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原発不明癌 診療ガイドライン 2010年版

2010-06-09 | その他専門診療科

日本臨床腫瘍学会より2010年5月20日出版、2500円 

原発不明癌
十分な検索にも関わらず原発巣が不明で組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍の事である。おおむね1-5%とされる。病理解剖により判明する原発巣で頻度の高い部位は、膵臓、胆道、肺であるが、一方で病理解剖後も原発巣がなお不明な患者が20-50%存在する。
生存期間の中央値は6-9カ月とされるが、一部治癒しうる患者群や予後良好な患者群が存在するので注意を要する。→女性で腋カリンパ節転移(腺癌)のみ有する原発不明癌、女性で腹膜転移(腺癌)のみ有しCA125の上昇している原発不明癌、女性で腹膜転移(腺癌)のみ有しCA125の上昇している原発不明癌、男性で造骨性骨転移のみ有しPSAの上昇している原発不明癌、原発不明癌で扁平上皮癌のソケイ節転移のみ有する患者。原発不明癌で組織型が神経内分泌腫瘍である場合の一部である。

原発不明癌が疑われる際の放射線画像診断の優先順位は?
・原発不明癌が疑われる際は、全身CTを施行することが推奨される。Grade A
・頸部リンパ節発症の原発不明癌の場合は、頭頸部CTと共に頭頸部MRIも推奨される。Grade A
・FDG-PETはCTやMRIで原発巣が検索困難な場合に施行することが現状では望ましい。Grade B

FDG-PETは原発不明癌の原発巣検索に有用か? 
FDG-PETはCT,MRIで原発巣が特定できない場合に有用である。Grade B

原発不明癌の原発巣検索に腫瘍マーカーの測定は有用か? 
・腫瘍マーカーの測定は一部の癌(胚細胞腫瘍、甲状腺癌、前立腺癌、卵巣癌)では有用である。Grade A
・上記以外の原発巣検索に腫瘍マーカーの測定は有用ではない。Grade C2
→CEAは役に立たない。AFP, β-h CGを測定することは意義がある。甲状腺がん除外を目的としてサイログロブリンを測定することは有用である。PSA及びCA125はそれぞれ有用である。

原発不明癌の原発巣同定に病理学的検索は有用である。 
・病理学的検索は原発不明癌の原発巣同定に有用である。Grade A

細胞診は原発不明癌の原発巣同定に有用か?
・細胞診や組織診に取って替わるものではないが、組織診が利用できない場合や並行して行える場合には、原発不明癌の原発巣推定に有用である。Grade C1

原発不明癌の原発巣同定に免疫組織化学的検索は有用か? 
・免疫組織学的検索は原発不明癌の原発巣同定に有用である。Grade B

原発不明癌の原発巣同定に遺伝子・染色体の検査は有用か? 
・原発不明癌頸部転移巣からの原発巣特定にはHPV、EBVについて検査の有用性の報告があるものの日常診療での使用を推奨するレベルではない。Grade C2
・リンパ腫や骨・軟部肉腫に特異的な染色体異常や融合遺伝子(キメラ遺伝子)の検出は組織型の確定診断に有用である。Grade B

原発巣検索に費やすべき期間はどの程度が妥当か? 
一か月以内に原発巣検索を行い、それでも原発巣の同定ができない場合は、原発不明癌として治療を開始すべきである。Grade C1

遺伝子発現プロファイルを調べることは原発巣同定に有用か?
遺伝子発現プロファイルを調べることは、原発不明癌の原発巣の診断・治療に有用である可能性はあるGあ、現時点では臨床試験として実施すべきである。Grade C2

原発不明癌の内、予後良好群と予後不良群はどのように区別されるか? 
詳細な病歴聴取、身体所見、血液生化学検査(腫瘍マーカーを含む)、画像検査、一般的病理組織学的検査に加え、特殊な免疫組織化学的検査、遺伝子・染色体の検査を行うことにより、確立された治療の適応となる予後良好群の診断が可能である。Grade B

女性で腋カリンパ節転移(腺癌)のみ有する原発不明癌に対する治療法は? 
女性で腋カリンパ節転移のみを有する原発不明癌は、腋カリンパ節転移陽性乳癌の治療に準じて、局所療法(腋カリンパ節郭清と、同側乳房の切除あるいは放射線照射)及び術後薬物療法(化学療法、ホルモン療法)を行うことが推奨される。 

女性で腹膜転移(腺癌)のみを有しCA125が上昇している原発不明癌に対する治療は?
III期卵巣癌の治療法に準じた標準的外科治療+化学療法が推奨される。Grade B

男性で造骨性骨転移のみ有しPSAが上昇している原発不明(腺)癌に対する治療は? 
・進行期前立腺癌の治療法に準じて内分泌療法が提案される。Grade B
・通常、骨転移を有する症例は疼痛を伴っているため、WHO提唱の癌性疼痛治療指針に従って十分な疼痛管理を行う。Grade A
→前立腺癌の生検陽性率は血清PSA値が1-2ng/mlで1.0%, 2-4ng/mlで3.6%, 4-10ng/mlで25-30%、10ng/mlで50-80%、100ng/mlで遠隔転移を伴っていることが強く疑われる。

原発不明癌で扁平上皮癌の頸部リンパ節転移のみ有する患者に対する治療は? 
・頸部リンパ節に限局する原発不明扁平上皮癌に対する治療は手術(頸部郭清又は摘出)+放射線照射が推奨される。Grade B
・放射線照射と化学療法の併用、摘除不能症例での導入化学療法も考慮する。Grade C1

原発不明癌で扁平上皮癌のソケイリンパ節転移のみ有する患者に対する治療は? 
皮膚癌、直腸肛門癌、泌尿器癌や婦人科癌の原発巣検索を十分に行う。 
その上で原発巣が特定できない場合にはリンパ節郭清や根治的放射線照射などの局所治療を行う事が推奨される。Grade C1

原発不明癌で組織型が神経内分泌腫瘍の場合の治療は? 
・高分化神経内分泌腫瘍でホルモン過剰分泌による症状緩和を目的としてソマトスタチンアナログを投与することが推奨される。Grade B
・低分化神経内分泌腫瘍・小細胞癌では全身化学療法を行う事で生存期間の延長が期待される。Grade B

一次治療としてどのような化学療法レジメンが推奨されるか? 
・予後不良と考えられる原発不明癌患者に対し、一次治療としてプラチナ製剤とタキサン製剤の併用療法を行う。Grade C1

化学療法の至適な投与期間はどれくらいか?
推定される原発巣がある場合はその疾患の標準治療とされている治療法に定められたものに従うべきあるが、それ以外の原発不明癌予後不良群では、患者の状態、化学療法の有害事象などを総合的に判断して行うべきである。Grade C1

二次、あるいは三次化学療法実施の意義はあるか? 
原発不明癌に対して推奨される二次化学療法は小規模な試験結果しかなく標準的な化学療法は存在しないため、適応に関して患者状態を慎重に判断して検討すべきである。Grade C1

原発不明癌でホルモン受容体を発現している患者、HER-2 蛋白過剰発現の患者に対して、それぞれホルモン療法、トラスツズマブ療法は有効か? 
・原発巣が乳がんと推定される場合は、ホルモン療法、トラスツズマブ療法が有効と考えられるが、それ以外の状況では推奨されない。Grade C2

原発不明癌で骨転移を有する患者に対してビスフォスフォネート製剤は有用か?
・原発不明癌骨転移症例に対するビスフォスフォネート製剤(ゾレドロン酸)投与は、骨関連事象の発生を減らす可能性があるという点において有効と考えられる。

原発不明癌はどの時点で全面的な緩和ケアへの移行を考えるべきか? 
予後良好群以外の原発不明癌症例では初診時より全面的な緩和ケアの選択肢を検討すべきである。特に予後不良因子をもつ症例、一次治療に抵抗性となった症例では必須である。Grade C1


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