だけ与えた幼虫の成長調査
結果・・
1の調査では、餌を食べて成長・発育が認められた。
2の調査では全く成長できなかった。
とのこと。
したがって菌糸には幼虫が成長するために必要なアミノ酸、
ステロール類、ビタミン類が、幼虫が摂取できる状態で
含まれているのではないかという結論です。
ちなみに、種類にもよりますが、菌糸体は栄養分を取り入れるために
幾種類もの酵素を分泌したり、成長過程で有用な代謝産物
(タンパク複合体や多糖類)を産生することが出来ると言われています。
さらに、シイタケのデータではありますが、子実体(キノコ部分)より
菌糸部分のほうがタンパク質が8倍、カルシウムが46倍も多いという
データも全く別の調査で出ているようです。
外骨格を形成するにはカルシウムだけでなく、キチン質も必要ですが、
菌糸の細胞壁にはキチン質も含まれているので、クワガタにとって
合理的なのかもしれません。
※キチンは、材に含まれるセルロースと分子構造が酷似しているので、
材から摂取している可能性もありそうですが・・。
材の話が出ましたが、そちらには全く栄養がないのか・・?
実験結果では、そのようにも受け取れそうですが、
そういうことではないと思われます。
2 の調査で利用した材は「未腐朽材」とのこと。
(腐朽材から菌糸だけを取り除くことが物理的に不可能)
ご存じのとおり、材には、セルロース,ヘミセルロース,リグニンと
いった成分が、それぞれ40%,30%,20%といった比率で含まれて
いると言われています。
セルロースはグルコースの多数重合体(β-1,4結合したもの)です。
同じグルコースが別の結合方式(α-1,4結合)で多数重合したのが、デンプンです。
グルコースはブドウ糖ですので、もちろん栄養素(糖)です。
ヘミセルロースも糖の結合体です。
なので、材には少なくとも栄養は存在しています。
ただし、今回の実験結果からも分かるとおり、
そのままでは(白色腐朽菌が分解しないままでは)、各種栄養素も幼虫が摂取できない状態ということなんでしょう。
ごぞんじのとおり、白色腐朽菌によって、リグニンが分解されます。
セルロースが整然と並んでいる隙間に、ヘミセルロース、リグニンが充填されており、
それぞれ結合していますので、リグニンの分解によってセルロースやヘミセルロースも物理的に分離されやすくなると思われます。
ただし、セルロースやヘミセルロースも、まだそのままでは幼虫は吸収できません。
材を食べるシロアリは腸内にセルラーゼ(セルロースの分解酵素)を産生する単細胞の原生生物を共生させて、セルロースを分解して栄養摂取しています。
草を食べる牛なども消化管にセルラーゼを産生する微生物を生息させていて、
食物繊維の消化を可能にしています。
クワガタの体内にも、もしかしたらセルロースを分解するシステムが存在するのかもしれませんが、白色腐朽菌(非選択性白色腐朽菌)はリグニンだけでなくセルロースも分解できるようなので、それらの腐朽菌がセルロースも分解している。。と考えたほうが自然かもしれません。
一方、ヘミセルロース(の主成分であるキシラン/キシロース)を分解する酵母(共生菌)が
オオクワガタの雌成虫の腹端部の嚢状器官内に存在することが、最近確認されています。
※キシランはヘミセルロースを構成する五炭糖であり、多くの生物にとって、そのままでは吸収困難な糖です。
※ちなみにキシランを構成しているのがキシロース。キシロースから合成される糖アルコールが、あのガム等で有名な「キシリトール」です。
「国産クワガタ体内にキシロースを分解(代謝)する酵母が共生している」ということの発見は画期的なことだと思います。
このことによって、腐朽材(培地)をオオクワガタが栄養素として利用できる可能性が広がったと思われます。
菌糸と培地(材)。双方から栄養を摂取できるとして・・
ただし、それだけでは、いわゆる「居食い」の説明は難しいですよね。
もうひとつの栄養体。
「共生菌そのもの」の摂取です。。
つづきは、またそのうち、、、
<追伸>
東大の実験は、いくつかの種類の菌種で調査されています。
どの菌種が一番成長が良かったのか興味ありませんか?
ヒラタケは4種類中2番目でした。
ダントツの1番は・・・ひみつです(笑)。